Tue 230627 誕生日イブ×365/「先生ですか?」の嵐/和歌山県串本を旅する 4398回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 230627 誕生日イブ×365/「先生ですか?」の嵐/和歌山県串本を旅する 4398回

 何とも大人げないというか、精神年齢が低いにもほどがあるというか、今井君はもううれしくてたまらないのである。テレビをつければCMに自分が出てきて、何だか両手をヒコヒコさせながら楽しそうにしゃべっている。電車に乗れば自分の写真が何だかニタニタ笑っている。

 

 テレビや電車の広告が始まってまだ2日しか経たないが、周囲の反響はたいへんなものである。昨日は歯科医にお世辞を言われてニヤニヤ、今日は馴染みの蕎麦屋でお世辞、軽く一杯飲みに入った居酒屋でお世辞、すると周囲のお客みんな「へえ」「へえ」「へえ」と驚きの眼差しを向けてくれる。

 

 こんなに嬉しいんじゃ、まだまだなかなかこの仕事を辞められない。このごろ時々「そろそろ後進に道を譲って」みたいな殊勝なことも考えるようになったが、それは要するに気が弱くなっていたせいで、奥歯が1本いきなりスポンと抜けたり、右目も左目も1回ずつ網膜剥離、そういう状況に心がポキリと折れそうになっていた。

 

 しかしいやはや、チヤホヤされてこんなにウキウキ&ワクワク、来る日も来る日もこれほど楽しいのなら、諸君、ワタクシはまだまだ容易に「後進に道を譲」ったりなんかしませんぞ。それどころか、もっともっと授業のクオリティを向上させて、たとえチャレンジしてくる「後進」がいても、みんなバシバシ大人げなく退けつづけますぞ。

   (和歌山県串本、奇勝「海金剛」を訪問する 1)

 

 昨日の誕生日から、早くも1日が経過、というか24時間が経過。せっかくの誕生日はどんどん手の届かないところに遠ざかっていくけれども、ということは次の誕生日がぐんぐん1年後に接近しているのだ。

 

 もし「誕生日イブ」「誕生日イブイブ」みたいな数え方をするなら、今日や明日は「誕生日イブ × 365」「誕生日イブ×364」なのであって、そうなれば諸君、毎日毎日がマコトにおめでたい。

 

 来年もまた誕生日に、「いやはやおめでたい」「今年もまた、何とか死ななかったねェ」と、仕掛人♡藤枝梅安みたいな安堵の溜め息をついているに違いない。「死ななかったねェ」でもう10年、いや20年、このまま予備校のCMやポスターに顔を連ねていけたら、そんな幸せなことはない。

   (和歌山県串本、奇勝「海金剛」を訪問する 2)

 

 10日前の6月17日には、ワタクシは兵庫県淡路島のど真ん中、洲本の町で夕暮れから公開授業を実施した。神戸とか西宮とか姫路とか、兵庫県には他に大きな街がナンボでもあるけれども、淡路島の洲本と、日本海側の豊岡、人口のグッと少ない2つの田舎町も、この数年ワタクシは非常に大事に考えている。

 

 冬には、4年連続だか5年連続だかで豊岡を訪問している。100年も昔の銀行を改修した不思議なホテル「オーベルジュ豊岡1925」に何年も続けて宿泊して、豊岡の公開授業に臨む。

 

 出席者は100名に満たないが、例えばその中から「神戸大医学科に3人現役合格しました」とか「中3生7名が、残らず京都大学の長文問題を100%理解して帰りました」とか、嬉しい結果が必ずついてくるのである。

 

 洲本のほうは、夏の訪問が多い。新神戸からクルマに乗り、明石海峡大橋を越え、対岸の大阪や和歌山あたりの景色を眺めながら淡路島を縦断し、丸1時間かけて夕暮れの淡路島に到着する。

 

 公開授業が終わって、予約しておいたクルマに飛び乗って神戸に帰る。集結した生徒諸君の真剣さが何よりも嬉しい。今年使用したテキストは、旧帝大レベルの長文問題、必ずしも地域のトップ校ばかりから集まってくれたわけではないが、あれほどの難問の解説を90分、懸命にメモを取りながら聞き入ってくれる。

 

 豊岡と洲本、招いてくれさえすれば、「今年もまた、死ななかったねェ」とうそぶいていられる限り、毎年必ず訪問したいと熱望するのである。

   (和歌山県串本、奇勝「海金剛」を訪問する 3)

 

 翌6月18日は、まるまる1日休みになった。しかしそのあと19日から22日は、広島県呉・大阪府堺東・兵庫県姫路・大阪府岸和田と近畿圏シリーズが連続するから、たった1日の休みが入ったからといって、東京に帰るわけにもいかない。

 

 だから18日のワタクシは、「本州最南端」の町・串本を目指して朝の特急「くろしお」に乗り込んだ。紀伊半島をどこまでも南へ南へと南下していくのである。

 

 つい最近まで「くろしお」は、新大阪からしか乗車できなかった。この春「うめきたエリア」の整備工事がほぼ終わって、和歌山方面の「くろしお」や関西空港方面の「はるか」に、大阪駅から乗車できるようになった。

 

 近未来的に整備された地下ホームで、大阪の皆さまもマコトに嬉しそうに盛んに写真を撮っている。「うめきた」とは「梅田の北」ということであるが、地下の通路を延々と約1駅分は歩かされるので、今のところはまだそんなに乗客の姿は多くない。通路沿いの飲食店も、まだ恐る恐るの営業のようである。

(海金剛、「毎日がお祭りムード」の「カラオケ喫茶 海金剛」。残念ながらお休みだった)

 

