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\△左〈勝〉△△春日(かすが)/の-祭△△△△△△△△△範永

@今日(けふ)まつる春日(かすが)/の山(やま)の神ませはあめの下にや君そさかへん W538

\△右△△七夕まつる△△△△△△△土佐

@万代に君そみる/べき七夕のゆきあひの空を雲(くも)の上にて W539

\△左〈勝〉△△さくら△△△△△△△△△右大臣(うだいじん)-殿(どの)

@春雨にぬれてかへらん桜花雲(くも)のかへしの嵐もそふく W540

\△右△△こまむかへ△△△△△△△下野

@引こまの数より外にみえつるは関の清水のかけ/に/ぞ\有ける W541

\△左△△うぐひす△△△△△△△△宮大夫〈隆国〉

@山里のかきねに春やしるからんかすまぬさきに鴬の鳴(な)く W542

\△右△△はぎ△△△△△△△△△△美濃

@折(をり)やせんおらてやみまし秋(あき)萩(はぎ)に露も心(こころ)をかけぬ日そなき W543

\△左〈勝〉△△子日△△△△△△△△△△頭中将(ちゆうじやう)

@いづれをかわきてひかまし春日野(かすがの)/のなへてちとせの松(まつ)の緑を W544

\△右△△鴈△△△△△△△△△△△伊勢大輔(たいふ)

@こよ深く旅の浦にて鳴(な)く鴈はをのか羽かせやよ寒む成らん W545

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\△左〈持〉△△むめ△△△△△△△△△△さがみ

@岩間もる水/に/ぞ\やとる梅(うめ)の花梢はかせのうしろめたさに W546

\△右△△をやまた△△△△△△△△伊勢大夫

@秋(あき)のよの山田の庵はいなつまの光のみこそもり明(あ)かしけれ W547

\△左△△あをやき△△△△△△△△宮内侍(ないし)

@皆(みな)人(ひと)の心(こころ)に懸てくるものは岸になみよる青柳のいと W548

\△右〈勝〉△△紅葉(もみぢ)△△△△△△△△△民部卿(きやう)

@大ゐ川たきつせもなくあきふかみ紅葉(もみぢ)の渕と成にける哉 W549

\△左△△残雪△△△△△△△△△△但馬

@花ならておらまほしきは難波江の芦のわかはにふれる白雪 W550

\△右△△きく△△△△△△△△△△民部卿(きやう)

@紫のまたあかさりし二葉にもきくに心(こころ)は染てしものを W551

\△左〈勝〉△△祝△△△△△△△△△△△内(うち)の御製〈源三位にかはらせ給(たま)へる〉

@長浜のまさこの数も何(なに)ならすつきせすみゆる君かみ代かな W552

\△右△△△△△△△△△△△△太夫隆国

@住のえに生そふ松(まつ)の枝毎に君かちとせの数そこもれる W553

/など/ぞ\有り/ける。

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あけゆけばことはてゝ大臣大納言(だいなごん)次々(つぎつぎ)の人々(ひとびと)。ものかつぎてまかて給(たま)ふ。織物(おりもの)のもからぎぬ。ほそなか\唯(ただ)/の\御衣(ぞ)-共(ども)/などかつき給いひつくすべくもあらずなむ。世(よ)/の-中(なか)のゆきかはり人(ひと)の御さいはひ/など\昔(むかし)物語(ものがたり)のやうなることどもあるを、幼(をさな)き人(ひと)などにもかかることこそはあれども。みせんとてかきとどむれ/ば、近(ちか)きほとのことは中<忘(わす)れとし月の程(ほど)もたがひてぞ。とのの大納言(だいなごん)大臣にならせ給(たま)ひ/にきなどいひ/たれ/ど\このうたあはせには中将(ちゆうじやう)にておはしましゝ程(ほど)なりけり。人(ひと)のせよといふことにもあらずものしらぬ人(ひと)のもどき心(こころ)やましくも\思(おぼ)し/ぬべきことなれど。何(なに)のかき留(とど)めまほしきにか過(す)ぎにしことも。いまのこともしどけなし。かく所々(ところどころ)にかきとどむるは唯(ただ)/なるよりは人(ひと)にももどかれむとなるべし。

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〔栄花物語巻第三十七〕 煙(けぶり)後(のち)