P2403

〔栄花物語巻第三十四〕 晩待星

としかはりぬれ/ば、内(うち)-辺(わた)りはなやかにいかめしう御くすりまいり。御まかなひ三日のほどいとめでたし。七日式部(しきぶ)-卿(きやう)/の-みやの姫君(ひめぎみ)まいり給(たま)ふ。とののゐたちせさせ給(たま)ふ\こと/なれ/ば、世(よ)/のなかなひきていとめでたし。うちより御つかひ行経の四位(しゐ)少将(せうしやう)まいる。てかきの大納言(だいなごん)の御(み)-子(こ)。いまのごん大納言(だいなごん)みんぶきやうになり給(たま)へる。こにし給(たま)へり。かたちよくはなやかなる人(ひと)なり。かくて参(まゐ)らせ給(たま)ひ/ぬれ/ば、御つかひ度々(たびたび)まいりてのぼらせ給(たま)ひぬ。とののうへもおはします。こうきでん登花殿うけておはします。うちはなしつぼねになをおはしませ/ば、みちいととをし。一品(いつぽん)/の-宮(みや)は宣耀殿(せんえうでん)麗景殿(れいけいでん)におはしませ/ば、承香殿のめんたうよりとをりてのぼらせ給(たま)ふ。又(また)の日の御つかひは。すけふさのとう中将(ちゆうじやう)。上達部(かんだちめ)殿上人(てんじやうびと)まいりあつまり。さかづきのほどなどれいの作法(さほふ)よりもめでたし。とののかく思(おぼ)し召(め)し扱(あつか)ひ聞(き)こえさせ給(たま)へ/ば、人々(ひとびと)のしやうぞくなどいへば疎(おろ)か/なり。さるべき人々(ひとびと)きをひまいりいとめでたし。二月十余(よ)日に一品(いつぽん)みや后(きさき)に立(た)た/せ給(たま)ふ。だいぶ/に/は\こ中宮(ちゆうぐう)のだいぶ。権大夫(ごんだいぶ)/に/は\すけひらの右衛門(うゑもん)のかう、亮(すけ)・大進などみなある限(かぎ)りなり。三月/に、また式部(しきぶ)-卿(きやう)/の-みや

P2404

/の\姫君(ひめぎみ)。后(きさき)に立(た)た/せ給(たま)ふ。一品(いつぽん)/の-宮(みや)をば皇后宮(くわうごうぐう)此(こ)/の\宮(みや)をば中宮(ちゆうぐう)と申。だいぶにはみんぶきやう権大夫(ごんだいぶ)/に/は\きんなりの兵衛(ひやうゑ)のかう。すけにはたうべんつねすけ、権/の-亮(すけ)大進ゆきちか。やすのりなどなり。宣旨(せんじ)/に/は\故兵衛(ひやうゑ)のかうのむすめ。たじまのかみ則理(のりまさ)の朝臣(あそん)のむすめ。御(み)-櫛笥(くしげ)-殿(どの)/に/は\左衛門(さゑもん)のかうのむすめ。左大(おほ)-殿(との)の女御(にようご)の御はらの姫君(ひめぎみ)なり中務(なかつかさ)/の-みやのむすめ/など\候(さぶら)ひ給(たま)ふ。皇后宮(くわうごうぐう)とはやうめうもん/の-院(ゐん)におはします。女一宮は斎宮。女二宮は斎院(ゐん)。左大(おほ)-殿(との)のうへにならせ給(たま)へり。男(をとこ)二/の-宮(みや)は一ゐんにおはします。皇后宮(くわうごうぐう)三の宮斎宮斎院(ゐん)にゐさせ給(たま)ひ/ぬれ/ば、一所(ところ)若宮(わかみや)うちあそばし聞(き)こえさせ給(たま)ひ/て、ものをみ思(おぼ)し召(め)しておはします。中宮(ちゆうぐう)はほどなくいらせ給(たま)ひ/ぬ。皇后宮(くわうごうぐう)はいらせ給(たま)へとあれ/ど、いかに思(おぼ)し召(め)すにかいらせ給(たま)はず。まとや女院(にようゐん)は月日のゆくもしらせ給(たま)はず思(おぼ)し召(め)しいらせ給(たま)へり。きたまんどころもみやのおはしまいしかばこそ、うちにもまいりしに。思(おも)ひとどこほりしかとて、ひたぶる/に\そりすてさせ給(たま)ひ/ておはします。ゐんの西(にし)/の-対(たい)の\南(みなみ)-。にしかけて斎院(ゐん)はおはします。いとど美(うつく)し-げにていろの御衣(ぞ)\すき<”なるに。いとくろき御衣(ぞ)\重(かさ)ねて奉(たてまつ)りて渡(わた)ら/せ給(たま)へる。いとあはれなり。御(お)-前(まへ)のにはくもりなきに。月のあかきをながめて、昔(むかし)思(おも)ひいで\参(まゐ)らする人(ひと)なるべし

@くもりなきたづねゆかはや月よりもあかきはちすにきみをすませて W449。

/など忘(わす)るゝよなく

P2405