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/で/は\ありなましや。御はかし遣(つか)はし。上達部(かんだちめ)殿上人(てんじやうびと)参(まゐ)りつどひなどはえし給(たま)はざらまし。御乳母(めのと)などもかくきほひまいることはなからまし。中々(なかなか)東宮(とうぐう)にはとのの許(ゆる)してたてなどはしもやし奉(たてまつ)らせ給(たま)はまし。かく心(こころ)のまゝに世をひゞかし/て/は\えもてなさせ給(たま)はざらまし。中宮(ちゆうぐう)女御(にようご)-殿(どの)などおはしませど。女の御有様(ありさま)は限(かぎ)りあれ/ば、いみじく思(おぼ)し召(め)せども。いろに出(い)で/させ給(たま)ふ/べきにあらず。たゞ人(ひと)のやうに。さらぬまでもむつかしく申(まう)さ/せ給(たま)ふ/べきならねば。よき人(ひと)と申中/に/も\中宮(ちゆうぐう)いとあてにこめかしくおはします。後冷泉(ごれいぜい)/の-院(ゐん)/の\御ときに。大宮(おほみや)などこそは同(おな)じことなれど幼(をさな)くより女院(にようゐん)も一(ひと)つに\思(おぼ)し-奉(たてまつ)らせ給(たま)ひ、やんごとなく煩(わづら)はしくも思(おも)ひ申(まう)さ/せ給(たま)ふ/べかりしかど。それだにことにいてゝ申(まう)さ/せ給(たま)ふ\ことなかりき。ましてこの世はたゝ御心(こころ)なりうちとのの。こ中宮(ちゆうぐう)を参(まゐ)らせ給(たま)へ/り/しに。女院(にようゐん)はやがていらせ給(たま)はでやませ給(たま)ひ/にき。人(ひと)の御もてなしにや。わ/が\御-心(こころ)といらせ給(たま)はざりしにや。入道(にふだう)-殿(どの)はわ/が\御-むすめ参(まゐ)らせ奉(たてまつ)らせ給(たま)ひ/てしか/ば、また他人(ことひと)はさし出(い)で/させ奉(たてまつ)らせ給(たま)はざりき。このとのは四条(しでう)/の-宮(みや)参(まゐ)らせ給(たま)へ/り/しかど。中宮(ちゆうぐう)の御ことをば所(ところ)をき参(まゐ)らせさせ給(たま)ひ/て、ものを御覧(ご-らん)ずる/に/も\何事(なにごと)にもまづあの御方(かた)のことをと\思(おぼ)し-掟(おき)てさせ給(たま)へり。女院(にようゐん)の思(おぼ)し召(め)さんこともあり。人(ひと)よこさまに参(まゐ)らせ給(たま)ふ。こゐん御こともあれ。さこそはあるべきこと/なれ/ど、我御かたざまにならせ給(たま)ひ/ぬれ/ば、

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はかなきこともものしけなる御けしき/なら/ば\うちにも煩(わづら)はしく、ましてまいる人(ひと)などはあるべきなら/ね/ど\さやうなる御けしきもなくて、上達部(かんだちめ)殿上人(てんじやうびと)などまいり。いとはなやかにてこそはありけれ。さりとても理(ことわり)の御ことこそあらめ。御心(こころ)とかやうにはえおはしまさゞらまし。後冷泉(ごれいぜい)/の-院(ゐん)は何事(なにごと)も。\唯(ただ)\とのにまかせ申(まう)さ/せ給(たま)へりき。のちの世(よ)/にこそ宇治にもこもりゐさせ給(たま)ひ/てよもしらじ。ものなどもそうせしとて世をすてたるやうにておはしましゝが。されど除目あらんとては。まづ何事(なにごと)も申(まう)さ/せ給(たま)ふ。そうせさせ給(たま)は/ね/ど、かのとのの人(ひと)に受領にても\唯(ただ)/の\官(つかさ)にても。よき所(ところ)はなさせ給き。同(おな)じ関白(くわんばく)と申せど。廿より八十までせさせ給(たま)ふ。世(よ)/の人(ひと)なびき申(まう)し-おち聞(き)こえさせたる。理(ことわり)なり。このうちの御心(こころ)いとすくよかに。世(よ)/の-中(なか)の乱(みだ)れたらんことを、なをさせ給(たま)はんと思(おぼ)し召(め)しせいなどもきびしく、すゑの世(よ)/の御門(みかど)にはあまりてめでたくおはしますと申(まう)し/けり。人(ひと)にしたがはせ給(たま)ふべくもおはしまさず。御-ざえなどいみじくおはします。後朱雀(すざくの)院(ゐん)をすくよかにおはしますと思(おも)ひ申(まう)しに。これはこよなくまさり奉(たてまつ)らせ給(たま)へり。世(よ)-人(ひと)おち申(まう)し/たる理(ことわり)なり。大方(おほかた)の御もてなしいとけたかくおはしましけり。女院(にようゐん)の申(まう)さ/せ給(たま)ふ\ことをも。さるまじきこと/を/ば\\更(さら)/に\きかせ給(たま)はず。またもよにはめでたき事(こと)/のあるべきにや。いまの右大(おほ)-殿(との)の二郎中納言(ちゆうなごん)にて左兵衛督(さひやうゑ)のかうにてものし給(たま)ふ。この左大(おほ)-殿(との)の上(うへ)の御せうとなり。その

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