また来てしまった。


今夜は——マリさんと二人だった。

順子さんと麻美さんは都合がつかなくて、
「じゃあ二人で行こうか」とマリさんが言った。

マリさんと二人っきり——なんか、それはそれで嬉しかった。



鶯谷の路地を、二人のヒールの音が響いた。

「どう? 前回来て、どう思った?」

マリさんが横顔のまま聞いた。

「すごい場所でしたね。こんな世界があるとは思わなくて...」

「そうよね。私もここに初めて来た時、しばらく動けなかったもの」

(マリさんでも、そうだったんだ)

「来るたびに、少しずつ自分が広がる感じがするわよ」

それだけ言って、すっと入口の列に並んだ。
マリさんにとってはもう、馴染みの場所だった。



受付を済ませて、中へ入った。

花柄の壁紙の廊下。赤いカーペット。
この場所のことを、体が覚えていた。

廊下を歩くと——前回会った顔が、いくつかあった。



「あ、また来たの!」

黒いドレスの女装子さんが声をかけてきた。
前回、ソファで少し話した人だった。

「また来ました」

「かわいいわね、今日のコーデ」

ベージュのベアトップワンピースを見て言った。

(ちゃんと覚えてくれてたんだ)




初めて会う顔もあった。
ピンクの髪の子が「隣いい?」と床に座ってきた。
自然にそういう距離感になるのが、この場所らしかった。

マリさんが少し離れたところで知り合いと話している。
マリさんには、あちこちに顔見知りがいた。



白いアーチの仕切りをくぐって、えんじ色の大きなソファのエリアへ移動した。

前回は白い革のソファエリアにいたけれど——
こちらのほうが広くて、人が多かった。

えんじ色の花柄の大きなソファに、思い思いに座っている。
ビールを飲みながら、おしゃべりしながら。
床に座っている子もいた。

(ゆるくて、温かい...)

ピンク髪の子と床に並んで座って、缶ビールを飲んだ。
「どこから来てるの?」「いつも来てるの?」
そういう話が、するすると続いた。




壁の額縁の前を通った。

中に横たわる女性と——また目が合った。
微笑んでいた。

私も、小さく微笑み返した。



しばらくして、マリさんが「写真撮ろう」と言い出した。

「誰に撮ってもらうんですか」

「自分たちで撮るのよ。カメラ貸して」

私のスマホを渡して、何枚か撮ってもらった。

その後も、えんじ色のソファの前で、床に座って、廊下で——
いろんなところで撮ったり、撮られたり。

後でスマホを見せてもらったら——
笑っている私がいた。

(こんな楽しそうな顔をしている私がいる)




「かわいく撮れてるじゃない」

マリさんが覗き込んで言った。

来てよかったー...と思った。
マリさんが誘ってくれてよかった、と思った。


美香

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