Sun 240225 えべっさん探訪記②八坂神社編/京都の人の食欲/福笹デリバリー隊 4497回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 240225 えべっさん探訪記②八坂神社編/京都の人の食欲/福笹デリバリー隊 4497回

 京都のオバーチャンは、食欲旺盛である。と言っても別に統計をとったとかそういう難しい話ではなくて、例えば街のお蕎麦屋さんで隣のテーブルのオバーチャンの様子をちらちら見ていると、「おや、そんなにたくさん召し上がるんですか?」と一驚を喫することが多い、その程度の話である。

 

 観光客が佃煮みたいにギューヅメになっているような、有名観光地のお蕎麦屋ではない。どう見ても「地元の人しか来ない」と分かる小さな鄙びたお蕎麦屋で、マコトに当然のように「カツ丼セット」や「天丼定食」を注文なさるわけだ。

(八坂神社の前を、十日戎の「えべっさん」がニコヤカに進む)

 

 セットでも定食でも、ガッツリ1合以上のオコメの上に、デカいカツにたっぷりの玉子が絡んでいる。天ぷら系なら、エビにナスにカボチャにかき揚げ、お馴染み十二単の分厚いコロモをまとった天ぷら軍団が「これでもか?」と載っかって、こりゃいかにも胃袋に重くのしかかりそうだ。

 

 その横で、うどんやお蕎麦が熱い湯気をあげている。何しろ「セット」だし「定食」なんだから当たり前と言えば当たり前だが、それを学生やサラリーマンが食べるのではない。大きな病院の目の前のお蕎麦屋で、どう見ても「病院帰り」という頼りなげなオバーチャンが、すっとお箸をとって嬉しそうに食べ始める。

(福笹を載せた「福笹船」が進む。福笹のデリバリーは、後続の複娘が担当する 1)

 

 やっぱり麺類は「のびないうちに」「冷めないうちに」が原則だから、オバーチャンたちはたった1人の寂しいテーブルで、黙って一気に麺類を胃袋に流し込む。今井君みたいに汁をこぼしたり、うどんを鼻から押し込んでみせたり(これはもちろん冗談)、そういう粗相は一切ナシだ。

 

 京都のオバーチャンたちは、麺類を召し上がるにも上品で手際がいい。「あらま?」と驚く間もなく丼は空っぽだ。

 

 30年も昔のこと、名優・藤田まことどんが「どんな熱いうどんでも4口で食べられます」「うどんは噛むもんじゃありまへん、飲み込むものです」「噛んだら、うどんじゃなくて団子でしょ?」と笑顔でおっしゃっていたが、京都のオバーチャンたちも、その食べ方が常識だと思っていらっしゃるんじゃないか。

(福笹を載せた「福笹船」が進む。福笹のデリバリーは、後続の福娘が担当する 2)

 

  麺の後は余計な間を置かず、すぐに天丼やらカツ丼やらに取り掛かる。それがまた速い。今井君みたいに、お蕎麦屋に入れば長っ尻、日本酒をお銚子で4本も5本も注文して、2時間も3時間も座っているようなダラシないことはなさらない。

 

 丼物もまたあっという間に完食し、いかにも気持ちよさそうにお茶を啜って帰っていく。学生やサラリーマンでもそれなりに苦戦しそうな分量を、ササッと半時間もかからずキレイに完食、その居ずまいは見事なものである。

 

 そんなに召し上がったら太ってしまいそうなものだが、彼女たちはいつもそれこそ「シュッとして」いらっしゃって、趣味のいい着物を美しく着こなし、洋装もまたシュッと上品で清潔感たっぷり、いやはやさすがに古都のオバーチャンには、ワタクシなんかとても太刀打ちできない。

(1月9日、八坂神社も「十日戎」でたいへんな賑わいだった)

 

 ではあの食品のエネルギーは、いったいどこで消費されるのだろう。思い巡らしてみるに、まずは「掃除」なんじゃないか。何しろ1200年の町だ、朝も昼も晩も、来る日も来る日もこまめにお掃除を繰り返さなきゃ、あっという間に環境が悪化する。

 

 しかもお祭りの頻度が圧倒的だ。東京なんかの比ではない。今井君が生まれ育った片田舎では、1年に1度か2度のお祭りで、母も祖母も目を回すほど忙しくしていたが、話が京都となると、いやはやほとんど1年中近所のどこかでお祭りをやっていらっしゃる。

 

 お祭りがあれば隣近所とのお付き合いもあり、準備もあれば後片づけもあり、後片づけの最中に次の祭りの準備がはじまる。そりゃオバーチャンたちだって、カツ丼セットに天丼定食、お昼の30分で素早く召し上がって、掃除に準備に後片付けに、そのエネルギーをどんどん差し向けなきゃいけない。

      (1月9日、祇園えべっさん三社詣 1)

 

 もう1つ、京都の人々は歩くのが驚くほど速い。山車やオミコシもどんどん先に進んでしまうので、追いつくのがたいへんだ。

祇園祭の山鉾巡行なんかでも、河原町から御池通りを練り歩いている時には、暑さの中で気が遠くなるほどノロノロしてみせるけれども、いったん最終コーナーを回って新町通りに進入すると、実はそのスピードこそ京都人の真骨頂なのである。

 

