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//のみ\おはします。麗景殿(れいけいでん)の女御(にようご)のぼせ奉(たてまつ)り給(たま)ひ/て、さうの御ことひかせ奉(たてまつ)り給(たま)ひ/けり。いとあてにおかしき御さまにて、いとおかしうひかせ給(たま)ふ。同(おな)じもののねなれども。よき人(ひと)のひき給(たま)はんにあひておかしきものになん。小野宮(をののみや)の右大(おほ)-殿(との)大将(だいしやう)ぢし給(たま)ひ/てけれ/ば、とのの大納言(だいなごん)なり給(たま)ひ/ぬ。なげきて東宮(とうぐう)大夫こもりゐ給(たま)へり。よろこびなど申(まう)さ/せ給さまいとめでたし。かくて師走(しはす)の一日。また一条(いちでう)/-院(ゐん)やけぬ。あさましなどもことさらのやうなり。うちはかやうゐむとのに渡(わた)ら/せ給(たま)ひ/ぬ。東宮(とうぐう)は京極(きやうごく)-殿(どの)に一品(いつぽん)/-宮(みや)もくし奉(たてまつ)らせ給(たま)ひ/て、渡(わた)ら/せ給(たま)ひ/ぬ。かやうゐん-殿(どの)に一/-宮(みや)とののうへもおはします。めでたくいみじいかならんことをつくして御覧(ご-らん)ぜさせんと思(おぼ)し召(め)したるも理(ことわり)なり。一/-宮(みや)は。女院(にようゐん)のおはします寝殿(しんでん)の東(ひんがし)面(おもて)、そなたのらうかけておはします。ひんかしのたいはこの度(たび)はなくて、やまがは流(なが)れ。たきの水きをひおちたるほど/など\いみじうおかし。ゐんの御方(かた)にいではべん

@たきつせに人(ひと)のこころをみることは。昔(むかし)にいまもかはら/ざりけり W481

\いせかせきいれておとすといひたる。大納言(だいなごん)の家(いへ)ゐもかばかりはあら/ざりけんとめでたくいみじ。としかへりぬれ/ば、所々(ところどころ)の有様(ありさま)ともいとめでたし。梅壺(むめつぼ)の女御(にようご)-殿(どの)/の御\覚(おぼ)え\月日/\添(そ)へ/ていとめでたく世(よ)-人(ひと)は申せど。いかなるか后(きさき)//\えゐ給(たま)ふましとのみ申す。何事(なにごと)にてしるきにかこの御ときは制あり/て、きぬのかず/\五、

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くれなゐの織物(おりもの)などはせいあり。もののはへなけれ/\折(をり)<ゐんの人(ひと)のさうぞくなどはいとおかしくせさせ給(たま)ふ。されどせいあればいと口(くち)-惜(を)しくぞ。五月最勝の御はかうに。うへの御つぼねにおはします。さうふをみなうちてやがてさうふのからぎぬ。くすだまなどつけてながきねをやかで御(お)-前(まへ)のみすのまへのやりみづにひたして、いてゐたるも麗景殿(れいけいでん)も折(をり)<のしやうぞくおかしう。細(ほそ)-殿(どの)にてことびはひきあはせて、殿上人(てんじやうびと)などもの誦しなどしてあそぶ。五日かかの左衛門(さゑもん)/一品(いつぽん)/-宮(みや)のいではに

@袂(たもと)にはいかにかへらむあやめぐさ。なれたる人(ひと)のそてぞゆかしき W482

/\いひ/たりけれ/ば、いてはへん

@へだてなくしらせやせましここのへの疎(おろ)か/ならぬにかくるあやめを W483

\このいてはべんいとおかしうすきものからかうしんなることいではのにほひにや。みやのやうもことになんあると。てんじやうの人々(ひとびと)いひけるをきゝて、梅壺(むめつぼ)の女房(にようばう)のいひける

@みにしむときくそゆかしきいろなしていか/\そめけるきみかにほひそ W484

\かへし

@誰(たれ)かさはかたりちらすそ日/\添(そ)へ/て盛(さか)り過(す)ぎゆくはなのにほひを W485

\皇后宮(くわうごうぐう)の御方(かた)も昔(むかし)の皇太后宮(くわうだいこうくう)のなごりはなはなと今(いま)めかしうおかしくぞおはします。此(こ)/-頃(ごろ)内(うち)-辺(わた)り昔(むかし)\覚(おぼ)え/ておかし。ご一条(いちでう)ゐんの御ときは。たゞ中宮(ちゆうぐう)ひとゝころおはしまし/て、たゞ人(ひと)

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