2023年12月15日の夜に、真夜中にもかかわらず関東南部で20℃前後の地点が続出しました。
神奈川県や千葉県では20℃以上の地点が多いです。
また、気温の高さだけでなく、南北の温度差が大きかったという点も大きな特徴です。
東京都と埼玉県、千葉県と茨城県の気温の違いを見れば、南北の温度差が大きかった、ということがわかります。
同じ時間の風は次の通りです。
気温が20℃近い地点では南西~南の風が強めに吹いていた一方、気温が概ね10℃未満の埼玉県や茨城県では多くの地点で北西~北東の風が吹いていました。
15日21時の天気図では、関東北部に寒冷前線があり、関東地方の大部分は前線の南側の暖域に入っています。
これだけを見ると、暖域に入っている埼玉県や茨城県も高温になりそうですが、実際は一部地点を除いて地上気温が10℃未満でした。それはなぜでしょうか?
これは、15日21時時点の館野の高層気象観測の結果です。
顕著な特徴としては、
・地上から900hPaまでは、高度とともに気温が上昇している(逆転層)
・925hPaより上は南西~西の風が強い一方、地表付近では風がとても弱い
ことが挙げられます。
以上から、全体的には暖気が流入していたけど、地表付近だけは寒気に覆われていたことがわかります。
先ほどの気温の分布を見ますと、気温が高い東京都、神奈川県、千葉県は南西~南の風が強めに吹いており、暖気が流入していたことがわかります。
一方、気温が低い埼玉県や茨城県は地表付近に滞留する冷気層に覆われていたことがわかります。冷気層の上では南~南西の風が吹いて暖気が流入していたと思われますが、寒気の上に暖気があるので大気は絶対安定であるため、上空の暖気が地表付近へ降りてくることはありません。また、冷気層は冷たく重い空気で構成されていますから、その周りを軽い(暖かい)空気が速く流れても、冷気層内ではその影響が小さく、そのため冷気層に覆われている地域では風が弱くなりました。
以下に、東京都から埼玉県にかけての主要な観測地点のデータを載せます。
1つ目が気温、2つ目が風のグラフです。
羽田
15日19時~16日5時頃に気温が20℃前後で推移し、その頃は南~南西の風が強めに吹いていたことがわかります。
東京
15日22時~16日3時に気温が20℃前後で推移し、その頃は南の風が強めに吹いていたことがわかります。
練馬
15日24時の前後30分程度、気温が17℃を上回り、その前後では気温が急激に変化していたことがわかります。
また、15日24時は南風、その前後の15日23時と16日1時は北風であったこともわかります。
所沢
練馬と同様に、15日24時頃に気温が高くなってその前後で気温が急激に変化したことと、15日24時は南風だったことがわかります。
越谷
15日夜~16日朝は13℃以下で推移し、気温の大きな上昇はありませんでした。また、15日夜~16日朝に南風が強まっているわけではなさそうです。
さいたま
越谷と同様に、15日夜~16日朝に気温の急上昇や強い南風は見られませんでした。
以上から、
・羽田と東京では比較的長い時間、暖かい南風~南西風の影響を受けた
・練馬と所沢では15日24時頃に、一時的に南風が吹いて気温が極端に高くなった
・越谷とさいたまでは暖かい南風の影響をほぼ受けず、15日夜~16日朝は低温で推移した
ことがわかります。
余談ですが、越谷とさいたまでも、16日の朝から昼過ぎまでは(強い南風が吹いていないですが)気温が大きく上昇しました。
日射に伴う加熱によって冷気層が消失して対流が発生し、上空に残っている暖かい空気が下降して気温が上昇したのではないか、と思います。
以下に、15日18時~16日6時の気温と風の分布図を載せました。これの分布図から、以下のことがわかります。
・この時間の関東地方では、「内陸部に滞留している冷気」と「南~南西の風に伴う暖気」の対立が生じていた
・暖気は15日24時にかけて勢力を強め、冷気と暖気の境界線は東京都と埼玉県の県境付近まで北上した
・15日24時以降は暖気が後退し、冷気と暖気の境界線は南下した
15日18時~16日6時の気温と風
15日18時
15日19時
15日20時
15日21時
15日22時
15日23時
15日24時
16日1時
16日2時
16日3時
16日4時
16日5時
16日6時