Wed 240410 行く春や/静かな喫茶店の話/ストラップの小鈴、何とかならないか 4514回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 240410 行く春や/静かな喫茶店の話/ストラップの小鈴、何とかならないか 4514回

 昨日まで5日間ほど京都&大阪に滞在して、豪華なお花見と文楽を満喫、4月9日の京都はマコトに寒かったが、東京に帰還してもやっぱり花冷え、どちらも雨がパラついて、綿の上着一枚では震えるほど寒かった。

 

 まあそれでも風邪も引かずに堂々の帰京なんだから、まあホッと一息というところ。ここからしばらくは、東京に籠城する。籠城はおそらく来月初旬まで続くので、籠城期間中はたっぷり読書をして、怠け過ぎてナマりがちだった我が楕円球の頭脳を、元の通りグッとシャープな状態に戻したいと思う♡

  (行く春に、2月12日、京都・城南宮の梅を思い出す 1)

 

「東京に籠城」というより、正確に「オウチに籠城」であり「書斎に籠城」なのであって、天井まで届く書架9架に囲まれた我が書斎なら、一切の騒音や雑音に悩まされることなく、行く春を満喫することができる。

 

 諸君、まもなく春は行く。梅はひと月前に終わり、待たせに待たせた桜の花も、九州でも京阪神でも東京でもまもなくオシマイ。ちょっと事情があって今年は角館や弘前や五稜郭への花見の旅はできないから、要するに梅も桜も今年はオシマイ、「行く春や 魚の目は泪」、まもなく季節は晩春に向かう。

  (行く春に、2月12日、京都・城南宮の梅を思い出す 2)

 

 もちろんフジにカキツバタにハナショウブ、いくらでも眺めに行く花はあるのだが、いやはやどうしても事情が許さない。どういう事情かというに、ワタクシはまたまたお目目の手術を控えている。1年半前に網膜剥離の手術をした左目であるが、その左目に眼内レンズを入れて、手術の仕上げをするのである。

 

 だから、当分の間は右目1個で生活をしなければならない。手術はそんなにたいへんなものではなくて、日帰りでOK、手術自体は30分ほどで終了する予定であるが、問題は術後の経過である。お目目にゴミなんかが入れば眼炎を起こし、術後の眼炎は失明につながりかねない。だからお出かけは厳禁、書斎への籠城を余儀なくされる。

  (行く春に、2月12日、京都・城南宮の梅を思い出す 3)

 

 もちろん右目のほうは今も健康に生きているから、読書ぐらいは可能。籠城中の楽しみとして、これ以上のものはない。騒音のほとんどない我が書斎はいよいよ出番、角館の枝垂れ桜、宇治平等院や亀戸天神の藤、上御霊神社のイチハツあたりまでは我慢して、ひたすら読書に励もうと思う。

 

 それにしても諸君、世の中に騒音の種は尽きない。「石川や 浜の真砂は尽きるとも 世に盗人の種は尽きまじ」、五右衛門はそう豪語してあの世に旅立ったが、今や世の中は浜の真砂は尽きるとも、世に騒音の種は尽きまじ」という有様である。

  (行く春に、2月12日、京都・城南宮の梅を思い出す 4)

 

 京都・八坂神社のすぐそばに「K」(仮名)というマコトに古風な名前の喫茶店があって、5日前に初めて訪問してワタクシは大ファンになった。「おお、これこそ求めていた静寂だ」という上質な静寂が、八坂神社の言語道断な喧騒のすぐそば、徒歩で30秒かかるかかからないかの場所に存在したのである。

 

 ただし、一応ここに(仮名)で紹介はするけれども、諸君は決して訪ねていってはならない。無遠慮に訪問すれば、「K」の入り口のドアのところで確実に撃退される。

 

 まず「現金決済のみです」と、厳しい宣言が下される。「大きな声での会話は一切お断りします」と、これまた厳しく言い渡される。おそらく30歳代後半の男子が1人で店を切り盛りするが、その無愛想さはまさに群を抜く。

  (行く春に、2月12日、京都・城南宮の梅を思い出す 5)

 

