こんにちは。

いまあつです。

 

前回は、大気の熱輸送として、3つの循環(ハドレー循環、フェレル循環、極循環)を説明しました。

実は3つの循環以外にも、擾乱(低気圧など)や海水によって、熱輸送が行われています。

 

 

擾乱による熱輸送  重要度:中

 

図:大気の運動による熱輸送(プラスの値は北向きの輸送)

http://acacia.fc2web.com/i39kq08.html

 

上の図は大気の運動による熱輸送を緯度別に表したものです。点線(南北鉛直面内循環)は3つの循環(ハドレー循環、フェレル循環、極循環)による熱輸送です。図を見ると、3つの循環による熱輸送は、低緯度と高緯度では極向きであるのに対し、中緯度では赤道向きとなっています。つまり、フェレル循環は熱を極側から赤道側に運んでいるのです。

 

それでは、中緯度では熱が赤道側に輸送されているのでしょうか?答えは「いいえ」です。

図の破線は擾乱(低気圧など)による熱輸送を表しています。これを見ると、特に中緯度では擾乱による極向きの熱輸送が大きいことがわかります。

 

温帯低気圧の東側では暖気が高緯度側に向かって流入します。また台風はそれ自体が暖気の塊で、熱帯から中緯度に向かって進むため、台風も低緯度の熱を中緯度に運んでいます。

台風や温帯低気圧も熱輸送という役割を果たしているわけですから、台風や温帯低気圧を悪者だと言ってはいけません。

 

中緯度ではフェレル循環によって熱が赤道向きに輸送されますが、それをはるかに上回る量の熱が、擾乱によって極向きに輸送されているため、中緯度でも全体では熱が極向きに輸送されています。

 

 

海水による熱輸送(熱塩循環)  重要度:低

 

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図:海水の大循環

https://blogs.yahoo.co.jp/panthanwatch/1341772.html

 

実は、海水は世界1周旅行をしており、それも熱を輸送しています。

大西洋北部では海水が冷たい上に塩分濃度が高いため、そこで海水は沈みます。その後、沈んだ海水は底層をゆっくり上昇しながら移動し、表層に戻ります。この循環は海水の温度と塩分濃度によって駆動されているため、熱塩循環と呼ばれています。

 

熱塩循環は1周するのに1000年ほどかかります。つまり、海水は1000年かけて世界1周の旅をするのです。

 

<まとめ>

・台風や温帯低気圧も、熱を極向きに輸送しています。

・中緯度では台風や温帯低気圧に伴う熱輸送が卓越しており、熱が極向きに輸送されています。