Sun 221120 大河ドラマの歴史とともに/鞍馬の火祭り、いよいよクライマックス 4297回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 221120 大河ドラマの歴史とともに/鞍馬の火祭り、いよいよクライマックス 4297回

 こんなに長く人生を生きていれば、例えばNHK大河ドラマの類いでも、のべ視聴回数が驚くべき数字になってしまう。

 

 今までいったい何人の明智光秀が「敵は本能寺にあり」と絶叫したか。何人の織田信長が「うつけもの!!」と嘲笑され、「人生五十年」の舞を舞い終えて桶狭間に向かったか。何組の坂本龍馬と勝海舟が激論をかわし、何グループの近藤と土方と沖田が、抜刀して勤皇の志士に襲いかかったか。

 

 いやいや、何組の平清盛と後白河法皇が互いに裏切り&裏切られ、何人の上杉謙信が白馬を駆って孤独な武田信玄を襲い、何人の武田信玄が手に握りしめた軍配で謙信の剣を打ち払ったか。

 

 淀君・秀頼・真田幸村、春日局・柳生宗矩・徳川家光、浅野内匠頭・吉良上野介・大石内蔵助、「殿中でござるぞ」「吉良の屋敷の絵図面が手に入りました」「なにぃ?吉良の屋敷の絵図面が手に入ったとぉ?」、大河ドラマをボンヤリ眺めているだけで、日本史の勉強なんかちっとも必要なくなった。

(10月22日夜、いよいよ鞍馬の火祭りのクライマックスだ 1)

 

 そして諸君、何と言っても義経&弁慶ペアである。五条大橋の出会いから、平泉に一ノ谷、屋島に壇ノ浦、大物浦に吉野の山に安宅の関、再び平泉に衣川に高館に「弁慶の立ち往生」、いやはやカンペキに暗記して、そろそろ食傷しそうな腹部膨満感を感じる。

 

 そんな大河ドラマ膨満感の症状なんか全く感じていなかったのは、遥かな昔、「天と地と」「国盗り物語」「新平家物語」あたりまでであって、あの頃は上杉 vs 武田の対決も、清盛 vs 後白河のバカシアイも、ウツケモノのパワハラも裏切りもの光秀の懊悩も、マコトに新鮮に眺めることができた。

(10月22日夜、いよいよ鞍馬の火祭りのクライマックスだ 2)

 

 初めて源義経と弁慶の物語を眺めた時、義経を演じていたのは尾上菊之助、弁慶を演じたのは緒形拳。尾上菊之助とは、現・尾上菊五郎であり、緒形拳とは緒方直人のパパであって、いやはやあれから激しい世代交代が続いたのである。

 

 伝説の大河「源義経」については、すでにこのブログでも何度か紹介したはずであるが、原作:村上元三、音楽:武満徹。最終回、平泉高館の弁慶立ち往生の場面は、今でもYouTubeでキレイに眺めることができる。

 

 無数の矢に射抜かれて全身血まみれの弁慶に、「死してなお、我を守るか」と慨嘆する義経。緒形拳の弁慶があんまり迫力がありすぎて、幼い今井君は年末から年始にかけ1人でてトイレに行けなくなった。

 

 同じようにトイレに行けなくなったのは、「竜馬がゆく」の年の年末年始。北大路欣也の坂本龍馬がやっぱり血まみれで「脳をやられた。もう、いかん」と吐き捨てるように呟いて、絶命する。昔の大河ドラマの最終回は、12月最終週の日曜日。そこから年始にかけて、夜中のトイレはマコトに恐ろしかった。

(10月22日夜、いよいよ鞍馬の火祭りのクライマックスだ 3)

 

 それにひきかえ、大河ドラマ「第1回」は今も昔もたいへん華やかである。ヒーローは、まだ若い。というか、将来を嘱望される子役である。華やかで重厚な脇役陣がビシッとドラマを固め、最近の朝ドラみたいな学芸会モドキに陥る心配は全くない。

 

