Sat 240713 金沢の大盛況/ミニコンサート/自由軒と蓄音機館/豊岡への長い旅 4548回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 240713 金沢の大盛況/ミニコンサート/自由軒と蓄音機館/豊岡への長い旅 4548回

 思えば、もう20年も前のことなるのである。代ゼミでの最後の授業が2005年2月8日。翌9日からヨーロッパ40日の旅に出て、3月20日に帰京。その翌々日から東進の講師として、公開授業の日々が始まった。まず大阪・京橋で最初の講演があって、その3日後に四国・松山で公開授業を行なった。

 

 松山に到着すると、春の弱い雨が降っていた。大学の学部4年の春に、友人たちと夏の松山を旅したことがあって、松山訪問はその時以来。ずいぶん長いブランクがあって、本当に久しぶりに松山城と松山の市電を見た。

(7月9日、金沢の大盛況。「金沢歌劇座」の小さなホールが満席になった 1)

 

 今からすでに20年も昔のことになるが、あの春の1日のことはマコトによく記憶している。宿泊したのは松山全日空ホテル。今はもう「ANAクラウンプラザ」に名称も変更し、部屋の内装もすっかり変わってしまったが、窓からの眺めは同じ、真っ正面に松山城の勇姿があった。

 

 あの松山城の足元から大規模な土砂崩れがあり、山の麓の民家やマンションを襲ったのだという。すっかり泥の色に染まった町の様子がテレビ画面に映し出されると、まさに信じがたい思いである。

 

 コロナ以降のこの数年、松山にはすっかりご無沙汰しているが、東進に移籍してから20年、松山は熊本や金沢や広島や京都と同じように、まさかこんなに頻繁に訪問することになろうとは、移籍前には全く思いもしなかった懐かしい町の一つである。泥をかぶった姿に呆然として、今は言葉も出ない。一刻も早い復旧を願うばかりである。

(7月9日、金沢の大盛況。「金沢歌劇座」の小さなホールが満席になった 2)

 

 さて今朝のワタクシは、広島に滞在中だ。長い長い東奔西走が続いていて、昨日の朝は大阪にいたし、一昨日の朝は城崎温泉で目を覚ましたし、そのまた前の朝は金沢のホテルにいた。7月9日、小雨の金沢での授業は「金沢歌劇座」の小ホール、140人が出席してくれた。

 

「あれれ、金沢の前はどこにいたんだっけな?」と、ふと首を傾げるほどの南船北馬ぶりであるが、今日これから広島での公開授業が終われば、今度はヒコーキで沖縄の那覇に飛ぶのである。「どうして今井先生はあんまり北日本に行かないんですか?」であるが、その辺はワタクシにもさっぱり分からない。

 

 せっかく金沢を訪問したんだから、まさかこの今井先生が公開授業だけしてサッサと次の場所に移動するわけがない。雨が降ったり止んだり、マコトに鬱陶しいが、気温は27℃から28℃程度。40℃近い炎暑&油照りの東京で暮らしていた身にとっては、「雨もまた奇なり」の感がある。

(金沢駅前「石川県立音楽堂」。1時間ほどのランチタームコンサートに行ってみた)

 

 まず訪れたのは、金沢駅前の「石川県立音楽堂」。広上淳一どんが率いるオーケストラアンサンブル金沢の本拠地であって、お昼には1時間ほどのランチタイムコンサートが開催される。

 

 おお、たった500円だ。ワンコインでフルートとハープの演奏会に闖入できるなら、そりゃ行ってみなきゃ損じゃないか。確保した席は、前から2番目。ハープとフルートのほぼ正面、最高の席が取れた。

 

 振り返ると、1000人は入る大ホールが、ほぼ7割の入りになっている。平日のランチタイムだから、さすがに高齢のお客さんが目立つけれども、やっぱり金沢、文化レベルもさすがの一言だ。

  (コンサート終了後、舞台に残されたハープが美しかった)

 

