Fri 240517 シティポップ/松原みき「真夜中のドア」の謎を思う/桜の反省会② 4528回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 240517 シティポップ/松原みき「真夜中のドア」の謎を思う/桜の反省会② 4528回

 ホントはキダタロー(本日も全て敬称略といたします)と大阪のテレビCMについて書きたかったのだが、そのためにあんまりいろいろググっていたら、どうしても「シティポップ」について書かずにはいられなくなった。ググりすぎて3日も更新を怠けたことを、まずお詫びしなければならない。

 

 ところで、どうして「シティポップ」のところにたどり着いたかであるが、まず諸君、前回の記事の中の「高橋洋子」に注目してくれたまえ。

 

 朝ドラ「北の家族」の主演を務め、居酒屋チェーン「北の家族」の屋号にも影響を与え、処女作「雨が好き」で文学新人賞をとった。長い長いながーい黒髪の体当たり新人女優、それが高橋洋子だった。

 

「そう言えば、高橋洋子は芥川賞候補にもなったな」と、我が灰色の脳細胞に40年も昔の記憶が蘇り、1980年代の芥川賞の歴史をポチポチ検索。今井君はまだ「タップ」の世界に住んではいないので、PCでポチポチする方が好きなのだ。

 

 諸君この時代は、村上春樹に島田雅彦に松浦理恵子、21世紀初頭の日本文学を席巻した人々が、新人としてクンズホグレツの悪戦苦闘を展開していたのが分かる。何度も何度も芥川賞候補になりながら、これほどの才能の持ち主たちも、滅多なことではこの賞の最終勝者にはなれなかったのだ。

   (桜の反省会② 4月4日、京都・天龍寺を訪ねる 1)

 

 するとそこに、田中康夫どんの名前を発見。元長野県知事、おそらく本人が考えたニックネーム:ヤッシー、彼が一橋大学法学部4年の時に河出書房「文藝賞」を受賞したデビュー小説が「なんとなく、クリスタル」だった。

 

 河出書房とは今井君も数年前にちょいと関わりがあって、いやはやそれなりにいろいろたいへんだったのであるが、まあその話は置いといて、今日の本題の「シティポップ」について、そろそろ気づく人も出てくるんじゃあるまいか。

 

 同じ1980年代初頭、伝統的な演歌を中心とするいわゆる「歌謡曲」以外のポップスを全て「ニューミュージック」の名でカテゴライズしていたが、その中で後に「J-POP」カテゴリーを形成する種類の、都会風と言うかニューヨークっぽいと言うか、日本に似合わずオシャレと言うか、要するになんとなくクリスタルな音楽が展開されていた。

 

 ワタクシは、キーマンは林哲司と後藤次利の2人だと思うのだが、ググってみるともっと遥かに詳しく分かるだろう。山下達郎・大瀧詠一・山本達彦・細野晴臣・吉田美奈子・角松敏生・竹内まりや・大貫妙子・荒井由実・稲垣潤一・杉山清貴・大橋純子、おお、われわれの時代を彩ったビッグネームが続く。

(東京駅で、大好きな駅弁「深川めし」を買う。新幹線の中で駅弁、最近は「迷惑だ」とおっしゃる気難しい人も少なくないようだ)

 

 むかしむかしラジオで音楽を聴きまくった今井君なんかは、この面々に加えて国分友里恵とか今井優子とか、笠井紀美子とか鈴木宏昌とか鈴木茂とか、さまざまなミュージシャンの名前をとめどなく思い出すのであるが、まあいいや、1980年代の和製ポップス、ぜひ諸君もたっぷり聴いてくれたまえ。

 

 聴いてみて、もしもあんまり好きになれなかったら「なんだ要するに、わたせせいぞう『ハートカクテル』の世界じゃないか」と言ってくれてもかまわない。要するに音楽は好き嫌いであって、キライならキライで全然かまわない。

 

 しかし、松原みき「真夜中のドア」についてだけは、あんまり悪口を言わないほうがいい。ぽちぽちググって驚きでひっくり返ったのは「再生数1億3000万回」という数字だ。再生数1000万を超えているのが、他にもたくさんあるじゃないか。

 

 40年以上前、20歳そこそこの日本女子が歌った「真夜中のドア」、今井君はまだホンのオコチャマだったけれども、あれから40年経過して世界中を席巻する大ヒットになるなんて、むかしは想像も出来なかった。

   (桜の反省会② 4月4日、京都・天龍寺を訪ねる 2)

 

 1979年11月発売、作詞:三浦徳子、作曲&編曲:林哲司。すでに誰でも知っているだろうけれども、もし「初耳」というオカタがいらっしゃったら、今すぐ聴いてみなはれ、あまりの素晴らしさに誰でも涙する。20歳の女子がこれほどオトナな歌唱力を発揮するなんて、こりゃ奇跡だ、普通なら信じがたい。「事件ですよ」の世界である。

 

 なんと言っても、林哲司のアレンジが絶妙だ。弦の入り方も、金管の挿入も、終盤に一気にベースというかギターというか、天才スタジオミュージシャン♡松原正樹が一気に前面に出てくる姿に、涙しない人なんか、ワタクシはとても想像できない。

