【就業規則】シリーズ、前回から【就業規則】の記載内容について説明しております。
今回は、前回に引き続き『退職』に関連して、『退職後の競業避止義務』についてご説明してまいります。
近年は、中途退職・中途入社があたりまえになってきている時代では、従業員が退職後に、同業のライバル会社に就職したり、自分で競合となる会社を設立したり・・・ということがよくあります。
会社にとって最も大切な顧客を奪われたり、企業秘密の漏洩、それだけでなく、従業員の大量引き抜きといったトラブルも実際に多く発生しています。
退職社員による機密情報や企業秘密の漏洩の予防のためには、退職した従業員に対し、競合する会社に就職したり、独立自営させないよう義務を課すために【退職時の誓約書】をとったり、【就業規則】に【競業避止義務】規定を盛り込む必要があります。
ちなみに、従業員が在職中の場合は「会社の利益に反して、競業他社と兼業したり、同業会社を運営することは、【信義誠実の原則】という契約の根本思想に基づき、もし、【就業規則】や【雇用契約書】にこれらの定めがなくても、禁止されています。
【就業規則】の【懲戒処分】の規定に【兼業の禁止】【同業会社の運営】を処分対象行為に規定していれば、その規定に基づき【懲戒処分】が下されます。
十分【懲戒解雇】に該当する行為と考えられます
では・・・ 退職後にも、【競業避止義務】を課すことができるかどうか・・・
ですが、一般的には、憲法で保障された【職業選択の自由】との兼ね合いから、【競業避止義務】を無制限に課すことはできないと考えられています。
しかし、あくまで『無制限に課すことはダメですよ!』という意味ですので、
制限が必要最小限で合理的であれば、ある程度の制限は認められると考えられています。
合理性の判断については裁判所は、以下のように説明しています。
1. 競業避止の期間や地域、職種の範囲
2. 使用者の利益と労働者の不利益とのバランス
3. 社会的利害(独占集中のおそれとそれに伴う一般消費者の利益)を総合的
に見て判断すべき
(昭45.10.23奈良地裁判決「フォセコ・ジャパン・リミテッド事件」)。
そのため、在職中から、【競業避止行為】があった場合には、以下のような対応をとることを従業員に知らしめておくことが予防対策として重要です。
1. 競業避止の期間を退職後2年間程度とする。
2. 競業避止義務に違反した退職従業員に対しては、損害賠償、差止請求・退職
金の減額・没収・不当利得返還請求等を求める。
3. 企業秘密の使用・開示である場合には、不正競争防止法の規定により差止
請求、損害賠償、信用回復措置を求める。
これらの措置をとることを【就業規則】に規定し、退職時にはその旨の【誓約書】をとるという対応が必要不可欠だと思われます。
就業規則規定例
(競業避止義務)
第○○条
従業員には在職中及び退職後2年間は、会社と競合する他社に就職及び競合する事業を営むことを禁止する。
2 従業員が前項に違反した場合、会社はその情状により、譴責、減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇の処分を課す。
3 従業員が第1項に違反した場合、会社はその損害の程度により損害賠償、差止請求、信用回復措置を求めることがある。
4 従業員が第1項に違反した場合、会社は退職金の返還を求めることがある。
以上、次回も引き続き【就業規則】シリーズを継続します。
よろしくお願いします。