Mon 231218 猛吹雪の函館へ/ヒコーキ弁当と着陸成功/函館エピソードさまざま 4468回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 231218 猛吹雪の函館へ/ヒコーキ弁当と着陸成功/函館エピソードさまざま 4468回

 何度も何度も同じような書き出しで申し訳ないが、昨日は大阪にいた。今朝は函館にいて、ついさっき大阪に戻った。明日は夕暮れから大阪・天王寺で講演会。明後日の夕方に東京に帰る。あとは23日の池袋の仕事が残るのみ。23日が2023年の仕事納めになる。

 

 昨日の函館へのフライトはたいへんだった。大阪・伊丹空港を出る段階で、「長崎や佐賀や博多でも初雪」「日本海側は大荒れ」「北陸や東北&北海道は暴風雪に注意」その他、いかにも厳冬期らしい予報が出ていた。前日の大阪が20℃超で、天満橋での講演会中も大汗をかいていたのだから、冬のお空の豹変ぶりには恐れ入る。

(吹雪の函館、レンガ倉庫前のクリスマスツリーが美しかった 1)

 

 昨日のヒコーキは、函館の上空で1時間ほど旋回を繰り返した。一度は函館空港への着陸を試みたのだが、あまりの雪と強風に再び急上昇。津軽海峡の分厚い雲の中を3度4度と旋回し、「新千歳空港か羽田空港に降りることもありえます」のアナウンスが本当になりそうだった。

 

 5回旋回して、「もうトイレを我慢できません」という乗客も出現。厳しい表情のCAさんもさすがに許可せざるを得なかったが、いやはや窓の遥か下には逆巻く津軽海峡に無数の白波が見えて、なかなかの緊迫感があった。

 

 しかしそういう状況でも、マコトに呑気にお弁当を召し上がり続ける乗客と言ふものも存在するのである。今井君の斜め右の女性客であったが、いやはやこの状況も何のその、プレミアム席で配布されたお弁当を、いつまでもいつまでもお箸でかき混ぜていらっしゃる。

     (12月17日、吹雪の函館、レンガ倉庫 1)

 

 お弁当は、ちらし寿司。コロナ後、ANAプレミアムクラスの機内食は一気にクオリティを下げ、かつては「有名料亭のシェフとコラボ」を高らかにうたい、ホットフードが1皿は必ず出ていた沖縄便や福岡便でも、厚紙のパッケージに入った稲荷寿司セットかちらし寿司セット。飲み物も基本的に紙コップになっちゃった。

 

 ま、エコといえばエコなんだろうけれども、そこまでクオリティを下げるなら、もう国内線でのお弁当を全てヤメにしちゃった方がいい。30分ちょいしかフライト時間がない東京-大阪便のお弁当なんか、配る方も難行苦行、食べる方も難行苦行、ほとんど噛まずに飲み込まなきゃ間に合わない。

 

 しかも諸君、ぐっすり眠っている乗客を叩き起こしてでもお弁当を配布なさるCAさんだっている。耳元で「お客さまぁー」「お客さまぁー」と連呼され、びっくりして眼を覚ます人を見かけると、可哀想でならない。

 

 何の用かと目を覚ますと、紙袋に入れた弁当を突きつけられ、「お持ち帰りになりますか?」と尋ねられるのである。「いやもう食事は東京で済ませました」という人も多いだろうし、大阪に着いてからの旨い飯を楽しみにして眠っている客はナンボでもいる。紙パッケージの冷えた稲荷寿司を、意地でもつきつけるには及ばないんじゃないか。

     (12月17日、吹雪の函館、レンガ倉庫 2)

 

 しかし一方で、こちらもまた「意地でも」お弁当を咀嚼し続ける人もいらっしゃるのだ。昨日の大阪→函館便の話に戻るが、すでに「着陸態勢に入りました」「シートベルトをしっかりとお締めください」という段階に入っても、彼女はまだまだお弁当をかき回し続けていらっしゃった。

 

 ハラハラして斜め後ろから眺めていると、彼女はまずちらし寿司を箸で小さな塊にじっくりと分けていく。箸でつまめる大きさ、ないし彼女の口に1回で詰め込める大きさにしたいわけであろうが、それがなかなか旨く仕上がらない。

 

 彼女は何度も何度も小分け作業に取り組み、しかし出来あがった塊が気に入らず、いったん箸を置いて紙コップの中の液体をホンの一口すすって、再び小分け作業にとりかかる。マコトに入念であり、マコトに執拗であり、マコトに真剣である。

