Thu 230316 オーベルジュ豊岡/石油ストーブ/豊岡の大盛況/京都の節分を見に 4335回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 230316 オーベルジュ豊岡/石油ストーブ/豊岡の大盛況/京都の節分を見に 4335回

 2月2日、豊岡で宿泊したのは、「オーベルジュ豊岡1925」。むかしむかし、このあたりを大地震が襲い(1925年5月23日:北但大地震)、その震災からの復興を支えた地域銀行があった。その銀行の建物を改装して、今はホテルとして運営している。

 

 ここに宿泊するのは、これで3回目。それ以前はすぐ近くの城崎温泉に泊まっていた。志賀直哉が「城の崎にて」を執筆した「三木屋旅館」という老舗があるが、そのそばの「西村屋招月亭」に2回、夕食もとらず、温泉を楽しむ暇もなく、ただ公開授業のためだけに泊まったのである。

 

 しかし諸君、近いうちに書くけれども、コロナからの復活に伴って、日本全国どこへ行っても、宿泊代が驚くべき高騰を続けている。京都でも大阪でも、サイトを眺めると昨年の2倍近いお値段を提示しているところも少なくない。「西村屋」みたいな高級旅館を予約する勇気はとても出なかった。

 (オーベルジュ豊岡、2階ラウンジから1階ホールを望む)

 

 そこでワ今年もタクシは「オーベルジュ豊岡」を選択。オーベルジュなのに「夕食の提供はできません」とおっしゃる。だから、まあ安く泊まれる。「1晩4組限定」などというと、さぞかし高級かと思うが、値段もリーズナブル、他の泊り客はほとんど誰もいないから、マコトに静かな夜を過ごせる。

 

 問題は、「静かすぎる」ということである。大正時代の銀行の広大な石造りの建物に、宿泊しているのはおそらくこの日もただ1人。昔の重役室を改造した部屋があてがわれる。2月2日、深い雪が積もった豊岡の空気は痺れるほど冷たい。電気の空調だけでは凍え死にそうなので、古風な石油ファンヒーターが追加される。

(オーベルジュ豊岡。深夜の2階ラウンジから、無人の1階ホールを望む。ちょっとしたホーンテッド・マンションの雰囲気を楽しめる)

 

 その石油ヒーターが、マコトに灯油くさいのである。雪国育ちの今井君なんかには、この石油の匂いがたまらない。昔の雪国には、一家に3〜4台の石油ストーブがあって、毎朝ストーブのタンクに灯油を補充するのは、中高生男子のお仕事だった。

 

 むかしむかしの石油ストーブの主なメーカーは2社。「コロナ」と「トヨ」であるが、広い部屋には白い炎が暖かそうな「対流式」、小さめの部屋には丸い鉄の網が真っ赤に赤熱する「反射式」、今井君の大学受験は、6畳の和室の中の反射式石油ストーブと一緒だった。

(翌2月3日は、節分。朝早い電車で京都へ。天龍寺と聖護院と千本釈迦堂の豆まきを見にいく)

 

 高3の12月下旬、それまで全く受験勉強をしていなかった上に、医学部志望からいきなり文転を決意した直後、今井君は「朝3時から7時まで世界史」という計画を立て、目覚まし時計はキチンと午前3時にベルを鳴らして起こしてくれた。反射式の石油ストーブにも火をつけた。

 

 しかし肝腎の今井君が、世界史を勉強する気に全く慣れないのである。反射式ストーブの真っ赤に焼けた鉄網があんまりキレイなので、そこから目を離すことができない。赤い火を見つめたまま、4時がすぎ、5時がすぎ、とうとう6時が過ぎて、その朝の勉強は諦めた。

 

 そこで翌朝は、ストーブをつけないで世界史に取り組むことを決意。冷たい空気の中で世界史は一気に進み、ヨーロッパ史はギリシャ&ローマを経て、ピピンの寄進まで行っちゃった。どうもあの頃からワタクシは、石油ストーブの燃える温かなカホリに弱いようなのだ。

     (節分の天龍寺を訪ねる。詳細は次回 1)

 

 オーベルジュ豊岡のいいところは、「飲み放題」のラウンジである。冷蔵庫にソフトドリンクからビア、ハードリカーもウィスキー・ジン・ウォッカ・ブランデーその他なんでも揃っていて、2時間に1回ぐらいのペースで、係りの人が氷を新しいものに替えてくれる。

 

 何しろ「宿泊しているのは自分1人だけ」という恐るべきシチュエーションだ。4人がけのテーブルが3つ置かれた広いラウンジをワタクシが占領して、仕事前にはソフトドリンク、仕事後にはハードリカーが飲み放題。食べ物がないのが玉にキズだが、何しろ客は自分だけ、こんな楽しいラウンジは考えられない。

     (節分の天龍寺を訪ねる。詳細は次回 2)

 

 豊岡での公開授業は、駅前の商業施設「アイティ」最上階の大ホールで19時スタート。出席者約100名。「田舎町の素直な高校生」みたいなイメージを持ちがちだが、何しろ4年前にはここの校舎だけで「神戸大医学科3名現役合格」を果たしている。決して侮れない。

 

 地元の高校の先生がたも見学に来られる。だからますます油断はできないし、中3生も7名参加する。おやおや、ますます油断ができない。だって、使用するのは京都大学2022年の長文問題まるまる1問。中3生が7名も含まれる会場で、京大の長文を全員に100%理解させるのは、さすがに至難のワザだ。

     (節分の天龍寺を訪ねる。詳細は次回 3)

 