 1月9日、京都・八坂神社の「えべっさん」でも、そのスピードはいかんなく発揮された。大量の福笹を積んで進んでいく車(これを福笹船」と呼ぶ)、それに続く数十人の福娘たち、華やかな行列の進行は余りにも速く、八坂神社を出発して四条烏丸あたりまで、30分もかからずに踏破する。

      (1月9日、祇園えべっさん三社詣 2)

 

 祇園の「京都ゑびす神社」とは別に、八坂神社の中にも「えべっさん」があって、2つのえべっさんが同時に進行しているのである。2つのえべっさんの関係性は分からない。読者諸君のほうで徹底的にググって調べてくれたまえ。こんな狭いところで2つのえべっさんが喧嘩もせずに並立し、どちらもマコトに楽しそうだ。

 

 京都ゑびすでは、人々が自分で神社に足を運んで福笹を買い求めるのであるが、八坂神社のえべっさんは、逆に神社の方から福笹を運んできてくれる。

 

 福笹を積んだ「福笹船」が、八坂神社から四条通りを西に向かって進むと、福笹船の後ろに続く福娘たちが、四条通り沿いに並んだ店舗を一軒一軒訪ねては、福笹を配ってまわるのである。福娘による福笹デリバリー隊だと言えば分かりやすい。

      (1月9日、祇園えべっさん三社詣 3)

 

 途中には、忠臣蔵の舞台「一力茶屋」もある。史実では大石内蔵助、浄瑠璃では大星由良之助が、連日わざと酔態を演じて敵を欺いてみせた舞台である。茶屋も和菓子屋も、日本で1か2を競う有名店舗がズラリを並んでいる。

 

 そういう有名店の人たちが店頭に出て福笹デリバリー隊を出迎え、華やかに挨拶を交わし、今年もえべっさんを迎えることができた感謝の気持ちを互いに述べあうわけである。

 

 一軒一軒そういうことをしながら進むんだから、さぞかしノロノロしているだろうと思うと、デリバリー隊の後ろをくっついて歩いているだけの今井君でさえ、この行列についていくのに苦労する。京都の人って、ホントにイヤになるほど歩くのが速い。

  (複娘たちが、四条通り沿いの店舗に福笹を届けていく)


 交通整理もまた、あまりに手慣れていらっしゃる。福笹船には、太鼓や笛のお囃子も乗っている。その後ろから続く福娘の皆様だって、総勢100人近い。そんなに煌びやかな行列が、八坂神社の前のあの大混雑のT字路を右折して進む。

 

 これが普通の街なら、半日も前から交通規制をして、6時間も8時間も通行止めにしちゃうところだろう。しかし驚くなかれ、交通規制はわずか15分、いや実際にはもっと短く済ませてしまうのだった。

 

 行列がスタートする3分前からT字路に緊張が走り、警察官と行列の責任者が数人キビキビと駆け回り、すると突然T字路の真ん中に出現したウソのような真空地帯を、神様に清められた福笹船と福娘たちが、威勢のいいお囃子に乗って一気に進んでいく。

 

 気がつくと交通規制も解除、行列のすぐ背後に再び日常が復活して、バスにトラックに営業車にタクシーが轟音をたてて北に南に走り始める。今井君をはじめとする観光客の集団がふと我にかえるのは、そのまた次の瞬間である。

         (八坂神社、1月9日)

 

 八坂神社前の信号をわたって懸命に行列を追いかけたが、すでに行列の先頭は一力茶屋付近に達しているらしかった。

 

 その後は、追いかけても追いかけても追いつかない。今井が一力茶屋に達した頃には、先頭はもう四条大橋を渡り始めており、やっと四条大橋に達したと思う頃には、行列の末尾は高島屋の先を進んでいた。

 

 そのあたりで、さすがにしつこいワタクシも諦めて、「明日の予定もあることだ」「高島屋前でタクシーをつかまえて、とりあえずホテルに戻りますかな」と、熱い溜め息をついた。

      (八坂神社「福笹船」の七福神の皆さま)

 

 この日宿泊していたのは、宝ヶ池のプリンスホテルである。高島屋の前から北上したタクシーは、日常的にイノシシの肉を売っている有名な肉屋の前を通り、京都大学の脇を抜けて北大路 → 北山と進んだ。

 

 日常的にイノシシの肉を売っているということは、日常的にイノシシの肉を家庭内で料理して召し上がっているご家庭も少なくないということだ。それならやっぱり、京都の人々のアンヨが丈夫なのも「ムベなるかな」。京都御所のすぐそば「護王神社」は足腰の神社であって、和気清麻呂の危機を救ったイノシシ軍団の足腰を、今も讃え続けている。

 

「こりゃワタクシもあやかって、2月3日の節分にはお馴染みの『畑かく』でイノシシ鍋を貪ろう」と、すぐに計画を決めた。そして実際に2月3日、廬山寺の最前列で「鬼ほうらく」ないし「鬼おどり」を満喫した後は、常人なら信じ難いほどのイノシシ肉を貪ったのだが、その話はまた後日の記録に託そうと思う。

 

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2E(Cd) Anne-Sophie MutterVIVALDIDIE VIER JAHRESZEITEN

3E(Cd) Prunyi & FalvaiSCRIABINSYMPHONY No.3 “LE DIVIN POÈME”

6D(DPl) 文楽:菅原伝授手習鑑④「天拝山の段」竹本伊達太夫「北嵯峨の段」豊竹嶋太夫「寺入りの段」「寺子屋の段」先代 竹本織太夫「大内天変の段」豊竹英太夫

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