「重厚な脇役陣」とは、高橋幸治・フランキー堺・藤村志保・浪花千栄子・三田佳子・浜木綿子・片岡仁左衛門・佐藤慶・田村高廣・中村富十郎・渡辺美佐子・加東大介・滝沢修志村喬・山田吾一・高松英郎・宇野重吉・新珠三千代・樫山文枝・有馬稲子・芥川比呂志・三田和代・花澤徳衛・香川京子・吉行和子・佐藤友美・西村晃・岡田英次など、錚々たる面々。これで失敗するはずがない。

 

 幼い今井君が初めて面白いと感じた大河「源義経」の第1回は、サブタイトルが「鞍馬の火祭り」。五条大橋での弁慶との出会いはまだまだ先のこと、平家の追っ手を逃れ、鞍馬の山中で天狗の指導を受けていた牛若丸の物語であった。

(10月22日夜、いよいよ鞍馬の火祭りのクライマックスだ 4)

 

 あれから幾星霜、幼かった今井君も手に負えないほど巨大なサトイモに成長した。「そろそろ実際の鞍馬の火祭りを眺めに行きたいな」と熱望し、しかしその強烈な混雑ぶりに恐れをなして尻込みしているうちに、2020年にコロナの暗黒の世界になり、3年連続して鞍馬の火祭りは中止に追い込まれた。

 

 2022年夏、「鞍馬の火祭りを3年ぶりにフルで開催いたします」との情報が入った。祇園祭の山鉾巡行もフル開催、岸和田のダンジリも、徳島の阿波踊りもフル、ならば鞍馬の火祭りだってフルでいいじゃないか。

 

 2022年のワタクシは、「海外に出られない分を、全て京都&奈良で取り返してやる」という勢い。梅も桜も藤もアヤメもカキツバタも、遠慮会釈なしに見て回った。

 

 つい2日前には「摩利支尊天のお火焚き」だって至近距離で目撃。21日金沢での公開授業から帰ったばかりだが、仕事の疲労なんか一切無視して勇猛果敢、1022日夕暮れの鞍馬山に向かったのである。

(10月22日夜、いよいよ鞍馬の火祭りのクライマックスだ 5)

 

 鞍馬行き叡山電車は、出町柳から12分おきに出発するが、何しろ3両編成の超満員だ。ワタクシは終点の鞍馬まで、満員電車の一番前、運転台のすぐ後ろに陣取って、紅葉の始まった山道を登っていく電車の車窓を満喫させていただいた。

 

 鞍馬に到着、17時。何しろ着々と12分おきに運ばれてくる大群衆だ。すでに歩行もままならない大混雑。主催者の発表では6000人ということになっているが、ワタクシの感触としては数万、その数日後に起こった韓国ソウルでの悲劇が、ここで起こっても不思議ではないぐらいの押しあい&へしあいが始まっていた。

 

「立ち止まってはいけません」というルールになっている。火祭りを眺めに来た人々は、時計回りの回遊方式で「常に歩いていなければならない」「写真を撮る場合にも、立ち止まらずに歩きながら撮影してください」と、京都府全域から動員された膨大な数の警察官の皆様が目を光らせている。

 

 それでも、人々は立ち止まる。「時計回りにスムーズにクルクル回遊」、そんな都合のいい水族館のお魚みたいなことにはちっともならない。8割から9割の人々がスマホ撮影、1割から2割の人々は高級カメラに夢中である。

 

 高級カメラを構えた中高年オジサマたちが最も「始末に負えない」タイプの迷惑な存在であって、いきなり脚立を立てようとするは、周囲の人々を押しのけて巨大レンズを被写体に向けるは、警備の人々のマジメな努力をあざ笑うかのような乱暴な行動に終始する。

(10月22日夜、いよいよ鞍馬の火祭りのクライマックスだ 6)

 

 祭りの起源は天慶3年(940年)というのだから恐れ入る。「天慶」ということは、あの「承平天慶の乱」の真っただ中だ。平将門・藤原純友・平貞盛・田原藤太。それこそ1976年の大河ドラマ「風と雲と虹と」の世界。平将門を加藤剛、藤原純友を緒形拳、平貞盛を山口崇、田原藤太を露口茂が演じた。

 

 朱雀天皇の詔により、京都御所から鞍馬に移された「由岐神社」であるが、神社の遷宮の際に鴨川の葦を使ってタイマツを作り、篝火を焚いて遷宮の行列が行われた。鞍馬の火祭りは、そこから始まった。

 

