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\こひ忍(しの)び\参(まゐ)らす。四月はこゐんの御はてにて、いとどけさなくこゑにおどろかせ給(たま)ふ。御こころのうちともいふかたなし。九月まではみやたちなをくろくておはします。五月五日うちより皇后宮(くわうごうぐう)に

@もろともにかけしあやめをひきわかれ\更(さら)/\こひぢにま〔と〕ふころかな W450

みやの御かへし

@かたがたにひきわかれつゝあやめぐさあはぬねをやはかけんと思(おも)ひし W451

/\聞(き)こえさせ給(たま)へるを、いとあはれと思(おぼ)し召(め)す。うちには斎宮をぞいみじう悲(かな)しうし奉(たてまつ)らせ給(たま)ひ/ける。男(をとこ)-宮(みや)をばまたいかでかは疎(おろ)かには思(おも)ひ聞(き)こえさせ給(たま)はん。女(をんな)-宮(みや)をばいと悲(かな)しうし奉(たてまつ)らせ給(たま)ひ/ける。中宮(ちゆうぐう)ははな<といとめでたくおはします。御有様(ありさま)あてにけたかくおはします。八月にうちの一/-宮(みや)御元服せさせ給(たま)ひ/て、東宮(とうぐう)に立(た)た/せ給(たま)ふ。思(おも)ひつることなれどさしあたりてはいとめでたし。だいぶにはやがて東宮(とうぐう)だいぶ。権大夫(ごんだいぶ)には源大納言(だいなごん)。すけには近江(あふみ)のかみ。たかすけ権/-亮(すけ)にうち大(おほ)-殿(との)のみちもとの侍従(じじゆう)。宣旨(せんじ)には宰相(さいしやう)の乳母(めのと)。びぜんのせんしながつねのきみのむすめなり。大進にはいよのかみながのり。京極(きやうごく)-殿(どの)/の寝殿(しんでん)に。東(ひんがし)面(おもて)//\一品(いつぽん)きた面(おもて)にはゐんの御(お)-前(まへ)さいゐんとおはしまいて、西(にし)/-対(たい)に東宮(とうぐう)の御しつらひはしたり。一品(いつぽん)の御ふくはてんまゝに。御も奉(たてまつ)り/て、東宮(とうぐう)に参(まゐ)らせ給(たま)ふ/べし。うちにとこゐんは申(まう)さ/せ給(たま)ひ/しかども。后(きさき)も数多(あまた)おはします。御としもこよなしなど思(おぼ)し召(め)すなるべし。

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十月に行幸(ぎやうがう)ありいとめでたくておはします//\二所(ところ)うちつゞきておはしましゝは。まづ思(おぼ)し召(め)しいでられて、かき暮(くら)し思(おぼ)し召(め)さるれど。さりげなくまぎらはしておはします。中宮(ちゆうぐう)には前栽(せんざい)あはせきくあはせなどせさせ給(たま)ひ/て、おかしきこと多(おほ)かり/皇后宮(くわうごうぐう)にはよろづをよそにきかせ給(たま)ひ/て思(おぼ)し召(め)し嘆(なげ)くこと限(かぎ)りなし。たいぶにはこ中宮(ちゆうぐう)の御-忌(いみ)のほど煩(わづら)ひ給(たま)ひ/しが。ともすればおこり給(たま)ひ/つゝ煩(わづら)ひ給(たま)ふ。故皇太后の折(をり)より此(こ)/\宮(みや)をばとりつき扱(あつか)ひ聞(き)こえさせ給(たま)ふ。枇杷(びは)-殿(どの)やけにしかは閑院(かんゐん)におはします。だいぶ殿(どの)/のうへは別当の御むすめをかしづき奉(たてまつ)り給(たま)ひ/て、二/-宮(みや)に思(おも)ひ志(こころざし)聞(き)こえさせ給(たま)へり。別当とはきんなりの兵衛(ひやうゑ)のかうなり。御ふくはてゝ一品(いつぽん)/-宮(みや)さいゐんの御(み)-髪(ぐし)そかせ給とのぞ。そき奉(たてまつ)らせ給宮々(みやみや)のきくの御衣(ぞ)/のうへにしろきからあや奉(たてまつ)り/て、一品(いつぽん)のおはしますいとけたかくはな<とめでたくおかしげにおはします。御(み)-髪(ぐし)のかかりなどゑにかくとも筆もをよぶまじさいゐんのいとこめかしくらうたけに美(うつく)しうおはしますを、様々(さまざま)にありがたく見(み)奉(たてまつ)らせ給こみやこゐんの御ことを思(おぼ)し召(め)せば。この殿(との)-原(ばら)も疎(おろ)かにえ思(おも)ひ聞(き)こえさせ給(たま)はず。そのころはとのの中将(ちゆうじやう)と聞(き)こえしは。中納言(ちゆうなごん)にてものせさせ給(たま)ふ。御かたちいとめでたくにほはせ給(たま)へりうち大(おほ)-殿(との)の三位中将(ちゆうじやう)いまは中納言(ちゆうなごん)にてものせさせ給(たま)ふ。小一条(こいちでう)院(ゐん)/\高松(たかまつ)-殿(どの)/の姫君(ひめぎみ)にぞむことり聞(き)こえさせ給(たま)へ

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