 2022年の京大はのテーマは「Anthropocene」。そんな単語、ジーニアス英和辞典には掲載されていない。ウェブ検索すればもちろん分かる単語だとしても、そこには「人新世」とあって、今度はその「人新世」が何なのか、高3生ばかりか高2・高1・中3生諸君に説明しなきゃいけない

 

 他にも「普通の辞書に出ていない」という単語が2つあって、いやはやマコトにゴツい長文だ。「こんなの、無理♨︎」と、100名の生徒諸君ばかりか、見学にいらっしゃった高校の先生方にまでソッポをむかれかねない。

 

 しかし現在の今井先生は恐るべき闘志の持ち主であって、こんなピンチに立っても、決して諦めることがない。

 

 詳しくは2022年京都大学の問題そのものをご覧になっていただきたいが、その「Anthropocene」、第1パラグラフの下から4行目に出てくるが、その直後に「In the age of man」とあって、それがそのまま脚注の役割を担っているのである。

     (節分の天龍寺を訪ねる。詳細は次回 4)

 

 90分後、その他さまざまなヤマ場が相次いで、中3生や高校の先生方まで含めて、参加者の知的好奇心は全開。最終盤「control of control of nature」というナゾの表現も、一方のcontrolを「支配」、もう一方のcontrolを「抑制」と訳し分けることによって、誰もがカンタンに理解できてしまう。「自然支配を抑制すること」というわけだ。

 

 授業終了、20時40分。10分ほど延長してしまったが、何とか全文の説明が完了した。生徒諸君の中にははるばる鳥取方面から電車でやってきた高校生もいて、これ以上ボヤボヤしていると、帰りの列車に間に合わない。

 

 まさか「だったら豊岡に泊まっていきなさい」というわけにもいかないから、まだまだいろいろ英語学習法などを熱く語り続けたかったが、止むを得ずここで授業を終了することにした。

 (天龍寺の豆まきを満喫した後は、湯豆腐。詳細は次回 1)

 

 こういうふうで、この夜の参加者諸君の継続率もまた極めて高かった。何しろ今井君が全国を行脚しているのは、予備校の営業マンとしてなのだから、外部から参加した一般生が、我々の内部生として継続してくれなければ何にもならない。どんなに爆笑が爆笑を呼んだとしても、継続率が低ければ、営業としては失敗以外の何モノでもない。

 

 そのあたり、この10年ぐらいでずいぶん大きな変化があった。10年前には、爆笑に次ぐ爆笑、15秒に1度の大爆笑がなければ、内部生としての継続を決意する生徒は少なかったが、2020年を過ぎる頃から、生徒諸君が求めるものが、爆笑の連続よりもむしろヤリガイのほうに変化したようなのである。

 (天龍寺の豆まきを満喫した後は、湯豆腐。詳細は次回 2)

 

 大満足の仕事の後は、すぐに「オーベルジュ豊岡」に帰って、孤独なラウンジの夜を満喫することにする。グラスに新しい氷をたっぷり入れて、ハードリカー類を遠慮なくいただくのである。

 

 何しろ広大な館内に他の客は存在しない。「氷を替えてくれる係りの人」も22時すぎに「帰ります」と挨拶に来てくれて、さあそこからはホントの孤独が待っている。大正時代に建てられた石造りの銀行の建物の中に、他者は一切存在しない、マコトにシュールなシチュエーションが楽しめる。

 

  ただし、「セキュリティはどうか?」と考えると、ふと首筋にヒヤッとしたものが走る。ちょうど特殊詐欺関連の強盗事件が多発していた頃で、こんな広い建物の中で1人、ちびちびハードリカーなんか飲んでいる場合ではないような気もするのである。

 

 23時半、石油ストーブくさい部屋に帰って、そろそろ眠ることにする。他者の存在の気配は、当たり前だが完全にゼロ。高3の冬をしみじみ思い出させてくれる石油ファンヒーターであるが、あの12月の早朝と違って、美しく赤熱した鉄網を眺めることはできない。

 (天龍寺の豆まきを満喫した後は、湯豆腐。詳細は次回 3)

 

 翌2月3日は、懐かしい高3の12月みたいに早起きして、オーベルジュ豊岡をチェックアウトする。チェックアウトする宿泊客のために、係りの人もわざわざ早朝から出勤してくれたようだ。

 

 豊岡駅発7時ちょい過ぎの特急「きのさき」に乗り込んで、京都に向かうのである。昨日の公開授業会場「アイティ」の近くのコンビニでオムズビを2個買い込み、車窓の雪景色を眺めながら、明太子のオムスビをしみじみ味わって行く。

 

 この日の朝は、豊岡から福知山までの雪景色に驚くほど深い濃霧が立ち込めて、はなはだ陳腐な言い回しではあるが「水墨画のような幻想的な風景」。赤熱したストーブの鉄網も美しいが、山と川と田畑の雪景色に濃霧、そこにオレンジ色の朝日がさしてくる風景も、思わず時間の経過を忘れる美しさだった。

 (天龍寺の豆まきを満喫した後は、湯豆腐。詳細は次回 4)

 

 ところで、「どうしてこんなに早起きして京都に向かうのか?」という問題であるが、2月3日・節分のワタクシは、「京都で節分の豆まきを見たい」と思い立ったのである。

 

 まず朝早く、天龍寺。昼ごろに、聖護院。午後からは、千本釈迦堂。有名な豆まきを3つもハシゴして、京都の節分を満喫しようという企画なのだった。

 

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 3/10

2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 4/10

3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 5/10

4E(Cd) Sonny Clark:COOL STRUTTIN’

5E(Cd) Miles Davis:KIND OF BLUE

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