Tue 240312 那覇にて/合格発表のこと/京大のヌシになる夢/京都の節分を満喫 4504回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 240312 那覇にて/合格発表のこと/京大のヌシになる夢/京都の節分を満喫 4504回

 いま、那覇にいる。那覇はもうとっくに桜も終わって、気温21℃、吹く風も爽やかで清々しい。昨夜から今朝にかけてずいぶん激しい雨が降ったが、朝にはその雨も止んで快晴。東京なら5月中旬といった体感である。

 

 3月の沖縄は、「狙い目」なんだそうである。確かに、博多から那覇に向かうヒコーキも空いていた。国際線の機材を使用したANAのプレミアムクラスは3割程度、素早く数えてみたところでは、乗客は10人程度しかいらっしゃらない。

  (2月2日、京都大学。時計台が京都の街を睥睨していた)

 

 国際通りに、修学旅行生もあまり見かけない。2年前のコロナの真っただ中には、余りにも閑散としてゴーストタウンみたいだったが、機嫌の悪いタクシーの運転手さんも思わず笑顔になるぐらい、客足が戻ってきた。ただやっぱり「3月は狙い目」なのか、想像したほどにはごった返していない。

 

 明日は、那覇から伊丹空港に飛び、その後に続く京都や山口や横浜の公開授業に向けて、着々と準備する。3月上旬から中旬の目が回るような激しい移動&移動の日々は、いよいよ胸突き八丁。特にこの1週間、神戸 → 金沢 → 名古屋 → 博多 → 佐世保 → 那覇、さすがのサトイモ男爵も少しばかりグロッキー気味である。

(2月2日、京都南座となり「松葉本店」でカツ丼セットをいただく。いつもの「北店」が休業中だった)

 

 そうこうするうちに、難関国公立大の合格発表がどんどん進んで、先日の岐阜の公開授業の夜にも、「ウチの校舎から名古屋大学合格10名を超えました!!」と嬉しそうに報告を受けたし、京都大学も東京大学も、新聞社系の週刊誌がまた今年も飽きずに色めきたって、合格者数のランキングを始める頃だ。

 

 しかし諸君、高校別のランキングを作って「あそこがまた一番」「ここが躍進」「あの高校はすっかり衰退」と馬鹿騒ぎを演じることに、「全国紙系」ともあろう新聞社が躍起になるのは、そろそろやめたほうがいいんじゃないか。

  (出汁巻たまご。松葉本店にて。オイシューございました)

 

 週刊読売はとっくに廃刊だか休刊、週刊朝日もとうとう休刊だか廃刊、残るはサンデー毎日だけかと思ったら、朝日新聞系はマコトにしぶとく「AERA」がその馬鹿騒ぎを続ける気配を見せている。

 

 東大や京大の合格者数で「トップ」「躍進」「衰退」を報じられることが、高校教育の現場を歪めることになるとは、お思いにならないのか。それは完全に塾と予備校のお仕事。というか、高校別ランキングよりも「塾別&予備校別ランキング」の方が遥かにこの話題にふさわしいんじゃないのか。

(熱燗2本、「松葉本店」にて。寒かった2月2日、身体の芯から温まった)

 

 ついでに言えば、合格者発表は「不合格者発表」でもあることを、マスメディアの諸君には決して忘れてほしくない。倍率3倍の大学なら、1000人合格者がいれば不合格者が2000人も存在する。倍率2.5倍の大学なら、合格者1000人に対して、1500人もの真摯な青年が、不合格の報に嘆き悲しんでいる。

 

 不合格者のほとんどは、決して怠けていたのでもなければ「やるべきことをやらなかった」のでもない。ほぼ同格の学力と思考力と教養を持ち、努力の質と量でも大差なかった諸君なのだ。その日の体調、その日の巡り合わせ、採点者との相性、それら多くが複合して、歓喜の輪に加わることが出来なかった。

(八坂神社の節分祭。お正月にも負けない盛り上がりだった 1)

 

 18歳の今井君は、それこそ「歓喜の輪に加われなかった」側で屈辱を噛みしめていたが、「負け惜しみを言う」というタイプのことはマコトに面倒だったので、さっさと早稲田大の政経に進んだ。

 

 あれから幾星霜、転職を繰り返すこと数知れず、予備校界の大ベテランとして生き残ってみれば、東大に選んでもらえなかったことに、特に後悔はない。今は東大の駒場キャンパスの近くで生活することになり、駒場あたりを散策中に18歳19歳の東大生たちを眺めると、いやはやマコトに当時が懐かしい。

(八坂神社の節分祭。お正月にも負けない盛り上がりだった 2)

 

 もしいま後悔があるとすれば、「なぜ京都大学を目指さなかったのか?」の1点に尽きる。もちろん、京都大学を受験したとしても、あんな怠惰な今井君では合格できたとは思えないが、どうして東大にあんなにこだわったのか、なぜ京大が選択肢に入ってこなかったのか、そこんトコロがよく分からない。

 

 まず、近畿圏が余りに遠く思えたこと。前回書いた1972年の北陸トンネル「きたぐに」火災事件のことも頭にあったし、家族も親戚も全く近畿に縁がなかった。父方の親戚はみんな山形にいたし、母方の伯父は静岡、上の叔父は東京の東村山、下の叔父は千葉、叔母は東京の世田谷にいた。

