今日は8月15日という特別な日。ここ数日暇に任せて一気に見ていたドラマ「借枪」(銃を借りる)、狙ったわけではないのですが、この抗日戦争をモロ背景としたドラマを今日見終わりました。

北京で考えたこと-jieqiang

 ストーリーは主人公である共産党の秘密工作員(主役を演ずる张嘉泽は以前紹介した「蝸居」でも主役の一人でしたね)が天津に駐屯する日本軍から如何に情報を取ってくるかという、最近人気のスパイ物。日本軍、共産党、国民党、そして租界に陣取る各国政府も時に交えての情報戦を描いたドラマです。中国人の友人も「このドラマは借枪じゃなくて借钱だよ!」という程、情報戦の緊迫感と同時にどうやって活動経費、お金を持ってくるかというのに頭を悩ませる共産党スパイたち。「共産主義も金次第ねぇ」というストーリー作りは現代ならではでしょうか。また共産党の地下工作も色々な路線が合って、中で相当もめたりそりが合わなくしたりしているところも面白いです。

 印象に残ったのは、恐らく当時の一般の中国人にとって、特に日本と戦っている時期の中国人にとっては、国民党も共産党も大した区別がなかったんだろうなあという各種のエピソード。国民党に入党するよう誘われる準主役の女性がどちらに協力するかと悩むシーンでも「資本主義か、社会主義か」などの主義主張ではなく、そこで活躍するスパイたちの人柄に魅かれていっているわけです(まあ、もちろんそこは共産党の主役に傾くのですが(笑))。

 つまり、当時から共産党が、特に一般国民に対しては、共産主義の主義主張ではなく、とにかく愛国抗日で支持を集めて行ったか、「オレが日本を何とかしてやる!」的なある意味任侠の世界的な人間の魅力で支持を集めて行った雰囲気が伝わってきます。もちろん党幹部になる人は主義主張にも共感したのでしょうが、それ以外の一般党員がどう共産党の行動に入っていくかがわかるようです。その意味では、現代中国共産党に関する解説で「冷戦後は共産主義ではなく愛国主義でしか国民の求心力を得られないから愛国主義に訴えるんだ」と論評されますが、ある意味元々それ程共産主義で求心力を得ていなかったので、「そうそう、中国共産党は生まれた頃からそうだったよ」っていう側面もあるので…というのは言い過ぎでしょうか?

 ちなみに以前にも紹介したドラマ「潜伏」も舞台は天津、今回も天津と、当時租界を多く抱えた天津の街は、各勢力のスパイ工作が入り乱れる地であったようですね。潜伏のドラマが大成功を収めた後、天津には「潜伏諜報博物館」(レストラン兼)までできたそうです(こちら新浪ブログに写真入りで紹介あります)。ドラマとしては、世間的評価も個人的評価も「潜伏」の方が良いできかな。全体的に面白かったですが、最後の方はドラマチック過ぎて若干やり過ぎかなあと感じました。ただ新聞・メディアを使ってのスパイたちと日本軍の駆け引きなんかは、当時の戦争、革命時期での中国メディアの実際の歴史上での役割を想像させ興味深いです。

 8月15日ということでドラマ中の日本(軍・人)の描き方を見てみると…、確かに相当エグイものもありました。はっきり言って目を覆いたくなるようなシーンも。まあこれは見始めたところから覚悟してはいたこと。ですが、新浪微博(中国のミニブログ)で中国人にも言われましたが、渋谷天馬さん始め日本人俳優も(怖い人間役ばかりですが)多数熱演しており、また日本人の描き方にも(こういったエグイシーンも多い中ではありますが)戦争自体を嫌うものあり、中国人と恋するものあり、と完全に一辺倒ではないと感じました。確かに定期的にこのテーマをまだ中国人は見ているのかなあと思うと複雑です。でも、そういった微博でのやり取りから見ていると、情報ソースがこれ程多様になる中こういうドラマだけで日本理解している時代遅れも少ないわけだし、皆は「面白いスパイドラマ」として意外と冷静に見ているのかと感じました。

 終戦記念日の今日8月15日、日本、そして世界中の戦没者の冥福を祈ると共に、日本と中国が今後決して戦争という形で相対することが無いよう、心より平和を祈ります。