 

 試しにと言うか、ついでにと言うか、マコトに豪華な布陣でカバーしたバージョンも聞いてみてくだされ。八神純子岩崎宏美+花田千草+DA BUBBLE GUM BROTHERS BANDでカバーした2000年代前半のバージョンだが、それでもさすがに林哲司のアレンジには遠く及ばない(と、愚考いたします)。

 

 今井君のオウチには、林哲司の古いCDが何枚も保存されているから、いやはやこの数日、ブラームスやらバッハやら、カーク・ウェイラムやらデイヴィド・サンボーンやらのCDに混じって、ほぼ林哲司オンパレードになっちゃっている。今井君っぽくないだろうが、まあその辺はご勘弁願いたい。

   (桜の反省会② 4月4日、京都・天龍寺を訪ねる 3)

 

 松原みきは、1959年大阪岸和田生まれ。ひゃー岸和田、このワタクシもこの20年、1年に一回は講演会に呼ばれて出かける町だ。それだけでも光栄じゃないか。しかし2004年、松原みきは44歳で子宮頸がんで死去とある。マコトに残念な人を亡くした。

 

 ところで諸君、三浦徳子による作詞「真夜中のドア」について、そのシチュエーションにいろいろな解釈があるようで、人々はこの詩に描かれた男女関係について、さまざまな想像をめぐらせ、それなりに熱く盛り上がっていらっしゃる。

 

 ホントなら三浦徳子ご自身に質問してみるしかないんだろうが、残念ながら彼女も2023年11月に亡くなった。ホンの半年前のことである。

 

 兄上は、文芸評論家の三浦雅士。ホンの一昔前、大学入試の現代文の問題文として出題されることも多かった人である。青森県弘前市のご出身。若い頃は「今井裕康」(いまいひろやす)というペンネームを使っていらっしゃった。なんとなく今井君と紛らわしいお名前じゃないか。

   (桜の反省会② 4月4日、京都・天龍寺を訪ねる 4)

 

 まあそんなことはほっといて、松原みき「真夜中のドア」であるが、元々のタイトルはサブタイトルになっている「Stay with Me」。ところが堺正章というヒトが同時期に同名の楽曲を企画していたために、「真夜中のドア」に変更することになったという深い経緯があるんだそうな。

 

 論争のタネになっているのは、まさにサビの部分のシーン。「真夜中のドアをたたき、『帰らないで』と泣いた」というシチュエーションについてである。20世紀後半を彩った作詞家:三浦徳子の頭にあった情景を、諸君、よく考えてみたまえ。

   (桜の反省会② 4月4日、京都・天龍寺を訪ねる 5)

 

 真夜中のドアであれば、まあ外からたたくのが普通。「部屋の内側からドアをたたく」という行動は、どうしても考えにくい。やっぱり女子は部屋の外にいて、中に男子のいる部屋のドアを外からたたいていたことになる。

 

 しかし諸君、「帰らないでと言って泣いた」ということは、つまり男子が女子の部屋を訪ね、しばらく激しい愛の時間を過ごし、いま非情にも男子がどこかに帰ろうとしている状況としか思えない。あれれ、それじゃ女子もやっぱり部屋の中にいることになる。

 

 もしも男子が部屋の内側にいるのに、そのドアを女子が外からバンバンたたきながら、「帰らないで」と泣いているということになると、これもなかなか考えにくい、難しいシチュエーションじゃないか。

 

 これは読解力の問題だ。それこそ「論理的思考力」だ。世界的になったこの名曲に、諸君の論理的思考力がついていけるかどうか、チャレンジしてみたまえ。というか、思考力を働かせる前に何度か真剣に聞いて、「真夜中のドアをたたき、帰らないでと泣いた」とは、正確にはどのようなシチュエーションか、真剣に考えてみたらいい。

 

 高校の現代文のセンセとか、塾や予備校の国語のセンセに尋ねてみてもいいが、大ベテラン今井の想像するところ、きっとセンセがおっしゃるのは「それは考えすぎだな」「詩というものは、シチュエーションを冷静に分析するものじゃないんだ」「それより中間テスト対策はしっかりやってるか?」の類いなんじゃないか?

