まだ\世(よ)/に\あら/ば、はかなき\世(よ)/に/ぞ\さすらふ/らむ。あはれ/と\思(おも)ひ/し\ほど/に、わづらはし-げ/に\思(おも)ひまとはす\けしき\見(み)え/ましか/ば、かく/も\あくがらさ/ざら/まし。こよなき\とだえおかず、さるもの/に\し-なし/て\長(なが)く\見(み)る\やう/も\はべり/な/まし。か/の\撫子(なでしこ)/の\らうたく\はべり/しか/ば、いかで\尋(たづ)ね/む/と\思(おも)ひ\たまふる/を、今(いま)/も\え/こそ\聞(き)きつけ\はべら/ね。

これ/こそ\のたまへ/る\はかなき\例(ためし)/な/めれ。つれなく/て\つらし/と\思(おも)ひ/ける/も\知(し)ら/で、あはれ\絶(た)え/ざり/し/も、益(やく)-なき\片思(かたおも)ひ/なり/けり。

今(いま)\やうやう\忘(わす)れゆく\際(きは)/に、かれ/は\たえ/し/も\思(おも)ひ-離(はな)れ/ず、折々(をりをり)\人(ひと)-やり/なら/ぬ\胸(むね)\焦(こが)るる\夕(ゆふ)べ/も\あら/む/と\おぼえ\はべり。これ/なむ、え\保(たも)つ/まじく\頼(たの)もし-げ-なき\方(かた)/なり/ける。P1056

され/ば、か/の\さがな者(もの)/も、思(おも)ひ出(い)で\ある\方(かた)/に\忘(わす)れがたけれ/ど、さしあたり/て\見(み)/む/に/は\わづらはしく/よ、よく\せ/ず/は、飽(あ)き/たき\こと/も\あり/なむ/や。琴(こと)/の\音(ね)\すすめ/けむ\かどかどし-さ/も、好(す)き/たる\罪(つみ)\重(おも)かる/べし。こ/の\心(こころ)もとなき/も、K1036