Wed 221228 知力・体力・精神力は鍛えても、視力の鍛錬は困難だ/福岡の大盛況 4305回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 221228 知力・体力・精神力は鍛えても、視力の鍛錬は困難だ/福岡の大盛況 4305回

 しかし若い諸君(スミマセン、前回の続きです)、ぜひ気をつけたまえ。人間というものはマコトに老いやすい。知力・体力・精神力ともに、30歳代を過ぎればもう「つるべ落とし」の世界だ。

 

 記憶力だって、思考力だって、みんなつるべ落とし。「10歳代や20歳代の頃のあの自信に満ちた自分は何だったんだ」「早くからもっと努力するんだった」と悔しい思いをする。

 

 もちろん読解力・思考力・表現力・説得力あたりは、どうしても経験やら蓄積やらがモノをいうから、「滅多なことで若い者には負けんぞ」と、中年男が胸を張るのは当然だ。かく言う今井君もその一人。何しろ予備校講師だ、読解・思考・表現・説得、その辺りは誰にも負けない自信がいまだに残っている。

 

 しかしどんなに自信満々なオトナでも、どうしても衰えに勝てないものがある。それが諸君、驚くなかれ「視力」なのである。ワタクシみたいな近視もあれば、40歳を過ぎた頃から「老眼になっちゃった」と嘆く御仁も少なくない。

 

 白内障に緑内障、危険な病気も多種多様。確か「黄斑変成症」だったか、物の形が歪んでくる病気もある。電柱が「く」の字に曲がって見えるとか、人の顔が変に縦長に伸びて見えるとか、いやはや、なかなかたいへんだ。

(11月9日、神戸・須磨の海岸で「源平そば」をすする。年越しそばの代わりに掲載しておく。本文とはほとんど関係ありません)

 

 ワタクシの場合は、30歳になるかならぬかで右0.01、左0.1、近視がひどく進行するのと並行して、飛蚊症が激しくなった。透き通った細いヤツが1本とか2本とか、そんな生易しいものではなくて、前回も書いた通り、黒や茶褐色の太い毛糸みたいなのが数本、常に眼球の中を泳ぎ回っていた。

 

 すると諸君、視力ばかりか、気力まで萎えてくるのである。まず、空を見たくない。海も見たくない。山も雲も見たくない。だって、青い空にも、真っ白い雪原にも、葡萄酒色の海にも、黒や茶褐色の飛蚊がうようよしている。

(神戸・須磨の海岸で「敦盛そば」を追加する。これまた年越しそば代わりに掲載。ワタクシの食欲は、本来こういうレベルである)

 

 だから、海の旅もウンザリだし、むかし大好きだったスキーもスノボも願い下げだし、マルセイユやバルセロナやエッサウィラの海岸でも、何だか憂鬱な気持ちになる。ミュンヘンで大雪に見舞われた時なんか、せっかくの雪のニンフェンベルグ城で、眼球の中の黒い糸ばかりを追っていた。

 

 2020年以降はコロナのせいで全く海外に出ていないが、いま思い返せばこの3年、眼球の中の飛蚊のことを考えないで済んだぶん、むしろ幸せだったかもしれない。

(神戸・須磨で「源平そば」「敦盛そば」を貪った名店「敦盛そば」。平敦盛と熊谷直実の逸話の舞台は、すぐそこの海岸だ)

 

 この3年は国内の旅に徹し、特に2022年を振り返ってみると、来る日も来る日も関西に滞在して、夜の祭ばかり満喫していた。鞍馬の火祭りも見た。五山の送り火も拝ませてもらった。東大寺二月堂のお水取りも間近で目撃した。夜の祭りなら、眼球を泳ぎ回る黒い毛糸を見なくて済むのである。

 

 こんなふう気力が衰えると、本を読む気も失せるし、ましてや本を書く気力なんか完全に萎えてしまう。こうして気軽なブログばかり4300回以上も書いてきたのは、ちゃんと本を書く気力の減退の結果かもしれない。

 

 アタシャ諸君、15歳の春からずっと、本を書きたくて&書きたくてウズウズしていた。大学学部3年の秋、ゼミの担当教官が「今井君、キミは一生、論文を書いて生きてみないかね」と声をかけてくれ、それが新進気鋭の有望な学者だったものだから、今井君は朝ドラのヒロインよろしく高く高く舞い上がった。

    (11月9日、須磨寺「敦盛首塚」を訪ねる)

 

 しかしまずゼミの人間関係で挫折し、ゼミで挫折すれば「論文を書いて生きていく」という舞い上がった夢は、ものの見事に地表に叩きつけられて崩壊し、するとフツーに就職するしかなくなって「電通」に就職し、ここでもまた挫折して地表に叩きつけられた。

 

 フツーに就職しても文章ぐらい書けるだろうとタカをくくっていたのだが、諸君、正直言って気力も体力も精神力もハッキリ「無理」。そこで「予備校講師ぐらいなら何とかなりそう」と甘いことを思いついて、河合塾やら駿台やらで仕事を始めてみた。

 

 ところが本来の目的をついつい忘却し、思い切り授業に励んでみたら、思いがけないほどの人気が出ちゃった♡ すると何しろお調子者だから、人気が出れば超人気講師♡を目指し、超人気講師♡の一角に加えてもらうと「一番じゃなきゃイヤだ」と駄々をこね、いつの間にか大ベテランとしてこの世界に堂々と居残ってしまった。

(長く滞在した関西を離れるにあたり、大阪なんば地下街「おか長」を訪問する)