 串本への旅は、5月から6月にかけて盛り上がった「関東平野の旅」の延長上にある小旅行のつもりだった。ワタクシにとっても、和歌山以南の和歌山県はこれが初体験。大学生の頃、この地方を舞台にした中上健次の小説にちょっとハマった記憶はあるにしても、土地勘は全くない。

 

 軽い小旅行のつもりが、大阪から串本まで何と3時間半。「和歌山を過ぎたら、ずっと美しい海岸線の風景が楽しめるだろう」と思っていたが、行けども行けども深い山また山であって、遥かな昔「南紀の海は明るいぜ」と誰かに自慢されたその南紀の海は、ちっとも姿を現さない。

 

 それでも「紀伊田辺」という駅に接近したあたりから、その「南紀の海」が見えてきた。ふと晴れ間がのぞいて、その一瞬だけはマコトに明るいブルーの太平洋が望めたが、またすぐに梅雨の分厚い雲に覆われてしまった。

    (和歌山県串本、奇勝「海金剛」を訪問 4)

 

 別に串本で降りなくても、その手前の南紀白浜で降りてもよかったし、そのまま終点の新宮まで乗っていてもよかったが、大阪駅を出発する時からもうワタクシの頭の中には「串本節」の懐かしいメロディーが渦巻いていた。

 

   ここは串本 昔は大島 

   仲を取り持つ 巡航船 

   アラ よいしょ よーいしょ

   よいしょ よーいしょ よーいしょ

 

 今井君がまだ小学生の頃、昼のNHKテレビで民謡の番組が始まると、「串本節」は南紀の民謡の定番としてよく聞かされた。

 

 昭和の中期までは、「民謡」というジャンルが大きな位置を占めていた。日曜日の昼に、イヤイヤながら両親と一緒に「のど自慢」なんかを見なきゃいけなくなると、出場者の3割は「民謡」、しかもそのほとんどが東北地方の民謡だった。

 (和歌山県串本、もう1つの奇勝「橋杭岩」を訪問 1)

 

 すると伴奏も、いきなり尺八と三味線に入れ替わる。2023年から「NHKのど自慢」はカラオケになっちゃったんだそうだが、むかしむかしのそのむかしは、歌謡曲やポップスの時はピアノとアコーディオン、民謡なら三味線と尺八、みんなほとんどアカペラ状態で歌った時代が長かったのである。

 

「ピアノ伴奏は今井宏さん、アコーディオンは横森良造さん」と、担当のアナが嬉しそうに紹介する時代が長くて、かくいう今井君もずいぶん小学校で冷やかされた。

 

 同姓同名とは、いろいろクダらん悲&喜劇を招くもので、予備校講師になってからも

「今井宏先生は、東京女子大でイギリス史を担当していらっしゃるんですか」

「今井宏先生は、一橋大学法学部の教授なんですか?」

「今井宏先生って、実は衆議院議員なんですか?」

その他、ちょっと調べればいいものを、真顔で真剣に質問してくる代ゼミ生があとを絶たなかった。

 (和歌山県串本、もう1つの奇勝「橋杭岩」を訪問 2)

 

 小学生時代の「のど自慢」で慣れ親しんだので、ワタクシは今でも「串本節」、舟を漕ぐような身振りをしながら、今も上手に歌えるのである。他に「尾鷲節」「おてもやん」その他、どういうわけか東北地方以外の民謡が大好きで、子どもの頃はお風呂で連日、大声で何曲も歌い上げた。

 

 その串本にやってきて、駅前の閑散ぶりに一驚を喫する。飲食店もナシ、土産物屋もナシ、タクシーは2台止まっているが、別にお客を待つ様子もなし。「ビジネスホテル」の看板を出した3階建だか4階建だかの元旅館が1軒、あんまり宿泊客は多くなさそうである。

 

 その駅前から、10人ほどが乗れるマイクロバスが島中を案内してくれる。橋杭岩(はしくいいわ)と海金剛(うみこんごう)、串本の誇る2大奇勝にも連れていってくれる。串本から橋杭岩へ、橋をわたって大島の先端を周り、海金剛から串本駅前まで引き返すルートである。

(橋杭岩を見渡せるお店で、サザエの壺焼きを貪る。オイシューございました)

 

 ドライバーのオジサマと、仲良くなった。彼によれば、串本節に歌われた「仲を取りもつ巡航船」の運航は、もう30年も前になくなったんだそうだ。串本と大島の間に大きな橋ができて、船を利用する人が激減、船なんか運航しても、ちっとも儲からなくなった。

 

 いやはやそれは残念だ。どんなに便利でも「橋ができて船が廃止」というのは、地元の観光業にとっては致命傷だ。串本節を大音量で流し、地元のオバサマやオネーサマたちが揃いの浴衣で、何だか舟を漕ぐ手まねをしながら楽しげに踊ってくれるんじゃなきゃ、観光客はいまいち盛り上がらない。

 

 するとどうやら、いま「串本節」を朗々と歌い上げられる人間は、そんなに多くない。ドライバーのオジサマだって、「巡航船のことを覚えていらっしゃるなんて」とビックリなさっていた。

 

 もしかして、歌えるのは今井君1人か? 昭和の秋田弁をカンペキに使いこなせるのも今井、串本節に尾鷲節を歌いこなせるのも今井、やっぱり諸君、このワタクシに「重要無形文化財・オーラル昭和」の称号をいよいよ授与すべき時がきているんじゃあるまいか♡

 

1E(Cd) Eduardo Egüez:THE LUTE MUSIC OF J.S.BACH vol.2

2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 1/10

3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 2/10

4E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 3/10

5E(Cd) Bobby Caldwell:COME RAIN OR COME SHINE

total m154 y487  dd28437