Thu 230427 月は有明にて/いつか古文の先生に/浜松でうなぎ/津の大盛況 4352回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 230427 月は有明にて/いつか古文の先生に/浜松でうなぎ/津の大盛況 4352回

 ワタクシはあくまで英語講師であって、古文とか現代文とか、他教科についていろいろ申し上げれば、それはカンペキに領空侵犯であり領海侵犯であって、様々な方面から「強烈な不満と断固たる反対を表明」という恐ろしい反発を買いかねない。

 

 しかしまあその辺は許していただいて、今日の写真の1枚目を諸君、素直な心で眺めてくれたまえ。綺麗じゃないか、美しいじゃないか。3月7日の朝6時、名古屋マリオットホテルの最上階で目覚めたワタクシは、スマホのカメラしか持参しなかったことを心の底から悔いた。

 

「月は有明にて 光おさまれるものから」。西の空に低く傾いた早朝の満月が、光が弱まったせいで、かえって趣き深く眺められる。「これが名古屋じゃなくて京都だったら」みたいなことを言えば、きっと名古屋の人々の怒りを買う。名古屋だろうが京都だろうが、有明の月の趣き深さは変わらない。

 

 松尾バセオどんは「奥の細道」の冒頭部で、有明の月の美しさを記している。「弥生も末の7日、あけぼのの空 朧々(ろうろう)として」の直後、「月は有明にて光をさまれるものから、富士の嶺かすかに見えて、上野谷中の花の梢、またいつかはと心細し」、マコトに有名な一節につながる。

(月は有明にて光おさまれるものから。名古屋マリオットホテル、3月7日午前6時 1)

 

 しかし諸君、もちろんここで古文のセンセたちは思い切り自慢げに、より深い解説に踏み込むはずだ。

 

「実はこの一節、『源氏物語』の中にもありましてね」

「パクリとは言いませんが、やっぱり松尾芭蕉、彼より数百年も昔の平安女流作家に憧れていたんですかね」

受験生たちが「ふーん♡」「ふーん♡」「そうなんだぁ♡」と大いに感心する場面である。

 

 確か来年のNHK大河ドラマの主人公だ。紫式部どんのことも諸君、しっかり調べておきたまえ。長い長いスゲー長い源氏物語の序盤「帚木」、「雨夜の品定め」で有名な第2帖であるが、その中に松尾芭蕉どんがパクったというかパロッたというか、まあ間違いなくパロッたんだろうけれども、以下のような一節がある。

 

「月は有明にて、光をさまれるものから、影けざやかに見えて、なかなかをかしき曙なり。何心なき空の景色も、ただ見る人から、艶にもすごくも見ゆるなりけり」

 

 若き今井君は恐るべきナマイキ高校生だったから、「紫式部なんか大キライです」と高校の古文のセンセに食ってかかったりした。高1の時に大好きだった高久センセ(本名)が定年退職されて、高2の春からグッと若い高田センセ(仮名)が今井君の古文の担当になっていた。

 

 だって紫式部、「雨夜の品定め」はとにかくイカンよ。女子のニンニク臭に辟易して男子が逃げ出す話なんか、今井君の「臭活」じゃあるまいし、絶対に書かないでおくほうがよかったんじゃあーりませんか?

(月は有明にて光おさまれるものから。名古屋マリオットホテル、3月7日午前6時 2)

 

 諸君、古文と言ふものは、オジーチャンが教えるべき科目ではないだろうか。

 

 最低でも50歳、出来れば60歳か70歳、教壇に立つことすでに30年も40年も経過した優しいオジーチャンやオバーチャンが、その濃厚な人生経験の全てを凝縮して、桜や梅や若葉や青葉、雨や雪や雲や霧の美しさを、ほのぼのと若者に語りかける科目じゃないだろうか。

 

 今井君のお気に入りは、高1の時の高久清先生と、駿台で浪人していた頃の桑原岩雄先生。駿台には桑原センセ以外に小柴センセや久米センセもいらっしゃったが、3人ともみんな70歳どころか80歳に近い仙人のようなオジーチャンで、いやはやその滋味深い授業は今も忘れがたい。

 

 ワタクシも、もし「70歳」という大台を無事に超えるような幸運に恵まれたら、いつか必ず古文の先生になりたいのである。30歳代とか40歳代とか、そのぐらいの青二才のうちは、英語講師で結構。「どうすれば速く読めるか」「スラッシュリーディング」の類いで大威張りしていればいい。

 

 しかし諸君、「70歳」という夢のようなステージをもしも迎えられたら、何が何でも古文のセンセがいい。もちろん「漢文」という手もあるが、いやいや、その年齢に達した今井ジーチャンは、万葉集と古今集、能&狂言に与謝蕪村に井原西鶴、もし許されるなら江戸期の浄瑠璃の魅力をたっぷり青年たちに伝えたいと念願するのである。

(3月7日午前8時、名古屋駅新幹線ホームで「きしめん 住よし」のきしめんを満喫 1)

 

 ところでさっきの源氏物語であるが、「月は有明にて、光をさまれるものから、影けざやかに見えて、なかなかをかしき曙なり。何心なき空のけしきも、ただ見る人から、艶にもすごくも見ゆるなりけり」、現代語訳を掲載しておけば以下のようになる。

 

「月の光は弱くなってしまったけれど、面影はハッキリと見え、かえって趣きのある曙の空。無心なはずの空の様子も、それを見る人によって、美しくも悲しくも見えるものである」

