恐さは控えめ、『スペル』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『スペル

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】サム・ライミ

【主演】アリソン・ローマン

【製作年】2009年


【あらすじ】

 銀行に勤務するクリスティンは、不運続きの一日を過ごしていた。そして、返済の猶予を求めるジプシーの老婆が目の前に現れた。クリスティンは老婆の依頼を無理だと断るが、老婆は執拗に食い下がる。それでも決断を変えないクリスティンに、老婆は怒りを爆発させ呪いの言葉を投げかけた。


【感想】

 サム・ライミといえば、「スパイダーマン」シリーズの監督としてすっかり有名になってしまった。プロデューサー業にも進出し、大物監督の仲間入りを果たしている。今死ぬようなことがあれば、日本の新聞にも写真入で訃報が載るはず。当然そこには、“「スパイダーマン」シリーズの監督として有名な”といった一文が入るよう気がする。


 しかし「スパイダーマン」以前には、「死霊のはらわた」シリーズで名を馳せていた。「死霊のはらわた」は1980年代の映画だが、そのおどろおどろしい演出はインパクト十分だった。音楽の使い方も嫌らしいくらいに上手かったような気がする。ヘンな呪文がやたらと不気味だったし。今もホラー映画の名作として取り上げられることがある。


 そのサム・ライミ監督が自らコテコテのホラー映画を撮ったという。それがこの「スペル」。映画館でもらったチラシによれば、”スペル“とは呪文や呪縛にかかった状態のことをいうらしい。確かに映画では、主人公の女性がジプシーの老婆に呪いをかけられる。そして恐怖の3日間が描かれていた。


 予告編を観る限りでは、恐怖の度合いが相当に高そうな感じだった。ポスターになっている主人公の女性の顔付きは、極限状態そのものだったし。久々に心臓に悪そうなホラーに思えた。しかし、映画のスタートからちょっとした違和感が続いた。その理由は映像の古めかしさ。狙いなのだろうが、1960年代の映画のような大味感がありありあった。


 映像に滑らかさがなく、ギクシャクとした感じで進んでいく。どこか大振りする助っ人外人のバッティングを見ているよう。繊細さよりも、大胆さを選んでいる。キリキリと巻き上げるような恐さよりも、下ネタめいたグロさで勝負。手作り感はあるものの、21世紀のホラーとしては粗いのかもしれない。「死霊のはらわた2」を観たときの感覚をふと思い出した。底の方には、細いながらもディズニーの流れがあるような気がした。