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\△△△△右勝△△△△△△△春宮(とうぐう)大夫頼宗

@逢迄とせめて命(いのち)の惜(を)しけれ/ば恋こそ人(ひと)の祈り也けれ W405

\夜いみじくふけゆき月のかげすゞしく、もののどやかにみなさはく。いまも昔(むかし)もかかるたぐひあらんやとおぼゆるほど/に、これかれさるべきうたどもゑいじて御あそびあるに。ふえたけのよふくるほどもいとおかしきに。左がたかちわざと\思(おぼ)しくて、沈したんのかひすりかゞみのみつやりなどしたるわりこども。参(まゐ)らせたり輔親(すけちか)/に/は\しやうぞくひとぐかつげさせ給(たま)ふ。次(つぎ)に上達部(かんだちめ)のいで給(たま)ふほど/に、内大臣(ないだいじん)-殿(どの)大納言(だいなごん)三人(にん)に御むま奉(たてまつ)らせ給(たま)ふ。つねのことなれど。こよひはつねよりもまさりておかしくみゆるに。ことの有様(ありさま)ちよをもそへまほしがりし夜のあけゆきしこそ、あかずわりなかりしか。とのの若君(わかぎみ)十一にて御げんぶくせさせ給(たま)ふ。いみじうふくらかにあいぎやうづきにほひやかなる御有様(ありさま)なり。ほどもなく少将(せうしやう)にならせ給(たま)ひ/て、臨時(りんじ)/の-祭(まつり)の舞人(まひびと)せさせ給(たま)ふ。内大臣(ないだいじん)-殿(どの)の三郎ひやうゑのすけと聞(き)こえさせ給(たま)ふ/とまはせ給(たま)ふ。いと美(うつく)しうものせさせ給(たま)ふ。東宮(とうぐう)の大夫殿/に/は\太郎兼頼の宰相(さいしやう)中将(ちゆうじやう)二郎俊家の中将(ちゆうじやう)三郎よしながの侍従(じじゆう)/など\いと数多(あまた)こと御はらにもものし給(たま)ふ。たじまのかみもとさたとてものし給(たま)ふ。十六なるをたちまちなさせ給(たま)へるなりけり。としかへりぬれ/ば、少将(せうしやう)-殿(どの)春日(かすが)/のつかひせさせ給(たま)ふ。殿上人(てんじやうびと)われも<と残(のこ)るなく、え/も-いは/ぬかりぎぬすがたをとらじといとみさうすきたり。いとめでたくて渡(わた)ら/せ給(たま)ふを、とのは限(かぎ)り-なし

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/と\思(おぼ)し召(め)したり。殿(との)-原(ばら)もいみじく美(うつく)しがりめで聞(き)こえさせ給(たま)ひ/たりつる。御とののうへいと悲(かな)しうし奉(たてまつ)らせ給(たま)ふ。つねに。中宮(ちゆうぐう)にうへは参(まゐ)らせ給(たま)ふ。七十にあまらせ給(たま)へど。御(み)-髪(ぐし)はゆら<とふさやかにおはしますもいとめでたくおはしましける御(み)-髪(ぐし)なればなるべし。うちに一品(いつぽん)/の-宮(みや)の御もきのこと思(おぼ)し召(め)し急(いそ)が/せ給(たま)ふ。御調度(てうど)は蔵人(くらうど)よしきよに\仰(おほ)せごと給(たま)はせて、いみじくなへてならずと\思(おぼ)し/たり。御ひやうぶのゑ。こころのからのゑどころにゑしめしていみじくせさせ給(たま)ふ。女房(にようばう)のしやうぞくもからぎぬ表着(うはぎ)。わらはのしやうぞくなど人々(ひとびと)あたり。三日ほど大人(おとな)三十人(にん)わらは六人(にん)かしやうぞくを色々(いろいろ)様々(さまざま)になへてならすと思(おぼ)し召(め)すあくればまつ渡(わた)ら/せ給(たま)ふ。御調度(てうど)召(め)してかつ御覧(ご-らん)じ、そのことかのこと/など\こと<”なく\思(おぼ)し-急(いそ)が/せ給(たま)ふ。あてにけたかくおはします。御こころにもこのみちは限(かぎ)りなき御ことにこそ、つねたうの弁宰相(さいしやう)になりてとし家(いへ)の中将(ちゆうじやう)頭になり給(たま)ひ/ぬ御こころに思(おぼ)し召(め)しけるは。東宮(とうぐう)にかたりある位(くらゐ)なりども此(こ)/の-頃(ごろ)譲聞(き)こえて、一品(いつぽん)/の-宮(みや)をやがて参(まゐ)らせ奉(たてまつ)り給(たま)はんと思(おぼ)し召(め)す。世(よ)-人(ひと)は若宮(わかみや)にぞ参(まゐ)らせ奉(たてまつ)り給(たま)はんと思(おも)ひ申しかど。いかに思(おぼ)し召(め)すにか。東宮(とうぐう)にと\思(おぼ)し-さりとてさきの一品(いつぽん)/の-宮(みや)。疎(おろ)かに思(おも)ひ参(まゐ)らせ給(たま)ふべきにあらず。たゞみるよに。今(いま)-少(すこ)し。うごきなく見(み)奉(たてまつ)らんとおもふなり/など\人(ひと)-知(し)れ/ず御ふみかよひけり。かかれとうち/に/は、内大臣(ないだいじん)-殿(どの)の御(み)-櫛笥(くしげ)-殿(どの)

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