(3月7日午前8時、名古屋駅新幹線ホームで「きしめん 住よし」のきしめんを満喫 2)

 

 3月7日、ワタクシは名古屋3連泊のお仕事を無事に終えて、午前の新幹線で京都に移動する予定。何故か朝6時に目覚めて、こんなに美しい弥生の有明の満月を眺めることができた。

 

 明け方に西の空に沈んでいく満月は、宵の口の東の満月とは完全に趣きが違う。見る間に光の勢いは衰えて、東から昇っていく強烈な朝の太陽に駆逐され、山の陰に沈む前にもうその輝きを失ってしまう。

 

 元来なら予備校講師などというものも、こんなふうに姿を消した方が潔いのかもしれない。しかし今の予備校の世界には「東から急速に昇ってくる太陽」みたいな優勢な新人がなかなか見当たらない。すると諸君、今井君みたいな西の満月が、いつまでもいつまでもピカピカ&テカテカしてなきゃいかんのだ。

(3月6日、浜名湖一周の後は浜松「丸浜」で漁協直営店のうな重を満喫 1)

 

 この前日の3月6日も、今井君はピカピカ&テカテカ、三重県の津市で光り輝いていた。何しろ我がポンポンの中には、お昼の浜松で貪ったウナギどんの滋養栄養がとぐろを巻いていた。

 

 浜松はうなぎの本場だから、有名店を探せばキリがない。しかも浜松ギョーザを我慢してうなぎ一本に賭けたのだ。ワタクシは意地でも旨いうなぎを貪ろうと虎視眈々、選びに選んで選び抜いたお店が「浜名湖うなぎ 丸浜」。「漁協直営店」とある。漁協のうなぎなら、もちろん品質は最高だろう。

(3月6日、浜名湖一周の後は浜松「丸浜」で漁協直営店のうな重を満喫 2)

 

 いやはや、上の写真を見てみたまえ。ホントに旨かった。今井君ほどの人生のベテランだ。天ぷらでも寿司でも、うなぎでもスッポンでも、その人生経験はマコトに深く豊かであって、例えば名古屋の名店「うな富士」が東京に進出し、その評判の高いのも熟知している。

 

 しかしやっぱり、本場で貪る本場の味は格別だ。生牡蠣は、広島で食べなきゃいかん。うなぎは浜松で、ジンギスカンは札幌で、活イカは函館か博多に唐津で、ハタハタとキリタンポは秋田で、春巻きは大阪か神戸で、地元の人々に敬意を払って貪らなきゃいかん。

 

 浜松の漁協うなぎに励まされて、夕暮れの今井君は三重県津市に向かった。名古屋駅から、近鉄ご自慢の特急「ひのとり」に揺られて1時間、思えば津を訪問するのはホントに久しぶりだ。

 

 津での公開授業は、主催してくれた塾の大教室。19時スタート、20時半終了、出席者は約100名。2023年3月はコロナによる「キャパ1/2ルール」のおそらく最後の月で、「1人あけ」を守るか守らないか、マコトに微妙な判断を迫られた。

(3月6日、浜名湖一周の後は浜松「丸浜」で漁協直営店のうな重を満喫 3)

 

 でもまあ諸君、どうやらこういうのも、中島みゆきどんみたいに「そんな時代もあったねと、いつか話せる日が来るわ」「あんな時代もあったねと、いつか笑って話せるわ」であって、だから今日もクヨクヨしないで、ワタクシも今日の授業に夢中になれたのであった。

 

 驚くじゃないか、中島みゆきの「時代」が発表されたのは1975年だ。ええっ、1975年? 「まわるまわるよ時代はまわる」「喜び悲しみ繰り返し」も何も、そこから間もなく半世紀。彼女のオールナイトニッポンを聴いていた若き今井君だって、さすがに古文を教えたくなる年齢に近づいてきた。

 

「別れと出会いを繰り返し」「今日は倒れた旅人たちも、生まれ変わって歩き出すよ」。実はワタクシ、この作品の編曲を担当していた「船山基紀」という人物にも思い入れが深いのであるが、まあその辺りはまた別の機会に書くことにしようじゃないか。

 (3月6日午後9時、三重県の津駅前で寂しい単独祝勝会)

 

 津での公開授業が無事に終了した後、ワタクシは名古屋に帰る近鉄特急を待つ1時間弱、津の駅前の居酒屋に駆け込んで、生ビールと日本酒をいただいた。別にアル中というわけではなくて、とにかく津での大喝采が嬉しくて、今井単独での祝勝会/懇親会を満喫したかったのである。

 

 ところが諸君、居酒屋を出て津の駅に戻って来ると、「さっきまで公開授業に出てました」という男子高3生5人組が、駅の改札前でワタクシを待っていてくれた。

 

 5人とも、津の名門・津高の諸君。「名古屋大志望です」「京都大志望です」「三重大医学部志望です」「大阪大志望です」「神戸大を志望しています」と明るく口々に叫ぶ諸君と一緒に、何枚もの写真に収まった。

 

 何を隠そうワタクシは、文武両道の公立校で頑張っている諸君が大好きなのだ。「固い握手」というのはまだ許されない時期であったが、まあとにかくみんなで写真に収まって、第1志望校突破を熱く誓い合ったのである。

 

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 5/10

2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 6/10

3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 7/10

4E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 8/10

5E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 9/10

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