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\法住寺をいみじうめでたくつくらせ給(たま)ひ/て、明(あ)け暮(く)れそこにこもらせ給(たま)ひ/てぞをこなはせ給(たま)ふ。哀(あは)れ/にいみじうぞ。御太郎、松雄君とておはせ/し\おとこにて、此の-ごろ\東宮(とうぐう)権大夫にておはす。いまひとゝころ、中将(ちゆうじやう)ときこゆ。その中将(ちゆうじやう)、こ/の\四月のまつりのつかひに出で立ち給(たま)ひ/しか/ば、よろづにしたてさせ給(たま)ひ/て、をしかへし/て、あやしの御くるまにて御覧(ご-らん)じて。つかひのきみわたりはて給(たま)ひ/にしか/ば、こと<”/は\見/ん/と/も\おぼさでかへらせ給(たま)ひ/にしも、世の人おもひ出でゝかなしがる。

女君(をんなぎみ)-達(たち)\いま三ところひとつ御はらにおはする/を、三の御かたをばしんでんのうへと聞(き)こえて又(また)なかしづきえ給(たま)ふ。四五/の御かたがた/もおはすれ/ど、故女御(にようご)/と\しんでんの御かたとをのみ〔/ぞ〕、いみじきものにおもひ聞(き)こえ給(たま)ひ/ける。女子はたゞかたちを思(おも)ふなりとの給(たま)はせ/ける/は、四五/の御かたいかにとぞをしはかられける。

御いみのころ、この中将(ちゆうじやう)のもと/に、斎院より\御とぶらひありける、かくなん、

@いろかはるそでにはつゆのいかならんおもひやるにも消えぞいらるゝ W015。

\哀(あは)れ/なることゞも。御法事やがて法住寺にてり。一条(いちでう)-殿(どの)、いみじうなべてのところのさまならず、いかめしうまうにおぼしをきてたりつれ/ば、ひとゝころうせさせ給(たま)ひ/ぬれ/ば、いとおはしましにくげに荒れもていくも心(こころ)ぐるしう。此のしんでんのうへの御所分にてぞありける。よろづのもの\たゞこの御領/に/と/ぞ、おぼしをきてさせ給(たま)ひ/ける。

かゝる-ほど/に、

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