Sun 230305 長旅の日々/オバサマの割り込みテクに驚嘆/盆梅を眺めに長浜へ 4331回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 230305 長旅の日々/オバサマの割り込みテクに驚嘆/盆梅を眺めに長浜へ 4331回

 前回の記事では「新幹線7時間」について、ついつい弱音を吐いたのであるが、東京から小倉まで4時間半、小倉から新大阪まで2時間半、そういう長旅に挟まれて、小倉での公開授業はわずか90分、仕事本体の5倍近くの時間を移動に費やすことになってしまった。

 

 もちろんコロナ前までの今井君は、1年に3回も4回もヨーロッパやら中南米やらに珍道中を連発し、そのたびに片道12時間のヒコーキに耐えていたわけだし、中南米ということになると、乗り継ぎまで含めて片道24時間を移動に費やすことも珍しくなかった。

 

 しかし諸君、新幹線の旅となると、世界珍道中の醍醐味はほぼゼロだ。東京から新大阪までの車窓は、ほぼ暗記している。深い居眠りをして、何かの物音でふと目を覚ましても、ホンの一瞬窓の外に視線を走らせただけで、今どの辺りを走行しているか判断がついてしまう。

 (1月30日、大雪の滋賀・長浜で「盆梅」を眺める 1)

 

 最近はその先も同じ状況になってきた。新大阪と広島の間でも「今どこなのか一瞬で分かっちゃう」、そう豪語できるぐらい、兵庫や岡山や広島の仕事が増え、同じような低山がどこまでもズラリと並ぶ中国山地の真っただ中で、「いま倉敷の5分前」「いま尾道のすぐ手前」「まもなく三原」と、何の苦もなく言い当てる。

 

 広島から先には、さすがにそれほどの自信はなくて、徳山の広大な工業地帯を眺めて工場萌えになるとか、関門海峡の暗闇でノスタルジーに浸るとか、まあその程度であるが、今年の春は博多が1回、小倉が2回、山口&広島も3回、この辺を何度も何度も行ったり来たりするから、沿線風景の記憶もまた、ギュッと深く我が灰色の脳細胞に浸透していくと確信する。

 (1月30日、大雪の滋賀・長浜で「盆梅」を眺める 2)

 

 さて「新幹線7時間」についての感慨を語っているうちに、ふと1月中旬の京都での「新快速電車10時間閉じ込め事件」の記憶が蘇った。

 

 ワタクシはあの閉じ込め事件の数時間前まで京都に滞在していたが、「まもなく10年に一度の大寒波が襲来」というニュースを見て、大慌てで京都からの脱出を図った。雪が降り始めた京都から新幹線に飛び乗ったのが13時、その直後に京都駅ホームは暴風雪に襲われ、夕暮れごろから「10時間の立ち往生」が始まった。

 

 あの時の新幹線の窓からの眺めはマコトに印象的、今も忘れていない。琵琶湖の向こうに遠ざかっていく比叡山の上空に凶悪な黒雲がかかり、京都の街に降りしきる雪が、熱帯のスコールのように見えた。比叡山のはるか彼方、比良山系の山々がまだ姿を見せていたが、それもやがて黒雲の向こうに消えた。

 (1月30日、大雪の滋賀・長浜で「盆梅」を眺める 3)

 

 あれほどの大雪では、必ずしもJR西日本の対応ばかりを責めるわけにはいかないのである。別に雪国マウントをするわけではあるが、秋田で18年も過ごしたワタクシでも、あれほど激烈な雪の吹き降りはあまり何度も経験していない。

 

 しかしどうしても「10時間」「コロナの中の満員電車」「車窓は真っ暗」「京都の駅を出た直後」「京都の駅に着く直前」「すぐ目の前に京都駅の灯りが見えている」というシチュエーションでの10時間は、さぞかし耐え難かっただろうと実感する。

 

 ワタクシは、これからまだ1ヶ月ほど、出来るだけヒコーキを我慢しなければならない。網膜剥離手術後の経過は「極めて良好」とのことなのだが、やっぱりついこの間まで左眼球内に、治療用ガスの気泡が残っていた身である。ヒコーキに乗って眼球が強烈に痛くなるのがコワい。

 

 だから、つい10日前には「新幹線で東京 - 博多往復」という離れワザを演ずることになったし、実は3月中にも「新幹線で東京から小倉まで」「新幹線で東京から新山口まで」「広島から金沢」「金沢から大阪経由で広島」、そういう激しいオデュセイアの日々が待っている。

 (1月30日、大雪の滋賀・長浜で「盆梅」を眺める 4)

 

 1月30日、前日の新幹線7時間の疲労も癒えたワタクシは、大阪ウェスティンホテルで午前9時に目を覚ました。翌31日には兵庫県西宮、2月1日は大阪京橋、2月2日は兵庫県豊岡、2月3日は神戸三宮、2月5日は静岡県清水、「線路は続くよ どこまでも」の日々は激しく続くが、1月30日だけポッカリと丸1日空いていた。

 

 そこで諸君、ワタクシは大阪駅から、「10時間閉じ込め事件」で今や極めて悪名高い「新快速電車」に乗り込み、滋賀県の長浜に向かった。今井君の人生で2度目の長浜、前回は長浜から船に乗って琵琶湖に乗り出し、竹生島に2時間ばかり滞在して、琵琶湖の向こうの近江今津までの旅だったが、今回は長浜そのものが目的である。

 (1月30日、大雪の滋賀・長浜で「盆梅」を眺める 5)

 

