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はかなくあけぬれ/ば、いてさせ給(たま)ふ/もいとあかぬ様(さま)に思(おぼ)さる。御-供(とも)の御随身御車(くるま)副舎人(とねり)まで只今(ただいま)そのまゝにて位(くらゐ)につかせ給(たま)へらましよりもけに思(おも)ひ/たり。かへらせ給(たま)ひ/ぬれ/ば、女御(にようご)の君(きみ)御帳よりも出(い)で/させ給(たま)はず。院(ゐん)よりやがておはしましけるまゝにやとみゆる程(ほど)/に、御つかひあり二位(にゐ)中将(ちゆうじやう)などいであひ給(たま)ひ/て、え/も-いは/ずゑはし給(たま)ふ。女房(にようばう)のかはらけさゑいつるそでぐちなどこそめもあやなれ。御かへり給(たま)ひ/て、女の装束えびぞめ/の小褂そへて給(たま)はりてまいりぬ。さてくるゝもこころもとなくておはしましぬ。四五日ありてぞ御露顯(ところあらはし)ありける。院(ゐん)皇后宮(くわうごうぐう)に申(まう)さ/せ給(たま)ふ。よさりいかに恥(は)づかしうはべらんずらん。かしこにまかれ/ば、二位(にゐ)中将(ちゆうじやう)三位中将(ちゆうじやう)などかまちむかふるに、いとすずろはしきに、こよひはもちいのよとかきゝはべりつる。おとどもものせらるべきやうにこそきゝはべりしかど。聞(き)こえさせ給(たま)へ/ば、げにいかにと思(おぼ)し召(め)し/て、御装束どもにえならぬかどもしめさせ給(たま)ふ。さやうのかたはなべてならぬみやの御有様(ありさま)に、心(こころ)-異(こと)/に恥(は)づかしう思(おぼ)し召(め)してしたてさせ給(たま)ふ\程(ほど)推(お)し量(はか)るべし。かくて御もとに参(まゐ)る人々(ひとびと)。少(すこ)しもかたくなしきはえりすてさせ給おはしましていらせ給(たま)へ/ば、左衛門(さゑもん)/のかうなど例(れい)の君達(きんだち)参(まゐ)らせ給(たま)へ/ば、なますゞろはしう思(おぼ)し召(め)されていらせ給(たま)ふ。殿上人(てんじやうびと)のざには、かけばんのものどもいみじうしすへたり。御随身所(どころ)めしつぎどころかずしらず。机のものどもしすへたり。
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もてなし給様(さま)\こころゆく様(さま)なり。ゑましくさすがにみゆ。いらせ給(たま)へば御となぶら、ひるのやうにあかきに、女房(にようばう)三四人(にん)五六人(にん)づゝうちむれつゝ、え/も-いは/ぬ有様(ありさま)どもにて、こほりふたがりたるあふぎどもをさしかくして、なみ候(さぶら)ふ程(ほど)いみじうおどろ<しきものから、恥(は)づかしげなり。御しつらひ有様(ありさま)。耀(かかや)くとみゆ。院(ゐん)の御(おん)-心地(ここち)年(とし)-頃(ごろ)堀河(ほりかは)のわたりの有様(ありさま)。御めうつりにまつおぼしいでらるべし。かくてもの参(まゐ)らせ給まかなひは、左衛門(さゑもん)/のかうつかうまつり給(たま)ふ。とりつぎ給(たま)ふ¥事(こと)は、二位(にゐ)中将(ちゆうじやう)三位中将(ちゆうじやう)などせさせ給(たま)ふ。御たいまいりての程(ほど)/に、大(おほ)-殿(との)出(い)で/させ給(たま)ひ/て、うるはしき御よそひにて、御かはらけ参(まゐ)らせ給(たま)ふ\程(ほど)いへば疎(おろ)かにめでたし。院(ゐん)は御衣(ぞ)ども御直衣(なほし)/など/のいろを、いと慎(つつ)ましうかたはらいたう思(おぼ)せと、かやうの事(こと)はそれをゆゝしくと宣(のたま)はせぬ事(こと)なればいかにぞや。やつれたる様(さま)を恥(は)づかしう思(おぼ)し召(め)せど。なか<それしも夜めに御いろのあはひもてはやされて、けざやかにおかしうみえさせ給(たま)ふ/も、ことさらめきかくもありぬべき事(こと)なりけりとぞみえさせ給(たま)ふ。御けはひにほひなどぞしみかへらせ給(たま)へる。御かたちけぢかくあいぎやうづきおかしくおはします。こよひの御有様(ありさま)。必(かなら)ずゑにかかまほし。御年(とし)廿三四におはしませ/ば、さかりにめでたくひげなど少(すこ)しけはひつかせ給(たま)へる。あなあらまほしめでたやとぞみゆる御有様(ありさま)なめる。かくて御-供(とも)の人々(ひとびと)の禄ども、例(れい)の作法(さほふ)に
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