 18時、山の日暮れは早い。「神事に参らっしゃれ」との神事触れの合図で(写真下)、鞍馬の集落の各戸に積み重ねられた篝火に一斉に点火される。御旅所の大きな篝火にも火が入り、まず少年たちの小タイマツに点火、続いて青年諸君の中タイマツに点火、最後にオトナたちの巨大タイマツにも火が点けられる。

(神事触れ役が「神事にまいらっしゃれ」と触れ回る。いよいよクライマックスだ)

 

 このとき鞍馬の人びとは、「サイレイ、サイリョウ」「サイレイ、サイリョウ」「サイレイ、サイリョウ」、そう果てしなく繰り返し囃しながら練り歩く。そのあとについて歩く観光客の耳にも、いつの間にか「サイレイ、サイリョウ」「サイレイ、サイリョウ」がこびりついて離れなくなる。

 

 打ち鳴らされる太鼓もエキゾチックだが、その太鼓に連れそって果てしなく鳴らされる鉦の音が、まだたまらなく魅力的だ。

 

 10世紀の中央アジア、中国大陸は「唐」から「宋」への移行期であるが、その中国の遥か西のかなた、いわゆる西域文化の異国のカホリが、21世紀の鞍馬の鉦の音に深く染み込んで、「どうしても深夜までこの鉦の音を聴き続けていたい」と思わずにいられなくなっていく。

(10月22日夜、いよいよ鞍馬の火祭りのクライマックスだ 7)

 

 しかし諸君、火祭りに酔いしれて鞍馬の集落を延々と時計回りしながら22時近く、「そろそろ京都に帰らなきゃ」と、みんな悲しく気がつき始める。叡山電車の終電は、この夜に限って24時近くまで延長されてはいるが、もしもその終電に乗り遅れれば、翌朝の始発まで鞍馬での野宿を覚悟しなければいけない。

 

 いや、別に鞍馬での野宿だって構わない。火祭りのクライマックスはこれからだ。23時、24時、午前1時、火祭りの最高潮はまだこれからだ。このまま鞍馬の人びとと一緒に午前1時や2時まで盛り上がれば、「野宿」と言ったって、始発電車まで3時間か4時間の我慢に過ぎない。

 

 もし今井君があと15歳若ければ、鞍馬の人々と深夜&早朝まで酒を酌み交わして語り合い、ギュッと熱く仲良くなって、翌朝どころか翌日の昼まで盛り上がり、ついでに翌日の朝食やら昼食までご馳走になって、さらにビールの3本や4本、地酒も4合だって5合だって決して臆するものではない。

(10月22日夜、いよいよ鞍馬の火祭りのクライマックスだ 8)

 

 しかし諸君、かつての豪傑イマイも、今はさすがに大ベテランになりすぎた。無数の火の粉が散乱する激烈な祭りに酔い、「サイレイ、サイリョウ」の声にも酔って、そろそろホテルの寝床が恋しくなった。

 

 来年の鞍馬の火祭りを目指す諸君、気をつけたまえ。帰りの叡山電車は、ディズニーの超人気アトラクション並みの混雑だ。列の最後尾に並んでから、電車に乗るまでに1時間近く、目の前の満員電車を3本も4本も見送らないと、乗車することはできない。

 

 ワタクシが乗り込んだ満員電車は、出町柳まで30分ちょい。火祭り見物で疲れ切った観光客の多くが、つり革につかまったままどんどん意識を失っていくありさまだった。そりゃそうだ、火祭りの開始からすでに4時間半、あの大混雑の雑踏を、みんな時計回りで延々と歩き続けたのだ。

 

 かく言う今井君は、大混雑の出町柳の駅前でマコトに巧妙にタクシーをゲット。堀川中立売のブライトンホテルにスムーズに帰り着いた。ホテル至近のコンビニで購入したのは、ヨーグルトとレタスサラダとホテトサラダ。いやはや何とも健康的な今井のサラダ生活は、この日の夜からスタートしたのである。

 

1E(Cd) Casals:BACH/6 SUITEN FÜR VIOLONCELLO 1/2

2E(Cd) Casals:BACH/6 SUITEN FÜR VIOLONCELLO 2/2

3E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 1/6

4E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 2/6

5E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 3/6

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