Wed 230906 学士会館ビアホール/馴染みの理髪店/就活の思ひ出/深い後悔  4427回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 230906 学士会館ビアホール/馴染みの理髪店/就活の思ひ出/深い後悔  4427回

「学士会館で夏季限定のビアホールをやるらしい」と知ったのは、7月中旬、行きつけの理髪店でのことである。帰りのレジで下の写真のようなポスターを見かけ、「これだ」「これは何が何でも訪ねてみなきゃいかん」と、早速ビシッと心を決めた。

 

 オウチの近くの理髪店である。以前は西新宿の高層ビル地下にある床屋さんに通っていたが、コロナ真っただ中だった3年前の夏、数名の理髪師の中に、マスクなしで客と声高に談笑を続ける女子理髪師がいて、そのことを指摘したら、何だかこっちが気まずくなっちゃった。

 

 そこで、この店にかえたのである。ちょっとお値段は高いけれども、少なくとも不快な思いをすることは全くない。30歳になるかならぬかぐらいの青年理髪師の店であるが、コドバ遣いも客との応対もオトナ、コロナが鎮静化してからはそれなりに会話も交わすが、その会話もなかなか充実している。

 

 最初は「細々と語学の教師をしています」ぐらいの自己紹介をしておいたが、だんだんワタクシの正体がバレてきた。まず店頭で今井とバッタリ顔を合わせたモト生徒が、「あれはカクカク&シカジカの予備校の先生で...」と、青年店主に今井の正体を語り尽くしたらしい。

(理髪店のレジ脇に、「学士会館ビアホール」のポスターを発見)

 

 そこへ、例のテレビCMラッシュが始まった。電車に乗れば、そこいら中の戸袋広告で今井君の写真がニタニタ、満員の乗客に笑顔を振りまいていた。青年店主も、「CMや電車の中の広告、見ましたよ。スゴいですね」と笑顔を向けてくれた。もちろんワタクシだって、そう言われればマンザラでもないのである。

 

「まんざら」を漢字で書けば「満更」。どうして「満更でもない」なのか、諸君、何と今でも「語源は不明」であって、要するに「満更の語源は誰にも分からない」。驚くべきことじゃないか。

 

 中には「満更の語源は『真更』、『真更』と書いて『まさら』。何だ今井って、何にも知らないんだな」と呵々大笑する人もいらっしゃるが、ではその「まさら」なるものを辞書で調べても、どんな辞書にも掲載されていないのである。

(久しぶりに訪問した学士会館。どのぐらい久しぶりかは、記事本文を読んでくれたまえ 1)

 

 まあ、いいか。ワタクシはこの青年理容師と、NHKラジオ『昼のいこい』の話や、湯西川温泉のクマ料理やらシカ料理やら焼きイチゴの話や、タモリのオールナイトニッポンの話や、コロナ鎮静化の後にはずいぶんたくさん話し込んだ。

 

 もちろん他のお客さんもいらっしゃるから、話はあくまで小声で、決して「声高に談笑」なんてことにならないように、控えめに控えめにボソボソ&ボソボソ、昼下がりの理髪店の会話はマコトに眠たげに続いていく。それがまた心地よいのである。

(久しぶりに訪問した学士会館。どのぐらい久しぶりかは、記事本文を読んでくれたまえ 2)

 

 理髪店でそういう1時間を過ごした後、レジの前で見かけたのが、冒頭に書いた「学士会館ビアホール」のポスターである。「今年は『昭和レトロ』をテーマにして皆様をお迎えいたします」の文言があった。

 

 写真には、旨そうなローストビーフとサーロインステーキ。他にも「伝統の西洋料理、中国料理や日本料理を取り揃えてお待ちしております」。これが毎日食べ放題&飲み放題で税込6000円、こりゃどうしても行かないわけにはいかない。

 

 8月7日夕刻、ワタクシは満を持して「学士会館」を訪れた。どのぐらい満を持したのかというに、7月22日で夏の公開授業をほぼ全て終了した後、まだ今井には恒例の収録授業が数件待ち受けていた。それを全て滞りなく完了するまで、こりゃもう心置きなく満を持したわけである。

(久しぶりに訪問した学士会館。どのぐらい久しぶりかは、記事本文を読んでくれたまえ 3)

 

 7月27日には、京都大学2023年の過去問演習講座収録があった。「久しぶりに哲学的文章が出た」と、近畿圏の予備校の先生方は大騒ぎだが、いや別に「哲学的」というほどの文章ではない。久しぶりに「科学エッセイ以外」が出題されただけのことである。

 

 近い将来、京都大学の過去問から超良問ばかりを精選した長文読解の参考書を出そうと考えているが、2023年の第1問と第2問は、その場合どうしても採用したい2問である。

 

 チマチマした小さな設問は一切ナシ、「大学の入試はこうでなきゃいかん」という京大の頑固な出題方針は、共通テストとは段違いの高潔なものであって、ワタクシはモロテをあげて大賛成だ。

  (学士会館内、京都大学と大阪大学の展示コーナー)

 

 7月31日は、名古屋大学2023年の過去問演習講座を収録。うーん、名古屋もまた良問ぞろいなのだが、どうしてもこちらは設問の数が多すぎる。むかしから長文読解問題の中に意地でも整序英作文を1問入れてくるのだが、これって、どうしても必要なことなんだろうか。