 午後から次第に雨が強くなったが、バスで東茶屋街に出て、有名店「自由軒」で遅いランチをとることにした。外国人観光客も押し寄せる有名店ではあるけれども、午後2時を過ぎてやや客もひき、4人がけの大きなテーブルに案内してもらえた。

 

 注文したのは、「ランチ」。マコトに単純明快なネーミングであって、AランチとかBランチとかスペシャルランチとか、その類いの余計なビラビラは一切ついていない。ただ一言「ランチ」、値段はちょいとお高いけれども、ただ一言「ランチ」、そのスッキリぶりが気に入って、これを注文することにした。

 

 ポークソテーとカニクリームコロッケと、でかいエビフライとハンバーグ。ポテサラにマカロニのナポリタン風。写真を撮った人物(=ワタクシ)が何しろバエ写真が下手なので、あんまり旨そうにみえないどころか、少々貧弱に見えてしまっているかもしれないが、間違いなくたいへんオイシューございました。

(金沢・東茶屋街「自由軒」を訪問。「ランチ」、オイシューございました 1)

 

 それでホテルに帰るかといえば、今井君はまだまだ帰らない。雨が強くなってきたので、土産物屋でビニール傘を1本購入し、「徳田秋声の道」のあたりを散策すると、まもなく泉鏡花記念館にたどり着く。

 

 ワタクシは、書斎の一番目立つところに岩波書店の「鏡花全集」をズラリと二十数巻並べているほどの鏡花ファンではあるが、作家や画家や音楽家の生家やら仕事場やらに、ズカズカ踏み込んでみる気にはなれない。そういうタイプの人間なのだ。

 

 だから、プラハでも「カフカの家」、ザルツブルグでも「モーツァルトの家」、ストラットフォード・アポン・エイボンでもシェイクスピアのうんぬん&かんぬん、そういうものに立ち寄る気になれなかった。あえてエクス・アン・プロヴァンスで「セザンヌのアトリエ」に入ってみたが、特にこれといった感銘はなかった。

(金沢・東茶屋街「自由軒」を訪問。「ランチ」、オイシューございました 2)

 

 だから金沢で泉鏡花記念館やら泉鏡花の家やらの目の前まで行っても、一切無視して通り過ぎる。作家の作品と生家との間に、もちろん何らかの関係はあるんだろうけれども、いやはや実際に眺めてみると普通はガッカリする。

 

 福岡の柳川まで行って、北原白秋の生家なんか覗き込んでも、だからと言って北原白秋がますます好きになるということは期待薄だ。作家や音楽家や画家の実生活と、その作品とを結びつけて考えるのは、せっかくの夢を台無しにするのが関の山だと思うのだ。

 

 そこで今井君は、泉鏡花記念館は素通りして、その斜向かいにある「金沢蓄音機館」を訪問した。エジソン以来の世界の蓄音機を600台収蔵し、その中から150台を常時展示しているんだという。蓄音機だけではなくて、レコードも多数展示、自分でプレイヤーを操作して聴くこともできる。

          (金沢、泉鏡花記念館)

 

 さっき駅前の県立音楽堂でハープとフルートを堪能してきたばかりだが、懐かしいレコードプレイヤーにマイルス・デイヴィスの名盤を一枚かけて、係のオジサマに手伝ってもらってヘッドフォンで聴けば、再び金沢の文化レベルの高さを思い知らされる。

 

 蓄音機の解説付き実演もある。エジソンの蝋管タイプの蓄音機から、アメリカ製とイギリス製の名機数台で、高級オジサマの巧みな説明を受けながら、SP盤の懐かしい音の聴き比べができる。

 

 1分間で78回転するSP盤レコードは、今井君も幼い頃に実家で聴いたことがある。針の音の凄まじい「流浪の民」「チゴイネルワイゼン」「アンダンテカンタービレ」「シューベルト歌曲集」。今でもあの数枚の音を思い出せるというのだから、今井君の記憶力もまた凄まじい。