(吉田神社の節分祭。京都大学の正門前も、いやはやたいへんな大盛況だった 1)

 

 NHKの朝ドラ独特の大阪ことばや京都ことばは、何ともはやワザとらしい外国語の響きに包まれていて、「まっせ」「でっせ」「だっせ」「でんがな」「ちゃいまっか?」の響きの中で大学生活を送ることも想像できなかった。

 

 若き今井君は「模擬試験」というものを受けるのが大キライで、真面目に受けた模擬試験は3回か4回に過ぎなかったけれども、その度に配布される「偏差値ランキング」を眺めながら、「東大が1番、京大は2番」、そういう馬鹿馬鹿しいランキング表で、バカな今井君の間違った見栄坊ぶりが炸裂したわけである。

(吉田神社の節分祭。京都大学の正門前も、いやはやたいへんな大盛況だった 2)

 

 今になってみれば、ホントに馬鹿馬鹿しい判断をしてしまった。京都大学を、ぜひとも選択肢に入れるべきだった。京大にもしも入れてもらえたら、きっと岩倉か伏見桃山あたりに安い下宿を借りて、学部を卒業した後もずっとずっとその安い下宿で勉強し続け、人からはヌシと呼ばれ、死ぬまで同じ下宿で本を読み続けたかった。

 

 その場合、想定されるのはあくまで文系であって、この今井君に理系人間はつとまらない。読み続けるのは、おそらくダンテとかホメロスとか、アウグスティヌスとかトマス・アクィナスとか、とにかく人が聞いて腰をぬかすような古典ばかり。あるいはイタリア文学とかポルトガル文学とか、世阿弥とか近松半二とか、その類いになっていたんじゃあるまいか。

(吉田神社の節分祭。京都大学の正門前も、いやはやたいへんな大盛況だった 3)

 

 何しろ京大、吉田山の麓で時計台もあんなにカッコよく京都の街を睥睨しているけれども、ヌシみたいな読書人も受け入れてくれそうだ。学部生時代は図書館にこもって朝から晩まで読書、卒業してもしも大学院に受け入れてもらえれば、またまた朝から晩まで図書館、そういう学生も悪くない。

 

 そんなことをやっていて就職できるわけがないから、もしも大学院を追い出されれば、大学の周囲のコーヒー店にこもって、「図書館よりコーヒー店のほうが読書に向いている」などとウソぶき、店のオジサマないしオバサマと相談して「京大第2読書室」みたいな看板を掲げてもいい。

 

 というか、今も京大の百万遍キャンパス付近にそういうコーヒー店が存在するのだが、他にもジャズ喫茶にクラシック喫茶、第3読書室や第4読書室の名にふさわしい場所はナンボでも見つかる。やがて自分でそういう店の経営に乗り出したっていい。

(吉田神社の節分祭。京都大学の正門前も、いやはやたいへんな大盛況だった 4)

 

 しかし、やっぱりワタクシは気づく。そんな大学のヌシみたいな生活には、どうせすぐに耐えられなくなって、ふと「予備校講師のアルバイトでもしよう」と思い立つに違いない。

 

 そうやってアルバイト気分でいったん教壇に立てば、どういうハズミか「今井の授業は何だか知らんが異様に面白い」「今井の説明はよく分かる」「何より雑談がサイコーだ」という評判が立ち、教壇を去るにも去れなくなって、そのままそれが本職へ、何がどう変わっても、今と同じ結果になるに決まっている。

 

 というわけで、「もしも京大を選択肢に入れていたら♡」という妄想は、それっきりになるのである。もしも運良く東大に受け入れてもらっていたとしても、もっと頑張って京大に進んで京大のヌシみたいになっていたとしても、気がつけば大ベテラン講師、予備校世界に残った最後のヌシになる結果は目に見えている。

(吉田神社の節分祭。京都大学の正門前も、いやはやたいへんな大盛況だった 5)

 

 ま、それが「天職」ということであって、2024年3月、清々しい那覇の風に吹かれながら、素晴らしい天職に恵まれた来し方をニヤニヤ振り返り、「いや今からでも遅くない」「これから京大のヌシになって、百万遍を日々ホッツキ歩くのも悪くないな」と、これからの行く末を思うのである。

 

 本日の写真は、全て2月2日の京都でのもの。2月2日に京都入りして、八坂神社の豆まき・吉田神社の節分会・壬生寺の壬生狂言・廬山寺の鬼踊り・「畑かく」のイノシシ鍋を満喫して、そのあとサンダーバードに乗り込んで北陸本線を北上、金沢と小松での公開授業に向かう予定なのだった。

 

1E(Cd) Alban Berg Quartett:HAYDN/STREICHQUARTETTE Op. 76, Nr. 2-4

2E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE

3E(Cd) Kazune Shimizu:LISZT/PIANO SONATA IN B MINOR & BRAHMS/HÄNDEL VARIATIONS

6D(DPl) 文楽:妹背山婦女庭訓①「小松原の段」「蝦夷館の段」「妹山背山の段」竹本春子大夫 竹本越路大夫 竹本小松大夫 豊竹咲大夫

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