   (桜の反省会② 4月4日、京都・天龍寺を訪ねる 6)

 

 そこで諸君、専門外の英語科講師として今井君は「真夜中のドアをたたき、帰らないでと泣く」というシチュエーションを2時間ほど、大相撲夏場所6日目の取り組みを眺めながら、冷静に分析してみたのである。

 

 普通に考えれば、いま男子と女子は同じお部屋の中にいる。何らかの理由があって、深夜の男子は帰らなければならない。帰らなければならない理由については、それこそあまり深く考えてはならない。とにかく帰らなければならないが、女子は「帰らないで」と熱く、ないしは寂しげに透き通った涙を流す。

 

 そのへん「光る君へ」の熱心な視聴者であれば、平安時代の妻問婚との連想で考えてもいい。「帰らなきゃ」と平気で言い放つ男子。「帰らないで」とサメザメと泣く女子。「ドアをたたく」という強烈な行動とセットにならなくても、「帰らないで」と泣く姿については想像は難しくない。

   (桜の反省会② 4月4日、京都・天龍寺を訪ねる 7)

 

 しかしやっぱり難問になるのは「真夜中のドアをたたき、帰らないでと泣く」というセット行動である。今井君の解答を今すぐにここに書いてもいいが、あんまり鮮やかすぎて、何だかもったいない。「解答は、次回」としたほうが、アクセス数の増加の点から見ても♡ワタクシにとって遥かにお得なんじゃないか♡

 

 というわけで、マコトに鮮やかな今井解については、次回といたしましょう。かあーっかっかっかっか、かあーっかっかっかっか。そこは昔の水戸黄門のようにバカバカしく呵呵大笑し、民放ニュースショーの「この後もまだまだ続きます」みたいなズル賢い一言とともに、「ではCMにまいります」ということにする。

 

 だからとにかく、「真夜中のドア」こと原題「Stay with Me」を何度も何度も聞いて、自らの論理的読解力を試してみてくれたまえ。

   (桜の反省会② 4月4日、京都・天龍寺を訪ねる 8)

 

 いいですかな、もう一度確認だ。男子は部屋の中、女子は部屋の外。その状況で女子が「真夜中のドアをたたき『帰らないで』と泣いた」とはどのようなシチュエーションなのか、100字以内の日本語で答えてみたまえ。

 

 2024年のどんな大学入試より、特にあの羊頭狗肉の共通テスト英語なんか問題にならないほど、受験生諸君の読解力と思考力、判断力と表現力を、巧みに評価できる良問の出来上がりだ。では解答は、次回の記事で。

 

 いや、詩というものはホントに面白い。今回のこの記事を書くにあたって、1980年代のいろんなポップスの詩をあたってみたが(諸君、いったい何編の詩を読んだか、今井君の執念を思えば恐ろしくなるほどだ)、たとえば康珍化の作詞の中にも「帰したくない、ドアに鍵かけて、帰さない」なんてのがあった。内側から鍵をかけたって、「帰さない」のは無理なんじゃないか。

  (4月4日、嵯峨野の竹林の大渋滞に一驚を喫する 1)

 

 さてCMがわりに、本日の写真のご説明を入れておこう。4月4日から8日まで、またまた今井は京都に滞在した。というか、その5日間の京都滞在は、正確には大阪で「国立文楽劇場4月公演」「豊竹若太夫襲名披露公演」を眺めるのが主要目的だったのだが、ついでにワタクシ、京都の桜を堪能しようと考えた。

 

 もっと正確に言えば、京都の桜以外にも、旅の後半には、すでに毎年の恒例となった吉野山、満開の山桜の絶景を眺めに行こうと考えていた。ついでに我が人生で初めてであるが「造幣局♡桜の通り抜け」も見たかった。2月の異様な暖かさを考えれば、造幣局の八重桜だって4月上旬に見られるかもしれなかった。

 

 4月4日、朝の新幹線に乗り込んで、京都にはお昼前に到着。荷物をプリンスホテルの駅オフィスに預け、すぐに山陰線の電車で嵯峨嵐山に向かった。今は「嵯峨野線」ということになっているが、あれはあくまで山陰本線だ。

 

 最初の訪問先は、天龍寺。嵯峨野も天龍寺もまさにオーバーツーリズムの真っただ中。嵯峨野の竹林なんか、真っ直ぐに進めないどころか、大渋滞の中、東南アジア諸言語と中国語とスペイン語とイタリア語と英語が入り混じって、黒々と大きなトグロを巻いている。

  (4月4日、嵯峨野の竹林の大渋滞に一驚を喫する 2)

 

 天龍寺の境内でも、「桜に触れないでください」の掲示も何のその、みんなで枝垂れ桜の先っちょを摘み上げては濃厚かつ強烈にニッコリ、48やら46やらの制服モドキを持参した20歳代外国人女子が、マコトにバエそうな笑顔とポーズで彼氏のカメラに収まっていた。

 

 ただしそういう大混雑だって、回避する方法はナンボでもある。その1時間後のワタクシは「あの大混雑は何だったんだ?」という静寂の京都を満喫していたが、その方法というか「どこに行ったんですか?」というか、その辺はあんまりこの場で開示したくない。

 

 もし開示すればあっという間に、せっかくの静寂と静謐の空間は、世界からの人並みに占拠されてしまいそうで恐ろしい。ただ、ま、そんな意地悪でイケズなことはヤメときますか。そこもまた「次回の記事で」ということにいたします。

 

1E(Cd) Duke Ellington: THE ELLINGTON SUITES

2E(Cd) Harbie Hancock:MAIDEN VOYAGE

3E(Cd) Weather Report:HEAVY WEATHER

4E(Cd) Bill Evans & Jim Hall:INTERMODULATION

5E(Cd) Kirk Whalum:COLORS

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