 昭和の時代、大学の近くの喫茶店には、この種の頑固オヤジが珍しくなかった。今でも「ジャズ喫茶」「名曲喫茶」の類いにはまだ頑固オヤジの姿を見かけるが、しかしジャズ喫茶にも名曲喫茶にも、いわゆる「パパ活」の波が押し寄せて、落ち着いて静寂を満喫できる状況にない。

 

 いや、すでに「パパ活」は「ジジ活」の世代にまで波及しつつあり。「P活」変じて「G活」、浜の真砂は尽きるとしても、世にP&Gの種は尽きそうにない。

  (行く春に、2月12日、京都・城南宮の梅を思い出す 6)

 

 だから、ちょっと油断してジャズ喫茶なんかに入店しようものなら、あたりはマコトに軟弱な喧騒に包まれる。おそらく20歳も30歳も40歳も年の離れた活動女子に、軟弱なPやらGやらがしなだれかかって、高級カメラでコスチューム女子の写真を撮りまくる。それじゃ諸君、静かに読書なんか出来るわけがない。

 

 ところが「K」、頑固オヤジならぬ頑固青年が、そのすこぶる頑固そうな振る舞いの1つ1つで、喧騒の全てをシャットアウトする。コーヒーは、旨い。紅茶も、旨い。大きなアイスクリームもあれば、ビールの小瓶も置いている。喫煙は厳禁。「全面禁煙となりました」の貼り紙も、また頑固な字体で書かれている。

 (行く春に、2月12日、京都・北野天満宮の梅を思い出す 1)

 

「こうじゃなくちゃいかん♡」、負けず劣らず頑固な今井君は、ポンと膝を打ち、ポンと楕円の頭を平手で叩いて、すっかり「K」(仮名)のファンになった。

 

「クチコミ」という、文字で書かれた喧騒の世界をのぞいてみると、「ムカついた」「腹が立った」「無愛想すぎる」みたいな感想が目立つが、j実際に店内を見渡せば、この店のファンも少なくないようだ。

 

 よほどのポリシーがなければ、あの若さでこのレベルの無愛想と不機嫌を貫くことはできないだろう。気に入った、大いに気に入った。ワタクシの、京都の定番にしたいと思う。

 

 だから、決して安易に店を訪ねてはならない。無愛想にされて、または会話のボリュームを注意されて、それで「ムカついた」「最低&最悪」「すぐにつぶれますよ」、そういうクチコミを書いてニヤニヤする類いの人が、訪問するような店ではない。どこまでも静かに、静寂の中のコーヒーや紅茶を満喫してくれたまえ。

 (行く春に、2月12日、京都・北野天満宮の梅を思い出す 2)

 

 諸君、今や日本中が喧騒の巷であって、喫茶店でもレストランでも新幹線の車内でも、コドモやオジサマやオバサマが、イヤホンもヘッドフォンも使わずにスマホやタブレットの動画を見まくるのである。音声はダダもれ、イヤホンなしの動画視聴を何とも思わないし、親も全く叱らない。

 

 祇園で静かに高級うな重をいただいても、新幹線でゆっくり車窓を楽しんでいても、右と左のお耳には、中国語その他のアジア言語や英語の動画の音声が、大音量で流れ続ける。戦闘ゲームの打撃音やら銃の発射音、ピューンピューン、バンバババン、デュワーン&デデンドン、静寂なんか滅多に満喫できない。

 (行く春に、2月12日、京都・北野天満宮の梅を思い出す 3)

 

 もう1つ、マコトに意外なところに潜んでいたのが、ストラップにつけた小鈴のチンチロリンである。小鈴をつけたストラップをそこいら中で売っているんだから、小鈴つきストラップをチリチリ&チャラチャラ言わせている人に罪はないが、しかし「罪がない」からこそ、どうすることもできないのである。

 

 小鈴つきストラップをチャリチャリ言わせている人には、若干お年をめしたオバサマが多い。「なくしても、すぐに見つかるから」という理由もあるだろうし、チリチリ&チャラチャラ小鈴を鳴らして街を闊歩するのがチャーミングだと感じる世代なのかもしれない。

 (行く春に、2月12日、京都・北野天満宮の梅を思い出す 4)

 

 その小鈴つきストラップのチリチリ&チャラチャラ、いったん気になり始めると、気になって気になって、とても「読書に集中」などという芸当は出来ない。昨日の新幹線では、京都で乗り込んだ50歳代半ばのオジサマが、まさにそのチリチリ&チャラチャラ族だった。 

