女性ホルモンを始めて、今年で8年になる。
 
誰にも言っていない。
お医者さんにもかかっていない。
処方箋もない。
 
毎朝、毎晩寝る前に——ひそかに塗り続けている。
 
それだけのことが、8年間続いている。
 
始めたのは、地元に戻ってしばらく経った頃だった。
 
マンションの中では女装できない。
荷物は蔵前のトランクルームに預けたまま。
美香になれるのは、出張の時だけ——そういう生活の中で、私は(自分でできることは何かないだろうか)と考えていた。
 
女装ができなくても、身体を変えることはできるかもしれない。
 
そう思って、ネットで調べ始めた。
 
そのホルモン剤の名前を初めて知ったのは、女装者のブログだった。
塗るタイプの女性ホルモン。個人輸入で手に入る。
 
読んでいるうちに、いくつかの不安が頭に浮かんだ。
身体に何か悪いことが起きないか。
家族にバレないか。
そもそも、本当に効くのか。
 
でも——それより先に、もっと強い気持ちがあった。
 
(封印されていても、私はあきらめない)
 
注文ページを開いた時、指が少し震えた。
カートに入れて、住所を確認して、決済ボタンの上で一瞬止まった。
 
押した。
 
届くまでの数日間、玄関のチャイムが鳴るたびに心臓が跳ねた。
 
届いた箱は、思ったより小さかった。
白地に赤いラインの入った箱を開けると、歯磨き粉みたいなチューブが入っていた。
 
 
 
手のひらに乗せて、しばらく眺めた。
 
こんな小さいものが、私の身体を変えるのか。
 
自室の鍵をかけて、説明書を読んだ。
規定量を半分ずつ——朝と、夜寝る前の2回に分けて塗る。
塗り場所は、内また、二の腕、脇。
皮膚が薄くて、吸収されやすい部位らしかった。
 
初めてチューブを押した時、少し透明なジェルが出てきた。
肌に乗せると、スーッと冷たい感触がした。
アルコールが入っているのか、塗るたびに少しひんやりとする。
 
見た目は何も変わらない。
ただ、(始まった)という感覚だけが、胸の中にあった。
 
最初の3ヶ月は、正直よく分からなかった。
 
肌が少し柔らかくなった気がする——という程度で、薬のせいなのか季節のせいなのか、区別もつかなかった。
不安になって、使用量を増やしてみたり、塗る場所を変えてみたりもした。
 
(これ、意味あるのかな)
 
そう思い始めた頃——乳首に違和感が出始めた。
 
痛いような、痒いような、なんとも言えない感覚が続いた。
服が擦れるだけで気になる。
(これ、大丈夫なのかな...)と少し心配になった。
 
でも調べると、同じ体験をしている人がいた。
「乳腺が育ち始めているサイン」だと書いてあった。
 
(育ってる——)
 
その言葉が、妙に嬉しかった。
 
数ヶ月で、その痛痒さは落ち着いた。
代わりに残ったのは、以前とは明らかに違う乳首だった。
 
1年が経つ頃には、変化がはっきりしてきた。
 
胸は大きくはならなかった。
でも——Aカップくらいの膨らみは出てきた。
それより何より、乳首が変わった。
 
大きくなった。
形が変わった。
そして——触れられると、別の感覚がするようになった。
 
出張の夜、御用邸で純男さんに乳首を触れられた時——(あれ、こんなに感じたっけ)と思う瞬間があった。
以前とは、明らかに違った。
思わず声が出た。
相手が「敏感ですね」と言った。
 
(効いてる)
 
その夜、ホテルの部屋に一人で戻って、天井を見ながらじわじわと実感が広がってきた。
誰にも言えないまま続けてきたことが、ちゃんと身体に届いていた。
 
2年、3年と続けるうちに、もっと大きな変化が来た。
 
乳首への愛撫だけで、勃起するようになった。
 
最初は自分でも驚いた。
触れられる→下が反応する、という繋がりが、以前とは全く別の経路を通っているような感覚。
乳首が、完全に「感じる場所」になっていた。
 
今では——乳首の愛撫なしのエッチは、考えられない。
そこから始まらないと、体が起動しない、という感じがするくらいだ。
 
身体の変化は、性欲のかたちも変えた。
 
以前は、射精したいという衝動が日常的にあった。
自慰も、普通にしていた。
 
でも今は——その衝動が、ほとんどない。
 
自慰をしたいと思わない。
むしろ、一人でするよりも、誰かに求められる中で感じることの方が、ずっと自然になった。
 
月に射精する回数は、多くて2回程度。
まったく射精しない月も、ある。
それでも、何も不満を感じない。
 
射精は——男性と交わって、愛撫されて、求められた流れの中で「させられる」もの、という感覚に変わった。
自分から求めるものではなく、与えられるもの。
 
(これが、女性の感覚に近いのかもしれない)
 
そう思う時がある。
 
今の私にとって、エッチの流れはこうだ。
 
キスから始まって、乳首を丁寧に愛撫してもらう。
太ももや身体全体を触れられながら、体が温まっていく。
奥を解してもらって——やがてメスイキへ。
 
そこが、いちばん深い場所だ。
アナルオーガズムで体が震えて、頭が白くなる。
そのままの流れで射精させられることも、ある。
 
でも——射精がゴールではない、ということが、今の私の正直な感覚だ。
 
8年経った今も、毎朝・毎晩塗っている。
 
 
不安がゼロかと言えば、嘘になる。
医師にかかっていないことへの不安は、今でもある。
自己責任という言葉の重さは、8年経っても軽くならない。
 
それでも——やめようとは、一度も思わなかった。
 
制約の中でも、自分の身体だけは変えられる。
家族と暮らすあの場所では女装できない日々が続いても、内側からゆっくり女性になっていけた。
あの封印期に私ができたのは、それだけだった。
 
でも——それで十分だった、とも思う。
 
「渇望」は、行動にしか満たせない。
待っていても、誰も私を女性にしてはくれない。
 
女性ホルモンを始めていなかったら、今の私の身体はなかった。
今の感度も、今の乳首も、メスイキという体験も——あの白い箱の小さなチューブから始まっている。
 
ひとつだけ、書き添えておきたいことがあります。
私はオエストロジェルを、医師の処方なく自己判断で使い続けています。
でも…… これは、誰にもお勧めできることではありません。
身体への影響は人それぞれで、リスクも伴います。
私はそれを承知の上で、自己責任で続けてきました。
同じことを考えていらっしゃる方は、どうか専門の医療機関にご相談ください。
 
「自分でできる女性化」に挑戦したことはありますか?
① ある、今も続けている
② あった、でも今は違う方法に
③ 興味はあるけどまだ踏み出せていない
 
コメント欄でそっと教えてもらえると嬉しいです💕
 
美香
 
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