 

 この10年、いささか自由な時間も持てるぐらいになって、「さてそろそろ、もともと目指していた世界に移行を試みるか」と1つ2つ深い溜め息をつき、いざMac君の前に座ってみると、眼球の中の黒い毛糸がどんどん増え始めた。

 

 知力・体力はすべてパンパン、ついでに「経済力」「生活力」なんてものも、それなりに食っていける程度には成長して、「さあ書くぞ♡」と座り直したその瞬間、今日のテーマ「視力の衰え」に直面したわけである。

 

 2010年11月、右目の飛蚊が強烈になって実際に視力が衰え、オロオロしているうちに網膜剥離を発症した。公開授業を3回も4回もキャンセルしていろんな人に迷惑をかけた。手術後1週間ですぐに復帰したが、本当に申し訳ないことをした。当時の生徒諸君は、今では30歳になっている(今井君の速攻闘病記)。

(大阪なんば地下街「おか長」のおでん。おいしゅーござました)

 

 すると驚くなかれ、「ネコ力」まで衰えるのだ。ワタクシのお目目を心配したせいか、純白のニャゴロワが腎不全を発症して「余命100日です」とまで言い渡された。

 

 ニャゴロワは日々の点滴に耐えながら、その後9年も生き抜いたのであるが、キジトラのなでしこまで腎不全に。視力の衰えは、気力の萎縮につながり、ネコ力さえも減退してネコたちを守ることができなくなり、2匹とも今では天国の住人というか、天国の住ニャンだ。

 

 17年も一緒に暮らしたネコたちがいなくなると、ますます気力は減退して、お恥ずかしい話だがネコたちの写真を目にするたびに涙が止まらず、泣いて暮らしているうちに、その泣きすぎがいけなかったのか、2021年10月、右目の網膜に付着物ができて、その除去のために硝子体手術が必要になった。

 

 ようやく右目が元通りになり始めた今年の春ごろから、今度は左目の飛蚊症が「これはどうやら網膜が危ないな」というレベルになってきた。もう一度言うが、空を見るのもイヤ、海を見るのもイヤ、山も雲もイヤ、我慢できるのは夜の火祭りぐらい、そういう状況で11月まできた。

(大阪なんば「おか長」での大好物は、何と言ってもジャガイモのおでん。今年の夏、隣の席のオジサマが召し上がっているのを見て、意地でもナンボでも貪りたくなった)

 

 11月12日、福岡で公開授業。午前10時からのスタートだったので、前日11日のヒコーキで福岡入りした。今回の左・網膜剥離に至る直接的な症状に気づいたのは、羽田を飛び立ったヒコーキが福岡に近づいて高度を下げ始めたあたりだった。

 

 左目の、そのまた一番左のスミあたりに、今までの飛蚊とは明らかに性質の違う鋭い裂け目を感じたのである。大きくはないが鋭角的だ。何度まばたきをしても、裂け目が解消しない。福岡に到着して、空港の長い通路を出口に向かって歩きながら「どうやらこれは手術だな」と覚悟を決めた。

 

 あまりにも憂鬱だったので、せっかくの博多の夜なのに、夕食はセブンイレブンのレタスサラダとサンドウィッチと赤ワイン1本で済ませた。いつもなら中洲の「河太郎」で活イカの刺身を2ハイ分も貪るのに、サラダぐらいしか飲み込めない自分に自分で恐れ入った。

(大阪なんば「おか長」の鯛かぶと。これで380円とは、驚きの世界じゃないか)

 

 福岡の会場は、九州産業大付属高校の階段教室。出席者、約200名。明け方から雷を伴う激しい雨が降ったが、それでも予定通りの200名がキチンと勢揃いしてくれた。

 

 面白いもので、開始の時刻には雨も止み、授業さえ始まってしまえば今井君のココロもすっかり明るく晴れて、視力の心配もすっかり吹き飛んだ。とにかく今井には授業をさせておけばいい。授業をしている限り、心臓が止まっても生き続ける類いのおかしなしぶとい生き物なのだ。

 

 ところが諸君、授業が終わって、激しく熱い拍手が湧きあがって、帰りのクルマに乗り込んだ途端に、今井君は一気にしょんぼり、すぐにまた眼球内の大きな黒い軟体動物と鋭い亀裂のことばかり考えて、博多ラーメンをすする気力もなくしてしまった。

(ついでだから新大阪駅地下「どん」で串カツも数本ワシワシやっていく。眼球内の飛蚊さえ忘れれば、食欲はナンボでも湧き上がってくる)

 

 博多の駅に到着して、13時。翌日の広島での公開授業に備え、この日のうちに広島に移動する行程だ。博多駅ナカの飲食店街をブラブラ歩いてみたが、さすが日曜の昼だけあって、どこの店も超満員、ラーメン屋なんか、どこもみんな長蛇の列が出来ていた。

 

 困り果てたワタクシは、駅ナカ飲食店でたった1軒ガラガラ状態の焼き鳥屋さんのカウンター席にへなへな、ほとんど倒れこむように腰を下ろした。

 

 注文したのは、まず生ビール、また生ビール、続いて日本酒を2合。それでおしまいにした。焼き鳥屋で、突き出しのポテサラだけ食べて、他には何一つ注文しなかった。視力の衰えは、気力と食欲の衰えを併発し、こんなふうにして人は一気に衰えていくのかもしれない。

 

1E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE

2E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM

3E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS

4E(Cd) Kremer:MOZART/VIOLINKONZERTE Nos. 2 & 

5E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.1

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