 

 席は、ワタクシが8A、オジサマが10D。チリチリ&チャラチャラの被害に遭いそうな位置関係ではあったが、京都で乗り込んだのが18時半ごろ、東京に到着したのが21時前、その間約2時間15分、オジサマのストラップの小鈴は、新幹線の微妙な振動の全てに、忠実に反応し続けた。

 

 諸君、新幹線の振動は、ストラップ小鈴君の神経をマコトに見事に刺激し続けるのである。2時間15分、小鈴君のチリチリ&チャラチャラ音が止まったことは、ほとんど一瞬もない。

 (行く春に、2月12日、京都・北野天満宮の梅を思い出す 5)

 

 では、そのオジサマが困った人物かといえば、そんなことは全くないのである。持参した黒いバッグのワニ革がテカテカ光り、名古屋で降りて行った(おそらく)職場の同僚との会話が少し軽薄だったのを除けば、特に「困ったオジサマ」のカテゴリーに入れる必要はなさそうだ。

 

 しかしこういう絶えることのないチリチリ&チャラチャラ、「もしヒコーキでヨーロッパに向かう途中だったら」と想像すると、ゾッとするのである。

 

 持ち主が機内でスマホをいじるたびにチリチリ、彼が身動きするたびにチャラチャラ、貧乏ゆすりなんか始めてみたまえ、延々と続くチリチリ音に悩まされて、「お客様どうしのトラブル」につながりかねない。

 (行く春に、2月12日、京都・千本釈迦堂の静寂を思い出す)

 

 いや、受験生の世代だって、同じことが起こりかねない。試験本番でも模擬試験会場でも、小鈴ストラップのスマホを脇の椅子のバッグに入れた人がいたりすれば、それはもう大損害だ。

 

 彼または彼女が解答欄に書き込むたびにチリチリ、英文にスラッシュを入れるたびにチャラチャラ、やっぱり貧乏ゆすりが始まってチョロチョロ、息遣いのたびにリロリロ、難解な現代文の問題文を読んでいる時なんかにそういう事態になったら、集中なんかできるわけがない。

(千本釈迦堂から二条城に向かう途中、マコトに由緒ありげな「肛門科」の建物に感激する)

 

 もちろん「苦情を言う」という手段はあるが、その「苦情を言う」という行動が精神にきたす動揺は並大抵のことではない。同じように、ヒコーキでも新幹線でも、いったん「乗務員に苦情を言う」という行動に出てしまえば、おそらく到着地までずっと険悪なムードが続くことになる。

 

 というか、乗務員さん経由で「ストラップの鈴の音、何とか出来ませんか?」と伝えてもらったとしても、当のご本人が鈴の音が周囲に与えている苦痛を理解できないから、どうせ何ら善処はしてもらえない。双方に苛立ちが募り、険悪なムードにはどんどん拍車がかかっていく。

(烏丸御池のあたり、小さな居酒屋「笹蔵」で、店主のおじーちゃんの奮闘に感激する)

 

 ならば解決策は、ただ1つ。小鈴つきストラップを製作&販売するのをヤメていただくしかない。いやはや、世の中は難しく、世の中は世知がらい。しかし諸君、この2月から3月にかけて、全国各地の大学入試会場で、同じような被害を被った人は決して少なくないんじゃないか。

 

 丸1年の長い努力の成果を、付近に席を占めた受験生のスマホストラップの小鈴にジャマされてしまったんじゃ、たまらない。

 

 あるいは、頑張って購入したヒコーキのビジネス席、ヨーロッパやアメリカに向かう14時間もの長旅で、離陸の前からチリチリ、着陸してもチリチリ、それじゃ食事も睡眠もみんな台無しだ。チリチリ族の皆様には、ぜひその辺に心を砕いていただきたい。

 

1E(Cd) Zagrosek & Berin:SCHREKER/DIE GEZEICHNETEN 3/3

2E(Cd) Sequentia:AQUITANIA

3E(Cd) Nevel & Huelgas Ensemble:Canções, Vilancicos e Motetes Portugueses

4E(Cd) SPANISH MUSIC FROM THE 16th CENTURY

5E(Cd) Akiko Suwanai:INTERMEZZO

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