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/ば、御(ご)-禊(けい)・大嘗会(だいじやうゑ)のをこたる方(かた)こそあれ、失せさせ給(たま)ひ/ぬる。院(ゐん)/の\御かざりもいみじ。當代の御ためにもいと様々(さまざま)哀(あは)れ/に見えさせ給(たま)ふ。さるは年(とし)-頃(ごろ)は司召(つかさめし)/に、まづ怪(あや)しき国(くに)をも院分と選(え)り奉(たてまつ)らせ給(たま)へれば我が御代(よ)にだに、いかでよきをとこそ思(おも)ひつれ、口(くち)-惜(を)しく哀(あは)れ/に思(おぼ)し召(め)さる。

此のだいじ-ども\明年/に/こそ/は\あら/め。まづ\御-さうそうの事(こと)など、よろづに大(おほ)-殿(との)のみぞをきてつかうまつらせ給(たま)ふ。内(うち)には我が御かはりと思(おぼ)し召(め)し/て、宮々(みやみや)に御送りせさせ給(たま)ふ/べうをきて申(まう)さ/せ給(たま)ふ/も、いみじう哀(あは)れ/にめでたし。のち<の御事(こと)ども/ゝ、哀(あは)れ/にめでたくせさせ給(たま)ふ/べし。世(よ)/の-中(なか)皆諒闇になりぬ。殿上人(てんじやうびと)のつるばみのうへのきぬの有様(ありさま)など/も、からす/など/のやうに見えてあはれなり。よろづもののはへなく、口(くち)-惜(を)しとも疎(おろ)か/なり。一てんが/の者(もの)嘆(なげ)きにしたり。よろづ〔を〕しつくして今(いま)はになるきは/に、斯(か)かる事(こと)の出(い)で来たる/を、いといみじきせけんの大事なり。

はかなくて月日も過(す)ぎ/て、年号かはり/て、あくる年(とし)長和元年と言(い)ふ。元三日の有様(ありさま)、たゞならましか/ば、いかにめでたからまし。たれこめて殿上にも出(い)で/させ給(たま)はずなどして、いと口(くち)-惜(を)し。督(かん)/の-殿(との)/は、うへの御つぼねにおはしませ/ど、ひるはいま<しく思(おぼ)し召(め)されて渡(わた)ら/せ給(たま)はず。みやたちも参(まゐ)らせ給(たま)へる御有様(ありさま)。いと<めでたし。うへの女房(にようばう)-達(たち)、様々(さまざま)の世の例(ためし)に引き出(い)で聞(き)こえさせて中(なか)-頃(ごろ)となりては、かやうにみやたちおはします

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