
2022年の秋
私は、六年間の二重奏を、そっと振り返っていた。
始まりは、2016年。
地元に、エレベーターのないアパートの、小さな部屋を借りた。
誰にも言わずに持った、私だけの秘密の巣。
あの部屋の鍵を手にした日から、私の二重奏は始まった。
東京には、まさき君がいた。
浅草の居酒屋で飲んで、カラオケで歌って、六年も続いた恋。
地元には、あつこの部屋があって、Sさんがいて、Bさんがいて、良輔さんがいて、Cさんがいた。
二つの街の、二つの旋律。
それが同時に鳴っていた、賑やかで欲張りな日々。
でも、旋律は、一つずつ静かになっていった。
まさき君とは、2022年の9月に、別れた。
六年の恋の終わりは、あの日のことに、ちゃんと書いた通り。
コロナで会えなくなって、気持ちが少しずつすれ違って——最後は、静かなお別れだった。
(まさき君、ありがとう。幸せな六年だったよ)
BさんもSさんも、それぞれの人生の中に、静かに帰っていった。
Cさんとは、会って過ごすことこそなくなったけれど、今もときどき、軽やかなLINEでつながっている。
そして——二つの旋律は、一つになった。
残ったのは、良輔さんとの、たった一つの音。
(二重奏の時代が、終わっていくのね)
寂しくないと言えば、嘘になる。
でも、それ以上に——一つになった旋律が、これからどんなふうに深まっていくのか、そのことに、胸が高鳴っていた。
賑やかさは、私に多くのものをくれた。
女性として愛される喜び、
いろんな出会い、
たくさんの「初めて」。
でも今、私が本当に欲しいのは、数じゃなかった。
一人の人と、深く、静かに、寄り添っていくこと。
六年かけて、たくさん遠回りをして、たくさんの人に女性として愛されて。
その果てに、私はようやく、一番大切なものにたどり着いた気がしたの。
海辺の公園で、今日も良輔さんの車が待っている。
その助手席に乗り込むたびに、私は思う。
(この人との物語は、これから、もっと深くなっていく)
二重奏は、終わった。
でも、それは終わりじゃなくて——次の章の、始まりだった。
良輔さんとの、もっと深い時間へ。
私の物語は、まだ続いていく。
——第8章「深化」へ、続く。
六年間の二重奏、読んでくださって、本当にありがとうございました。
感想をコメント欄で、そっと聞かせてくださると嬉しいです💕
美香