 

 しかしまたまた難航を繰り返す。しばらくして小分け作業を再び断念し、紙コップを口に運び、また小分け作業に移り、またうまくいかず、自分の仕事につくづく不満を感じるように箸をパタリと置き、紙コップを口に運ぶ。延々とそれを繰り返している。

 

 すでにCAさんたちは全て着席している。何しろ「着陸を試みながら、津軽海峡上空で旋回を繰り返している」「乗客がトイレに立つなんてことは絶対に許されない」という緊張&緊迫の場面だ。

 

 だから彼女がいくらちらし寿司をかき回していても、もうそれに注目する人は誰もいない。そっと見守っているのは、このサトイモ男爵ただ1人だ。どんなに強風に煽られて揺れても、どんなに遥か下方の津軽海峡が逆巻いても、彼女はひたすらちらし寿司をかき混ぜ、しかし口に運ぶ頻度は驚くほど低い。

(函館上空で旋回中のヒコーキより。遥か眼下で、津軽海峡の荒海が逆巻いていた)

 

 結論を言えば、5回の旋回の後で、ついにヒコーキは函館空港への着陸に成功したのである。進行方向左側の窓に、猛吹雪の下の黒い海が現れ、海は激しく逆巻きつづけ、まもなく函館空港の滑走路が見えて、2度3度大きく左右に翼を揺らしたかと思うと、2度ほど激しくバウンドして、一気に速度を下げた。

 

 機内からは、着陸成功を祝福する大きな拍手が湧き上がった。自然発生的に拍手が湧き起こるのは、どんな時にも感動的なものだ。

 

 10年前、ブエノスアイレスからのヒコーキがフランクフルトに無事着陸した時にも、同じような拍手が湧いた。サンパウロからのヒコーキがパリに到着した時も、大きな熱い拍手が湧きあがった。

 

 ワタクシが駿台をヤメて代ゼミに移籍する直前、駿台御茶ノ水本部校舎での最後の最後の授業のそのまた最後、やっぱり同じような心からの熱い拍手をしてもらえた。あの感激は今も忘れられない。

(吹雪の函館、レンガ倉庫前のクリスマスツリーが美しかった 2)

 

 さて諸君、こうやってほうほうのていで到着した函館でも、なおも次々と楽しいエピソードが続いたのである。何しろ北海道でも今年初めての猛吹雪の真っただ中。面白いエピソードがタンマリ続くのも当然である。

 

 函館駅前から滞在先の函館国際ホテルまでタクシーに乗ったが、駅前でおそらく何時間も客待ちをしていた個人タクシーの運転手さんは、ようやく乗り込んできた客がクルマでわずか3分の「国際ホテル」を指定したのが、マコトに気に入らない様子。ま、「さもありなん」である。

 

 しかし、まさか猛吹雪の中で笠地蔵みたいに雪まみれになっているサトイモ男爵を、乗車拒否&放置してしまうわけにもいかないじゃないか。激しく舌打ちしながらも、ベテラン運転手さんは雪まみれのサトイモを乗せて、歩いたってせいぜい10分ほどの道のり不承不承に走ってみせた。

 

 料金は、600円。猛吹雪の函館駅前で、おそらく2時間も3時間も客待ちをして、しかしたったの600円。これほどコスパの悪い仕事は考えられないだろうから、今井君は「おつりはいりません」と穏やかに申し出てみた。

 

 しかし諸君、たった400円のお釣りを「いりません」と言ってみたって、運転手さんのフンマンが収まるはずもない。手渡した1000円札をポイ!!と助手席に投げ捨てることで、運転手さんはその猛烈なフンマンをワタクシに示してくれた。でも諸君、10秒で雪まみれになる湿雪の猛吹雪の中だ。タクシーに迷惑をかけても、どうしても許してほしいのである。

(函館レンガ倉庫の居酒屋にて。「3貫なら安くなる」というセット寿司を貪る 1)

 

 到着した「函館国際ホテル」は、函館市内屈指の高級ホテルであって、結婚式とか大事な会議やパーティーなら、「どうしても国際ホテルでなきゃ」、それがおそらく函館市民共通の認識であるらしい。

 

