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\猶(なほ)いとこころづきなく、ともすれ/ば、御かくれあそび/の\程(ほど)/も、わらはげたる心地(ここち)-し/て、それをあかぬ事(こと)にぞ思(おぼ)されたる。

かくて内(うち)-辺(わた)りめでたくてすごさせ給(たま)ふ\程(ほど)/に、火出(い)で來(き)て燒(や)けぬ。御門(みかど)もみや/も、まつもとゝ言(い)ふところに渡(わた)ら/せ給(たま)ひ/ぬ。いづれの御とき/も、斯(か)かる事(こと)はあれ/ど、こころのどかにしも思(おぼ)し召(め)さ/れ/ぬ/に、斯(か)かる事(こと)をいと<口(くち)-惜(を)しく思(おぼ)さるべし。三日\あり/て、やがてだいりつくるべき事(こと)思(おぼ)しをきてさせ給(たま)ふ。その折の修理(しゆり)/のかみ/に/は、皇后宮(くわうごうぐう)の御せうとのみちたう/の-君(きみ)、南殿造(つく)るべく仰(おほ)せらる。もくのかみ/に/は、此のみやの御乳母(めのと)の男(をとこ)。中務(なかつかさ)/の-大輔(たいふ)ちかより/と\あり/し\君(きみ)/を、此の司召(つかさめし)になさせ給(たま)へ/り/しか/ば、せいらう殿/を/ば。それつくる。こと殿(との)/を/ば、たゞ受領各(おのおの)皆つかうまつるべき宣旨(せんじ)くだり/て、官使部原国々あかれぬ。此の四月みあれの日よりてをの始(はじ)め/て、来年の四月いぜん/に\つくりいださ/ゞら/ん/を/ば、官(つかさ)をとりくにを召(め)しかへしなどせさせ給(たま)ひ、其の\程(ほど)/につくり/を\へ/たら/ん\あら/ば、任(にん)を延(の)べ位(くらゐ)をまさせ給(たま)ふべきよしの宣旨(せんじ)くだりぬ。かくきびしくおほせられしか/ば、まづ近(ちか)きくに<”、南殿・せいらうでん/など/は、皆(みな)四月棟(むね)上(あ)げんとす。公(おほやけ)ごとは異(こと)/なるものなりけり<と見(み)あさみ思(おも)ふべし。

斯(か)かる-程(ほど)/に、三月廿-余(よ)-日(にち)にいはしみづのりうじ/の-祭(まつり)/に、わかみやの御乳母(めのと)、うち/に\え\候ふ/まじき\事(こと)/や\あり/けん、にはかに出だし奉(たてまつ)らせ給(たま)ふ。殿(との)の上(うへ)添(そ)ひて率(ゐ)て奉(たてまつ)らせ給(たま)ふ。なんでんにぞおはします。御乳母(めのと)-たち、さる/べき\女房(にようばう)。五六人(にん)ぞつかうまつれる。出(い)で/させ給(たま)ひ/て又(また)の日、うち/より、

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