第3回目は【問題社員への対応】についてです。
第2回目で【解雇権の濫用】についてご説明しました。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」(労働契約法第16条)
この【合理的な理由】に該当するかどうかと【社会通念上相当である】かどうかの判断が難しく、裁判所での判断で解雇無効だと言われることもあり得るというようなご説明をしました。
実際に、通勤途中に痴漢をして捕まった社員を、会社が解雇をしたら、『痴漢行為は、仕事上のことではなく私生活上のことなのでこの解雇は濫用にあたり、解雇は無効です』と裁判所が判断し、その社員は会社に復帰した。という事例もあるくらいです。
まさに解雇が有効となる明確な基準がないのが現状で、このことが問題を難しくしている原因です。
現在、世間では、一般常識を持っている頭のいい方ほど、【解雇】することに躊躇することになっています。
私にも経験がありますが、問題社員を解雇したい際に、ある弁護士に相談しても、「労務トラブルを抱えることは会社にとってリスクですので避けたほうがいい」「正社員を解雇することは現実難しいです」という回答しか返ってこなかったこともあります。
確かにリスクヘッジという観点からだけみた場合、この回答が間違っているとはいえないと思います。
しかし、『何度注意しても全くやる気が感じられない社員』『毎日会社の文句ばかりを言っている社員』『問題ばかりを起こす社員』等々、他の従業員への影響を考えても『どうしても【解雇】したい』と思わせる社員がいるのも現実です。
このような問題社員に対して【解雇権】を行使できずに、ただただ我慢し続けなければならない・・・。
こんな事で悩んでおられる経営者の方々は非常に多いと思います。
私は、このような問題社員の対処方法に関して相談を受けた場合には、『お気持ちはよくわかりますが、【解雇】だけを考えるのではく、別の方法も含めて対処方法を広く考えましょう。』と回答します。
無理に【解雇】にして、後々トラブルになって、時間と労力、おまけに心までボロボロになった挙句のはてに多額の金銭を支払うことになっては、何の得にもならないからです。
【解雇】以外に社員が会社を辞める方法には大きく3種類あります。
① 社員が自ら退職を申し出る場合
② 会社が社員に退職を勧めて退職する場合(いわゆる『退職勧奨』)
③ 契約期間満了(契約社員の期間満了や、定年退職がこれにあたります)
① ②を通称【合意退職】と言います。この【合意退職】をうまく活用することが、後々のトラブルにな
らない最善の方法になる場合もあるからです。
『損して得をとれ』という場合もあるからです。
問題社員自身が【自己都合で退職】してくれるケースは、まず考えにくいため、【退職勧奨による合意退職】
にどう持っていけるかです。
この【退職勧奨】というのは、そう簡単なものではありません。
時間もかかりますし、時には金銭面での対応が必要な場合もあります。人間の感情に左右される場面も出てきます。十分注意してかからないと、『会社に強要された』と言われかねません。そうなると【解雇】の扱いとなり、【解雇無効】と判断されてしまいます。
私自身、何十人という単位でこの対応をしています。
【退職勧奨による合意退職】にはテクニックが必要です。
押したり引いたりのテクニックだけでなく、経験したことがある専門家にしか持っていないノウハウがあります。
経営者の方や人事担当者だけで対応しきれる問題ではありません。
そんな時は、労務の専門家である社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
【問題社員への対応】については、他にもノウハウがありますので、シリーズ化してご説明していこうと思っています。