 

 さらに8月2日は、「双方向授業シリーズ」ということで、その中の「難関私大編」を担当。早稲田&慶応の長文の難問をまるまる1問解説し、何しろ「双方向」だから、生徒から直接の質問を受けては答え、受けては答え、なかなか忙しい。

 

 すでに最初の企画から4年目。きっかけはやっぱりコロナであって、例の夏期河口湖合宿ができない代わりにリモートでの双方向授業が企画された。今年から河口湖合宿が復活したので、逆に「双方向」のほうは何となく「熱くボンボン盛り上がる」というわけにはいかなくなってしまった。

(学士会館内、北大・九州大・名古屋大・東京大の展示コーナー)

 

 すると今井君は、「来年2024年には、ワタクシも河口湖の夏期合宿に復活するかな?」と、手ぐすねをひきはじめるのである。

 

 2005年の東進移籍以来、2018年までの14年間は全ての夏期合宿で真っ赤に燃え上がり続けてきたが、2019年からは「そろそろ合宿は卒業」などと寂しいことを自分から言いだして、合宿を若手の先生方にお任せすることにしちゃった。

 

 そのぶん、8月21日から30日の夏期合宿期間中にも全国行脚の公開授業を続けて、合宿に参加できない全国の受験生のお手伝いしようと考えたのだった。

 

 しかしいったん卒業してみると、やっぱり後悔の方が大きい。「合宿に行ったのに、今井先生に会えなくて残念だった」みたいな生徒たちの声も、少なからず聞こえてくるのである。いやはや2024年はどうするか、今からワタクシは大いに悩んでいる。

(学士会館ビアホールの待合室にて。おお、この重厚な雰囲気がいいじゃないか 1)

 

 まあ諸君、「8月7日まで満を持して」というのは、何と何とこんなに大量の「満」を持したのであって、地下鉄神保町の駅を降り、神田錦町というか神田一ツ橋というか、久しぶりに「学士会館」の前に立った時、何だかワタクシは涙が出そうだった。

 

 思い起こせば学部卒業学年の10月、若き今井君はやっと始めたばかりの就職活動で、「博報堂」の第1次面接を受けるために、この学士会館を訪ねたのである。

 

 卒業まで残り半年、ホントにホントに切羽詰まったところまで来て、やっとのことで始めた非常識な就職活動だった。10月1日に開始した我がシューカツ、回った順に電通・日立・三菱電機・博報堂・旭化成・凸版印刷・シャープ・講談社・文藝春秋・NHK、「なんだそりゃ?」と驚くほど、全く脈略のないシューカツだった。

(学士会館ビアホールの待合室にて。おお、この重厚な雰囲気がいいじゃないか 2)

 

 まあそれで最終的には10月10日ごろ「電通」に落ち着いたわけであるが、博報堂の時、乗っていたタクシーが脇から飛び出して来たクルマと学士会館の前で衝突した。「これから面接」という大切な時に、マコトに思い切りそういうことが起こってしまった。

 

「だから」と言い訳しなくてもよさそうなものだが、博報堂の面接で今井君は「たった今そこで乗っていたタクシーが交通事故に巻き込まれまして」と、それこそ大いに盛り上がり、「そうですか♡」「そうですか♡」と博報堂の人もそっちの話で盛り上がり、さすがに採用には至らなかった。

 

 その思ひ出も、はるかな&はるかな大昔の話になってしまった。あの時もし何事もなくタクシーが面接会場に到着していたら、その後の今井君の人生はどうなっていたであろうか。

 

 電通を選択したか、博報堂を選択したか、はたまた他の選択肢を選んだか。まあいろいろ思いめぐらすのであるが、いや、結局同じことだ、どうせ会社員としてセッセと働く生マジメな日々に満足できず、「30歳で予備校講師」。シューカツの結果がどうあれ、予備校講師はワタクシの天職だったに違いない。

(学士会館ビアホール。例のポスターが待っていてくれた)

 

 そういうことをしみじみ思いながら、次々とグラスを空っぽにした。まず普通のビールを空っぽ、これには1分もかからない。そこからはひたすら黒ビール。黒ビールなら、長い列に並ばなくてもすぐに手に入るのである。

 

 ビアホールはたちまちのうちに満員になった。客の年齢層は極めて高い。60歳代から70歳代の落ち着いた物静かな男女、さすがに「学士会館」であって、知のレベルもグイッと高級なムードが満ちている。

 

 ここは諸君、北海道大・東北大・東京大・名古屋大・京都大・大阪大・九州大の卒業生、要するに「旧7帝国大学」の卒業生の集まる同窓会組織の本部なのである。以上の大学の修士や博士や教員ももちろん含まれる。会館内には他にも由緒正しい料理屋やバーやレストランが並ぶ。

 

 カンタンに言えば「コドモのくるところではない」のだ。インディジョーンズの名セリフ「観光客のくるところじゃない!!」をふと思い起こしつつ、「いやはやオレも、やっぱりあのとき妥協を一切せず、何が何でも東京大学、何浪してでも行っておくんだった」と、マコトに苦い黒ビールを再現もなく飲み続けるのだった。

 

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 8/10

2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 9/10

3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 10/10

6D(DMv) NIGHTHAWKS

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