(金沢は、小雨が続いていた。ホテル日航の28階から、遠く日本海を望む)

 

 公開授業の翌日、7月10日もまた、金沢は小雨模様だった。金沢から兵庫県豊岡に一気に移動するのであるが、敦賀行き北陸新幹線に乗り込んだ我がポンポンの中には、デカいヒレカツ定食の残骸がわだかまっていた。

 

 今のワタクシは完全にヒレカツにはまりこんでしまっているので、日本中どこに行っても一番デカいヒレカツを貪る。ついこの間は東京・新宿で180グラム。金沢駅構内「かつぞう」では200グラム。あんまり好きなので、100グラムや120グラムでは胃袋が反乱を起こす。

 

 しかし諸君、そうやって豚肉をわしわし貪ってばかりいたら、この数ヶ月で我がポンポンはずいぶん大きく膨らんだ。腹部がズンと前に迫り出したので、入るズンボがなくなりかけている。ベルト穴も2つ広がった。いやはや食欲って、ホントに恐ろしい。

(金沢駅構内「かつぞう」のヒレカツ定食。オイシューございました)

 

 そうやって太った肉体を揺すりながらフーフー大汗をかいて駅構内を闊歩していたら、「もしかして、今井先生ですか?」と声をかけられた。セブンイレブンのレジに並んでいる時だったが、「先生の授業が大好きでした」「いま千葉大で英語学を専攻しています」とおっしゃる。

 

 並んでスマホのカメラに収まると、いやはや自分があんまり太っているのに唖然&愕然、もう言葉もない。笑顔で握手して別れたが、きっと今ごろ友達に「今井先生、すごく太っちゃったよ」と感想を漏らしているに違いない。

 

 金沢から豊岡の旅は、乗り換えを含めて何と5時間もかかるのである。まず北陸新幹線で敦賀まで1時間。各駅停車タイプの「つるぎ」に乗ったから行けなかったのだが、「これがホントに新幹線?」と驚くほど進まない。クーラーも控えめで車内はマコトに蒸し暑い。

(金沢・徳田秋声の道。泉鏡花・室生犀星・徳田秋声が、金沢の誇る「3大文豪」であるらしい)

 

 敦賀で湖西線の特急「サンダーバード」に乗り換え。新幹線が出来る前は、こんな面倒な乗り換えは一切なしで京都でも大阪でも真っ直ぐに行けたのに、たった12分の乗り換え時間に妙な緊張を強いられる。まあ何とか乗り換えて、京都までまた1時間。沿線はずっと小雨模様だった。

 

 京都からは、山陰本線の特急「きのさき」に乗るのである。これがまた長い。京都の山を越え、保津峡の鉄橋をいくつも渡り、亀岡から車窓はグッと懐かしい東北地方ふうに代わり、福知山からは深い山間部に入って、約2時間半の旅である。

 

 着いた時には、すでにワタクシ、ほうほうのてい。しかしそれでも、夕方からは豊岡での公開授業が待っていた。冬には雪の積もる豊岡であるが、夏は猛暑で有名。連日の猛暑ということは、夕暮れからは頻繁に激しい夕立がくる。関東平野の北の方と同じことだ。

 

 この日の豊岡でも、やっぱり雷雨が襲ってきた。外は猛暑&雷雨、一方の今井君は5時間の列車の旅でへっとへと。それでも大活躍&大健闘は絶対に欠かさないのだから、もう少し体脂肪が減ってもいいはずなのだが、貪ったヒレカツはまだ胃袋でわだかまり、腹部をさらに1cm前に押し出す勢い。いやはや、なかなか事はうまく運びませんな。

 

1E(Cd) Kirk Whalum:HYMNS IN THE GARDEN

2E(Cd) Kirk Whalum:COLORS

3E(Cd) Kirk Whalum:UNCONDITIONAL

4E(Cd) Kirk Whalum:FOR YOU

5E(Cd) Kirk Whalum:CACHÉ

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