Wed 231114 今日の写真は最高のオマモリだ/ふっとばす/式包丁/笠懸神事 4454回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 231114 今日の写真は最高のオマモリだ/ふっとばす/式包丁/笠懸神事 4454回

 ついさっきまで四国の高松にいた。今は大阪にいる。大阪に宿泊して、兵庫の西宮で公開授業をこなしてきた。京都大の長文読解問題を1問、カンペキに解説して大阪に戻り、大阪福島の焼き鳥屋のカウンターに座って、静かに一杯やってホテルに帰ってきた。

 

 ここから12月23日まで約1ヶ月半、こういう休む間もない東奔西走で、八面六臂の大活躍をする。京都にいたかと思えば長崎に現れ、札幌にいたかと思えば大阪・神戸に舞い戻り、その間にもちろん東京のオウチにも帰っていろんな雑務もこなすのである。

 

  高松から大阪までは、高速バスで移動した。もちろん電車移動でもいいが、電車だと岡山と新大阪で合計2回も乗り換えがある。八面六臂の最中は当然大きな荷物があるから、乗り換え2回はつらい。その点、高速バスなら一度乗ってしまえば、大阪梅田までずっと黙って座っていればいい。

(的中の瞬間。上賀茂神社、笠懸神事にて。この写真は最高のオマモリだ 1)

 

 高松のバスターミナルからは、松山・高知・徳島、四国各地へ頻繁にバスが出ている。京都や広島行きもある。それぞれ特徴的な名称がついていて、松山行きは「坊ちゃんバス」、ワタクシが乗車した大阪行きは「フットバス」と言うのである。

 

「フットバス」は、英語で書けば「Foot Bus」であって、バスの横っ腹にはテクテク懸命に歩いているアンヨのイラストがある。「自分のアンヨで歩くように日常的に気軽に利用してください」、そういう願いが込められているものと思われる。

 

 しかしおそらく、というか間違いなく「フットバス」の名称を思いついた人も、この愛称に決定した会議の席でも「おお、いいじゃないか、吹っ飛ばす」とニヤリと微笑むシーンがあったに違いない。安全運転に越したことはないが、四国高松から大阪まで、どんどん吹っ飛ばしていくイメージだ。

 

 ま、もしもそういうことなら「すっとばす」でもよかったわけだ。しかしフットバスなら「foot」という英単語で対応できるが、「スットバス」となると、「スット」という発音の単語を見つけなきゃいけない。

 

 きっと会議の席でも、和英辞典やらネット検索やら「スット」という単語がないかどうか、真面目に調べる場面があったんじゃないか。

 

 いやはや、しかしどうしても「スット」が見つからない。「そんなら、sitはどうだろう」「みんな座れるという意味でSit Bus」「シットバスが訛ってスットバスでどうだろう」というのであるが、さすがにそれじゃカッコ悪すぎる。「いいよ、吹っ飛ばすでみんな分かってくれるだろう」、そういう経緯が目に見えるようだ。

(的中の瞬間。上賀茂神社、笠懸神事にて。この写真は最高のオマモリだ 2)

 

 では実際に乗ってみて、高松発大阪行きのバスが本当に「吹っ飛ば」したかどうかという点になると、残念ながら全然まったく吹っ飛ばさないのである。当たり前だが超安全運転であって、高速道路上でも路線バス用の停留所に長々と停車する。

 

 今井君は何しろ八面六臂の東奔西走をやっている最中であるから、一刻も早く大阪に到着して、出来るだけこの楕円形の肉体を休めたいのであるが、まるでワザとやっているみたいに、一般道では全ての信号に引っかかる。ちっとも吹っ飛ばしてくれないのだ。

 

 折からの強風の中、2回も海を渡る。まず鳴門大橋。残念ながら橋の下に渦潮を確認することはできない。続いて淡路島を縦断した後は、明石海峡大橋。横風が強烈に吹きつけ、海の風に煽られてバスは何度かヨロヨロよろめいた。こんな悪天候では、すっとばすも吹っ飛ばすも出来るはずがない。

 

 中2の頃、何かと言うと「ぶっとばす」「ぶっとばす」と不気味に喚く友人がいた。「本当か?」「絶対か?」「違ってたら、ぶっ飛ばす」「嘘ついたら、ぶっとばす」と喚くのであるが、口ばかりの友人で、1度もぶっ飛ばしたり吹っ飛ばしたりはしなかったようである。

(的中の瞬間。上賀茂神社、笠懸神事にて。この写真は最高のオマモリだ 3)

 

 さて、この時期の京都人はなかなか豪快であって、そこいら中でオミコシが吹っ飛ばしたりぶっ飛ばしたりしているし、神社やお寺の境内では「お火焚き」のオレンジ色の炎がメラメラと燃え上がり、炎からは一瞬窒息しそうな恐怖を覚えるほどの、もうもうとしたケムケムが立ちのぼる。

 

 こういう時は、たくさんのおじいちゃんたちも、かなりの勢いで吹っ飛ばすのである。その一例が、前回のブログに写真を掲載した「式包丁」であるが、いやはや真剣に包丁を振るう自信たっぷりなおじいちゃんのお姿は、マコトに神事にふさわしかった。

 

 粟田神社の祭礼には、近くのお寺から僧侶の代表、神社からは神官の代表が出席する。粟田神社のお隣は青蓮院、そのお隣は知恩院、さらにその向こうには八坂神社、まさに修学旅行のメッカみたいな寺社から、それぞれお偉いオボウサマや神官がお一人、粟田神社に礼を尽くしにやっていらっしゃる。