 大阪駅ホームで新快速を待っていると、「おお、聞きしにまさるね」というズーズーシーおばさまが、マコトに巧みな割り込みテクニックを披露してくれた。

 

 新快速の長い列のお隣に、その後でやってくる普通の快速電車の乗り口がある。おばさまは新快速の列には見向きもせずに、普通の快速電車の乗り口、そのPPでごくノンキそうにスマホをいじっていた。

 

 PPと書いてポール・ポジションと読むんだそうな。長蛇の列の人気飲食店なんかで「PPゲット」と言えば、ランチ一番乗り、ディナー一番乗り、まあそういう栄誉ある位置を指すらしい。

 

 しかし諸君、おばさまテクをナメたらアカン。まあ満員の新快速電車が大阪駅のホームに入ってくるやいなや、テクおばさまは何食わぬ顔で、真横の新快速の列に1歩、すかさず横移動。あっという間に「普通の快速」から、新快速の列のPPをゲットしちゃった。

 

 その横移動のあまりの見事さに呆気にとられ、誰ひとり文句を言う人はいない。別に特急料金を払っているわけでなし、「新快速、新快速」と偉そうに言ったって、所詮は普通電車と同じこと、下手をすれば10時間も閉じ込められる恐ろしい電車だ。

 

 だから「割り込みぐらいで文句や叱責を受けることはないだろう」「ケンカ口論に発展することはないだろう」「温かい関西人が、そんな東京人みたいなギスギスしたことは言わないだろう」「PPは横から脇からすかさずゲットするもの」、そういうことらしい。

 

 要するに確信犯であって、「マジメに粛々と新快速の列に並んでいるノロマな人間のほうが、たくましく生きるエネルギーに欠けているのだ」「たくましくなければ生きていけない」、そういう生き方を貫いていらっしゃったんだろう。

 

 しかし、どう言うんだろう、コロナの災禍を少しずつ脱出するにつれ、世の中にはこの種の人が目立ち始めた。昨日は満員の新幹線の中で1時間半、マコトに無遠慮な大声で世間話に興ずる30歳代男子2人組も目撃。手を叩いて爆笑を繰り返すヤカラである。

 

 昨年&一昨年、コロナの災禍の真っただ中では、人々は我慢してお互いに優しく気を配りながら生きてきたが、どうもこの頃は傍若無人な人が増えてきたようで、少なからず寂しくなる。

(盆梅展は、滋賀・長浜「慶雲館」で。国指定名勝である 1)

 

 さて琵琶湖の東岸・長浜であるが、冷たい北西風が吹き荒れ、朝からの氷雨が昼過ぎから雪にかわっていった1月30日、今井君はわざわざ長浜まで「盆梅展」を眺めに行ったのである。

 

「盆梅」と書いて「ボンバイ」と読む。盆栽ならもちろん「ボンサイ」であるが、梅の盆栽はどうやら特別扱いらしくて、長浜の由緒あるボンバイ展は、JR長浜駅から徒歩10分の「慶雲館」で開催される。

 

 その「慶雲館」自体が「国指定名勝」の指定を受けた、たいへんありがたい由緒ある建物である。1886年、明治天皇皇后両陛下がここにご滞在になった。

 

 その年京都にいらっしゃった両陛下が、大津の港から船で長浜に到着、長浜で鉄道に乗り換えるスケジュールだったが、「列車を待つ数時間の間に滞留なさる場所が必要」ということで、地元の名士・実業家である浅見又蔵という人が、私財を投げうってこの「慶雲館」を建てた。

(盆梅展は、滋賀・長浜「慶雲館」で。国指定名勝である 2)

 

 いやはやそういう由緒ある建築物であるから、盆梅見物はマコトに寒い。雪の残る中庭を眺めつつ、ブルブル震えながら盆梅を見て回る。日本のオジサマ&オバサマたちはマコトに風流なので、大阪駅で割り込みテクを披露するばかりが能ではない。

 

 ただし、ここでもやっぱり傍若無人なオジサマを何人も見かけるのである。何しろ「盆梅フォトコンテスト」も開催中。そうなると、例の高級カメラをぶら下げたオジサマたちが次から次へと押し寄せて、盆梅前のフォトスポットを占拠。いったん占拠してしまえば、もう意地でも動かない。

 

 ワタクシはフォトコンテストには全く関心がないので、スマホで数枚の写真を撮影した後は、長い廊下の展示場を2度3度と繰り返して見て回り、やがてあまりの寒さに辟易して「お抹茶コーナー」に退散。お抹茶を飲み干した後は急いで長浜駅に舞い戻り、フードコートで熱いお蕎麦をすすって、何とか暖をとることができた。

(米原からは、新大阪まで「こだま」。こういう時の日本酒はマコトに旨い)

 

 雪は、ますます激しくなっていく。「また10時間の閉じ込めかい?」と恐怖が先に立ち、もう盆梅のことはほぼ忘却して、大急ぎで長浜から米原までの各駅停車に飛び乗った。

 

 米原で、新大阪までの「こだま」に乗り換えて、これでひと安心。「こだま」「自由席」であるが、何しろお仕事はお休みの気楽な1日だ、ワンカップ形式の日本酒をポカリと開ければ、新大阪まではこりゃもう極楽だ。

 

 カメラおじさま、割り込みおばさま、大声&高笑いの男子2人組、そういう人々からひとまず遠く離れて、マコトに静かで穏やかで温かい「こだま」の座席から、滋賀の早春の雪景色を満喫できたのである。

 

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 3/6

2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES4/6

3E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 5/6

4E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 6/6

5E(Cd) LET’S GROOVE

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