P2479

裳(も)/は\黄(き)/なり。袴(はかま)/は\赤(あか)き\薄様(うすやう)、下(した)ざま/に\白(しろ)く\重(かさ)なりたるいとおかし。袴(はかま)表着(うはぎ)/は\心々(こころごころ)のいろなり。むらごにてさうかんのもなるも有。うるはしくてとあれ/ど、うすやうのしたゑのつゐてにはまたせぬことなくぞしなしける。五巻の日は皇后宮(くわうごうぐう)しもにおはしませど。何事(なにごと)もむかひたるやうにてゆきみちなどもやがて同(おな)じこと御覧(ご-らん)じつへし。女房(にようばう)今日(けふ)はしろきゝぬどもをいくつどもなく重(かさ)ねてをしいでたり。中々(なかなか)いみじく清(きよ)げにみゆ。中宮(ちゆうぐう)のおはしますかたにむかひ/たり。大納言(だいなごん)より始(はじ)め奉(たてまつ)りてさゝげものとりつゞきたり。いみじく見所(みどころ)ありめでたきことになんありける。女院(にようゐん)の御さゝげもの。優曇花(うどんげ)をつくりたり。三条(さんでう)院(ゐん)/の\中将(ちゆうじやう)もちてめくる。皇太后宮(くわうだいこうくう)のはなこに。きし様々(さまざま)はないれてたまをつらぬきてをにしたり。重(かさ)ねたるをやがてその\宮(みや)のすけきんもととりつゞきたり。次(つぎ)には中宮(ちゆうぐう)のきくのはなをませにゆひ/たり。こがねしろがねきゝく、しろきくにてふたつなり。新大納言(だいなごん)の御この四位(しゐ)少将(せうしやう)もとながとりたり。皇后宮(くわうごうぐう)のは如意ほうすかねのいとしてむすび。たまをつらぬきたり/など\みつありけれ/ば、源中将(ちゆうじやう)たかつなみやのすけもろもとのべん。民部卿(きやう)の中将(ちゆうじやう)とぞも給(たま)へる。東宮(とうぐう)のは。かねの水瓶たらゐ。やがてすけながのべん女御(にようご)-殿(どの)はきやうだいのかゞみ。あつ家(いへ)の少将(せうしやう)もたり。とのの一/の-宮(みや)は。かうこのはこにつぼみつすべて、かねのきくをさしたり。たゞとしの前少将(せうしやう)前斎院(ゐん)/の\は。たらゐに水ひんみなかねなり。少なこんさねむねもちてめくる。きく度(たび)ごとにかくいひ-たつる

P2480

/も\いか/に/ぞ/やあれ/ど、またさいはてはかひなき心地(ここち)すればなり。きやうなどもめなれたりとて、ごくらくの作法(さほふ)とき給(たま)はでやはあるとてなん。うちつゞきめくる程(ほど)たうときも忘(わす)れて、おかしくめでたくなん左大との。右大との。内(うち)大(おほ)-殿(との)/など\様々(さまざま)にうちわてふのおほきなるなどもたせ給(たま)へ/り/し。\唯(ただ)/の\上達部(かんだちめ)はかうろを五葉の枝につけ給(たま)へり。殿上人(てんじやうびと)は。わげ\更(さら)/なり源大納言(だいなごん)-殿(どの)は。いまはうち大(おほ)-殿(との)と聞(き)こえさす。その御この中納言(ちゆうなごん)こそ、さくらのえだにまりつけてもたせ給(たま)へ/り/しが。御かしこまりには許(ゆる)され給(たま)へれどありしやうに。みすのうちにはいり給(たま)はず。蔵人(くらうど)たきゝ水とりなとして\南(みなみ)-にし/に/は\まひかく例(れい)/のことおもしろくめでたし。五日か説経いとたうとし。かくめでたきことも世(よ)/にはありけりとみゆ。かくてことはてよふけてみなかへらせ給(たま)ひ/ぬ。中宮(ちゆうぐう)は御て車(ぐるま)にてかへらせ給(たま)ふ。上達部(かんだちめ)殿上人(てんじやうびと)。あるべき限(かぎ)りなかえにつき給(たま)へるほかけもおかしくめでたし。女房(にようばう)はたいわだ-殿(どの)につたひつゝまいる。此(こ)/の-頃(ごろ)はそれよりほかのことなくて過(す)ぎゆく。ころもかく五節(ごせつ)りんし祭(まつり)なとすきて、としもかへり/ぬれ/ば、例(れい)/の作法(さほふ)にて過(す)ぎゆく。うちとのに行幸(ぎやうがう)あるべしとありつれど。とまりぬれば口(くち)-惜(を)しく思(おぼ)し召(め)す。五月最勝の御はかうあるべしとあるに。女院(にようゐん)もうちにおはします。皇后宮(くわうごうぐう)上(うへ)の御つぼねにおはします。せいりやうでんうしとらのつまど・わだ-殿(どの)かけて例(れい)/の弘徽殿(こきでん)の上(うへ)の御つぼねのやうなり。おはします程(ほど)/ばかり/に、御帳/より/は

P2481