 

 その中のお一人に、「式包丁を奉納する」という役目の偉いおじいちゃまがいらっしゃって、前回記事の写真のような見事なワザを披露する。式包丁は、9世紀の中盤、清和天皇の時代にまで遡る儀式である。

 

 包丁師のおじいちゃまは、烏帽子&直垂、ないし烏帽子&狩衣というお姿。右手に包丁、左手にマナ箸。長い長いサイバシのようなお箸であるが、巨大なまな板の前に正座したおじいちゃまが、食材に一切手を触れず、包丁とマナ箸だけで食材を切り分けていく。その作法が美しい。

 

 この日の食材は、大きなお魚。おそらくあれは鯉であったが、ものの15分もかからずに鯉は見事に切り分けられ、お皿の上に綺麗に並べられる。いやはや、素晴らしいワザを披露していただいた。

(上賀茂神社にて。笠懸神事に参加する名馬と勇士達が続々と集まってくる 1)

 

 10月15日、粟田神社を出たワタクシは、まっすぐに上賀茂神社を目指した。ここでもまた「吹っ飛ばす」の言葉にふさわしい神事が行われていて、「笠懸神事」、全速力で馬場を吹っ飛ばしてきた馬の上から、武者姿も勇ましい勇士たちが、小さな的を弓で射るのである。

 

 むかしむかし受験生の頃、山川出版社の日本史の教科書を2回通読しただけで大学入試に望んだが、今でも教科書中の挿絵を覚えている。平安末期から鎌倉時代にかけて盛んに行われた騎射三物(きしゃみつもの)、流鏑馬(やぶさめ)笠懸(かさがけ)犬追物(いぬおうもの)のうちの1つである。

 

 さすがに21世紀、危険なクマの駆除でさえ「かわいそうだ」と役所に涙声の電話が殺到する時代だ。犬を的にする犬追物なんかは論外であるが、笠懸で射るのは、板のマトと小さな素焼きのマト。「馬に乗る」と言ふことが動物愛護上の批判を呼ぶかどうかは別として、上賀茂神社にはたくさんの見物客が訪れていた。

(上賀茂神社「神馬舎」では、美しい白馬が悠然と休んでいた)

 

 馬場を一直線に疾走、というか本日の文脈では吹っ飛ばしてくるお馬たちは、選りすぐった名馬の諸君であって、名馬連の中には競馬場で鳴らした有名な名馬を父と母にもち、美しく低い姿勢で少しも馬体を揺らさずに、疾走ないし吹っ飛ばしてくる姿があまりにも美しい。

 

 しかしあんまり吹っ飛ばされると、困るのは馬上の射手(いて)であって、あんまり馬が速いと、なかなかマトに矢が当たらない。むしろちょっと年老いた馬で、上下にゆさゆさ馬体を揺らしながらゆっくり走ってくれた方が、的中の率は高いのである。

 

 長い馬場にマトが3つ置かれ、馬上の勇士達は次々に矢をつがえては放ち、矢をつがえては放ち、3射中2射が的中、3射中3射が的中、そのたびに会場から大喝采が湧きおこる。勇士達の中には、女子の射手も混じっている。彼女もまたマコトにカッコいいのである。

(上賀茂神社にて。笠懸神事に参加する名馬と勇士達が続々と集まってくる 2)

 

 見事に矢が命中したマトの板は、2000円を奉納するといただいて帰れる。縁起物なのである。だって「的中」だ。入試本番の迫る受験生なんかにも、ぴったりの贈り物になる。

 

 そこで今井君は、大ベテラン予備校講師として、何としても的中の瞬間をカメラに収め、それをブログに掲載して受験生を応援しようと決意した。客席の後方からスマホのカメラで馬を追い、勇士達を追い、矢の離れる瞬間を狙った。

 

 そして何とも見事に撮影に成功したのが、本日の1枚目、2枚目、3枚目の写真である。吹っ飛ばしてきた名馬、吹っ飛ばしてきた勇士達、弓から離れて猛スピードでマトに向かう矢、矢が的中して真っ二つに割れる板のマト、全てがキレイに写っている。

 

 これほど優れた縁起物はない。諸君、受験生仲間でどんどん拡散して、みんなでお守りとして共有したまえ。受験生ばかりではない、全ての社会人、全てのビジネスマン、全ての投資家に投機家、みんなでこの的中写真をフトコロなりポケットなりに忍ばせ、日々の真剣勝負に挑もうじゃないか。

 

 馬場の傍らには、美しい白馬がゆったりと休んでいる、これは「神馬」であって、普段は白馬の人形というか馬形というか、要するに生きたお馬ではない馬像が据えてあるのだが、この日は笠懸神事の当日だ。生きた本物の白馬が、観光客が差し出すニンジンを次から次へと悠然と召し上がっては、お馬ならではの優しい笑顔を浮かべるのであった。

 

1E(Cd) Brendel:BACH/ITALIENISCHES KONZERT

2E(Cd) J.S.BACH/SILVIA(Cantata Opera in 3 Acts)1/2

3E(Cd) J.S.BACH/SILVIA(Cantata Opera in 3 Acts)2/2

4E(Cd) Holliger:BACH/3 OBOENKONZERTE

5E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 1/4

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