先日、同級生の動物病院で手術をしてきました。
その際に帯同してくれたのが麻酔科医チームでした。結論から言うと、高齢の犬、心疾患のある犬、麻酔への抵抗がある飼い主さんの犬の手術を実施しましたが、鎮静剤や鎮痛剤、局所麻酔剤をうまく使い鎮静中心の手術は無事終了、全身麻酔をかけたのは心疾患の犬。これも、手術中も全く問題なく腫瘍を取り出しました。私自身は執刀でしたけど、手術に集中できました。麻酔科チームってすごいなぁって思いましたけど、この際に使用した麻酔薬の種類の多さには驚きでした。それをうまく使い分けていました。獣医麻酔専門医チームとでも呼べばいいのかな?
結局、全症例、夕方は元気に退院。
これ、すごくないですか?
手術的には難易度は高い手術じゃないんですけど、麻酔に対してはハイリスク症例って多いです。
そもそもが術前検査(血液検査やレントゲン検査、心電図検査)をしないで麻酔かけちゃうってチャレンジをすることで、麻酔のリスクは向上します。これはすでに証明されています。
こういったことをきちんとしたうえで麻酔計画を立てて手術は実施されました。
さて、麻酔のリスクってどうなんでしょう?そろそろ本題です。
2000年代初頭から麻酔のリスクは、人間の医学のほうでも結構発表されてます。例えば、先進国の麻酔死亡率を0.000653%から0.000025%としているヒト麻酔学に関する疫学研究が多数発表されています。ほ~、さすが人間・・・。
動物分野の麻酔では、1990年にイギリスで最初の関連研究が実施されています。
この研究は、死亡率がイヌで0.23%、ネコで0.29%であることが示されました。
その後の10年で、イギリス、アメリカ、カナダからデータが発表になりました。小動物分野の麻酔死亡率は0.1~0.2%でした。またスペインから発表されたものでは、腫瘍の手術で腫瘍の病的な悪性度によってもリスクは変わるんじゃない?って言われています。また術中の鎮痛剤の使用でさらに死亡率が低下することもわかってきています。これらのデータからは10年ほど経過しているためにさらに麻酔のリスクは減少したと思います。麻酔が負担になったりすることについては、その通りかもしれません。一方で、今ある病変があることのほうが負担になってきますよね?ってことで、それを取り除くために麻酔をかけます。麻酔のリスクと引き換えに、大きな負担をなくすための処置を実施します。それが麻酔です。麻酔を怖がる前に、病気を怖がってもらえたらと思います。そして、今の動物医療では、麻酔科獣医師専門チームがあったりします。麻酔科医チームじゃなくても麻酔科医個人でもいいのですけど、今回はいろんな事情で、チームとなってしまいました…。
いかがでしょうか?麻酔をする意義って・・・。わかっていただけましたか?