今回北京に来てから観ているドラマは、今のところどれもはずれがなくて面白い!最近は会う中国人ごとに「最近何か面白いドラマ観た?」と聞いているため、ストックは切れることなく続いています。現在はハノイに来ているのでストックは暫定的に途絶えましたが、そのハノイで最終回まで見切ったのが今回のドラマ、国民党と共産党の内戦時期を舞台としたスパイ映画、「潜伏」です。

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 抗日戦争終結間近からドラマは始まり、国民党の特務組織に勤めながら、先輩、愛する人、当時の情勢から徐々に共産党に魅かれるようになっていく主人公。共産党の情報員に命を助けられたことから、その国民党の特務組織(「軍統」=軍事委員会調査統計局の略:ドラマ途中からは保密局となが変わりましたが)での身分を維持しながら、共産党のスパイとなり、様々な情報戦を繰り広げるというものです。

 多く描かれているのは、国民党内の内部闘争と彼らの汚職振りです。汚職が内部闘争を呼び、更に汚職を呼ぶ合間を突いて、主人公の共産党スパイは国民党勢力、特に情報組織を内部から崩壊させていきます。大陸から描かれているのでかなりのバイアスはやむを得ないでしょうが、確かに相当腐敗していたという当時の国民党政権、「漢奸」と呼ばれた日本人と協力した中国人から当時の国民党政権は財産を没収していき、それらがどんどん懐に入って中で腐敗していくような構図も、国民党が富と財では圧倒的に優位であったであろうに共産党に破れていくプロセスとして興味深いです。

一つ一つのスパイ工作は非常にスリリングで、それだけでも頭を使う推理小説のような楽しみ方ができました。また、エンディングは内戦終結後も、引き続き国共双方のスパイ戦が激しく続いたのを匂わせるような、そんな余韻を残すなかなか味のあるものでした。俳優陣はそれほど有名な人が出ているようには思えませんでしたが、確かに皆なかなかの演技派といった感じです。写真の主人公もパッと見はちょっと近づき難い感じの風貌、実際にその風貌どおりの冷酷な謀略を繰り出すところが多いのですが、その合間に出る人間的な普通の表情とのコントラストが印象的でした。

 ドラマを一つ終わるごとに、時代背景や内容をがらっと変えるようにしているのですが、そうすると同じ中国語でも本当に違ったボキャブラリーが出てくるので、それもまたドラマをとっかえひっかえ見ることの楽しみです。このドラマの中では国共両党の政治用語が山ほど出てきて、またそれらが当時の緊迫した世相とあいまって、ドラマ全体を非常に緊張感のあるものにしています。中国のドラマにはどれも言えますがストーリー展開は概して速く、余韻に浸るような点は他の国のドラマに劣るような気はしますが、大抵30話以上ある長さの中で飽きさせないようにする工夫かなあと感じます。(それにまんまと引っかかってか、全然飽きずに観させてもらっています。)

 そんなことを書いていると、2月10日の新聞ではアメリカのボーイング社で勤務していた中国人が、産業スパイ容疑で有罪となったというニュースが流れてきました。さすがに、現代では暗殺やら拷問やらというドラマのような現実は少なくはなったのでしょうし、今回嫌疑がかけられているのもっスペースシャトルの技術開発に関する秘密のやり取りのようですが、タイミング良く現実の現代のニュースでもスパイの話が出てきたので、「もしかしたらあんな世界が今も繰り広げられているのかなあ・・・」などと想像を膨らませたりしました。