 しかし諸君、さすがに今年初めての本格的♡猛吹雪だ。部屋の暖房が恐ろしいほど効きが悪い。というか、設定温度を28℃まで上げても、部屋はちっとも温まらない。試しに設定を30℃まで上げてみたが、事態は一向に改善されない。

(函館レンガ倉庫の居酒屋にて。「3貫なら安くなる」というセット寿司を貪る 2)

 

 こりゃいかん。このままでは丸1日お部屋の中で凍えて過ごす羽目になる。事態を憂慮した今井君は、さっそく外出してアルコールに頼ることに決め、徒歩で10分ほど、レンガ倉庫街の居酒屋でたっぷりお酒をいただいててくることにした。

 

 この日は仕事はないんだから、「お酒でヌクヌク温まる」という唯一無二の楽しみにどっぷり浸かろうと考えたわけである。「湿雪の猛吹雪」という最悪の天候の中、足を滑らせないように慎重に進んだ今井君は、わずか10分の間に完璧な笠地蔵、というか笠里芋と成り果て、それでも無事に居酒屋のカウンターに座り込んだ。

(波止場焼き。じゃがいもにイカの塩辛を乗っけてホイル焼きにする。オイシューございました)

 

 カウンターで注文したのは、まずジョッキ1杯の黒ビール、続いて熱燗の日本酒4合、さらにもう2合。インド系の男子従業員がほうほうのていで運んでくるチョー熱い徳利を、お手拭きで慎重にくるんで盃に注いではあおり、注いではあおり、6合の熱燗は1時間ほどで空っぽになった。

 

 熱燗とともに貪ったのは、カウンター担当のオジサマが握ってくれる握り寿司。エビ・サーモン・ホタテ・カニ・タイ・ゴボウ巻き。「3貫ずつなら安くなります」というセット寿司で、我が肉体はどんどん温まった。

 

 イカの塩辛をじゃがいもにかけてホイル焼きにした 「波止場焼き」も美味。2年前にここにきた時からの大好物だ。しかし諸君、カウンターの右隣では、熱燗よりも波止場焼きよりも、もっともっと遥かに熱いカップルが、夕暮れ5時のカウンターでますます熱く真っ赤に燃えあがっていた。

(午後6時、函館港に花火が上がる。すでにホテルの部屋に帰って眺めていた 1)

 

 諸君、カップルのあまりの熱さに、寿司屋のオジサマはどこかに逃げていって姿が見えなくなった。インド系の従業員も、滅多なことでワタクシの近くに来てくれなくなった。そのぐらい隣りのカップルが、接近すればジュっとヤケドしそうなほどに真っ赤に燃え上がっていたのである。

 

 そういうわけで諸君、今井君はヤケドを恐れ、日本酒6合と「波止場焼き」2皿と寿司3貫×6種類=18貫がなくなったのを機に、早々にこの場を立ち去ることにした。外に出ればまた湿雪の猛吹雪。しかしホテルでは「30℃設定」のポカポカ、暖ったかお部屋が待っているはずだった。

(午後6時、函館港に花火が上がる。すでにホテルの部屋に帰って眺めていた 2)

 

 しかし諸君、マコトに残念なことに、お部屋の暖房にはちっとも進捗ナシ。相変わらず暖房はあまり効かず、お部屋の空気はおそらく12℃ないし10℃、風呂もトイレも凍えるほどの寒さの中、どうにも致し方なくお布団に潜り込んで一夜を明かすことにした。

 

 この一夜を彩ったのは、NHKのEテレで聴いたN響によるベートーヴェンとブラームス。前者はピアノ協奏曲第5番「皇帝」、後者は交響曲第3番だった。

 

「皇帝」は、子供の頃の今井君が初めて購入したクラシックのLPレコードだったし、ブラームスの3番は、学部生の頃に大学生協のレコードフェアで40%だったか50%だったか、たいへんな値引きで購入して擦り切れるまで聴いた。

 

 だからどちらもマコトに懐かしい曲であって、こうしてホテルの部屋で寒さに縮こまって聴いていると、当時の馬鹿馬鹿しい記憶まで鮮やかに甦ってくる。たまには暖房のよく効かない部屋で布団にくるまって過ごすのも、決して意味のないことではないようである。

 

1E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM

2E(Cd) Kremer:MOZART/VIOLINKONZERTE Nos. 2 & 

3E(Cd) Baumann:MOZART/THE 4 HORN CONCERTOS

4E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 1/5

5E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 2/5

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