Thu 221110 大阪に滞在中/平和な神社に法螺貝の音/摩利支尊天に猛烈なケムリ 4292回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 221110 大阪に滞在中/平和な神社に法螺貝の音/摩利支尊天に猛烈なケムリ 4292回

 現在、大阪に滞在中。今回の関西滞在は今日まで、夕方に帰京する。明日1日だけ東京で大人しく過ごして、土曜日からまた福岡・広島・また広島、続いて高知・札幌、晩秋というか初冬というか、激しい旅の日々が続く。

 

 今回の大阪滞在は、たった3日間。あっという間だった。11月7日に大阪に到着して、7日夜は国立文楽劇場で夜8時半まで文楽、その後は深夜まで法善寺横丁でカモ鍋をつついた。

 

 8日は京都・伏見大社の火焚き祭りを眺め、ついでに狂言を2本見て、名物うずら料理と堪能した後は、滋賀県草津で公開授業。9日は兵庫県須磨の海岸を散策。須磨寺と須磨浦公園を満喫し、名物・敦盛蕎麦をすすって、19時から京都駅前で公開授業。すべての詳細は12月中のブログに記す予定である。

(10月20日、京都「摩利支尊天」でケムリがもうもうと立ち上った。あーあ、取り返しのつかないことになっちゃった)

 

 さて10月中旬の京都滞在の話に戻るが、10月16日から23日、1週間にわたる京都滞在の記録も、ようやく終盤に近づいた。

 

 20日、船岡山の建勲神社で大ポカをやり、楽しみにしていた船岡大祭が「昨日でしたよ」と告げられてしょんぼり、その後のうどん屋でも盛り上がりはイマイチ。祇園のゑびす神社に取って返して「20日ゑびす」に臨んだものの、これもまたマコトにスロー、「どうやら今日はダメな1日かな」と諦めて、ホテルに引き返すことばかり考えていた。

 

 ところが、まさにその時のことである。しょんぼりしていたワタクシの背後に、何やら異様に盛り上がった男子集団が接近する気配があるじゃないか。あろうことか、ホラガイを吹きならす音さえ聞こえる。

 

 ホラガイとは諸君、あまりに物騒だ。平家物語でも何でも、ホラガイとは「戦闘開始」の宣言である。

 

 明治大正昭和の日本では、ホラガイの代わりに「進軍ラッパ」「突撃ラッパ」と言ふものを吹きならすことになったが、平安末期から室町後期に到るまで、ホラガイこそまさに「進撃開始!!」「何でもいいから突っ込め!!」「何も恐れるな」「進まば極楽浄土♡引かば無間地獄」という、マコトに無責任な命令であった。

(京都ゑびす神社前「かぎ甚」のえびす焼き。マコトに平和なホンワカ世界である 1)

 

 20世紀中盤には、甲子園の応援にも進軍ラッパ&突撃ラッパが定番だった。レフト前やライト前の地味なヒットで1塁にランナーが出ると、応援団からまずは進軍ラッパ、それから3&3&7拍子、高揚したブラスバンドの演奏はその後だった。

 

 1990年代には、甲子園の応援から進軍ラッパが一時消滅した。日清&日露戦争から太平洋戦争、大陸での血塗れの苦闘の記憶が生々しすぎて、かつて歩兵隊に絶望的な突撃を敷いた進軍ラッパや突撃ラッパを、真夏の甲子園で演奏することを人々は自発的に控えたのである。

(京都ゑびす神社前「かぎ甚」のえびす焼き。マコトに平和なホンワカ世界である 2)

 

 しかし2010年を過ぎるころから、進軍ラッパと突撃ラッパが甲子園の応援に復活し始めた。ワタクシはこのブログですでに何度か、突撃ラッパの類いの復活を諌めたことがある。歩兵隊の絶望的突撃、そのあまりに悲しい記憶が残っているラッパを、軽々に復活させるべきではないと信じるのだ。

 

 ホラガイにしても突撃ラッパにしても、要するに「死ぬことを恐れるな」「死はこわくない」「人間は誰でも一度は死ぬんだ」、最前線から程遠く、自らに危険の及ばない位置をキープした総大将の命令で吹き鳴らされる、無責任きわまりないシロモノである。

(京都ゑびす神社前「かぎ甚」のえびす焼き。マコトに平和なホンワカ世界である 3)

 

 ワタクシも一度、ホンモノの法螺貝を手にしたことがある。確か京都・聖護院の渡り廊下に法螺貝が展示してあって、「ご自由にお試しください」みたいな貼り紙がついていた。

 

「ご自由にお試しください」と言われて、それでも引っ込み思案になっているのは「男がすたる」。男がすたっちゃったらやっぱり情けないから、今井君はマコトに積極的に法螺貝を手に取り、思い切り吹いてみた。しかし悲しいじゃないか、聖護院の法螺貝はウンともスンとも言ってくれなかった。

 

 法螺貝を吹いて、その法螺貝がウンともスンとも言ってくれなければ、やっぱり男がすたる。「オトコがスタル」とは具体的にどういう状況を指すのか明確には分からないが、あの時の今井君はやっぱり「オトコがすたっちゃった」と言ふ極めて抽象的な悲哀を感じ、悄然と聖護院を後にしたのだった。

(ゑびす神社の集結する古式ゆかしい男子集団。何やら危険な雰囲気を感じないか? 1)

 

 10月20日午後1時、そのホラガイがまさに今井君の背後で元気に吹きならされた。振り返ると、「旅の衣は鈴懸の」山伏ふうなスタイルの男たちが十数人、錫杖をじゃんじゃん地面に打ち鳴らしつつ、我が京都ゑびす神社めがけて接近しつつあった。

 

 すでに何度か写真でも示した通り、ゑびす神社は高島屋と大丸の金城湯池であって、「お買い物は高島屋」「お買い物は大丸」、赤や白の高島屋ちょうちんと大丸ちょうちんが境内を埋め尽くす、マコトに平和な神社である。

 

 鳥居の前には、なべ料理の名店「きんなべ」もあれば、本日の写真に示した優しいお菓子「えびす焼き」で有名な「かぎ甚」もある。こんな平和な世界は他にありえないぐらいの一角である。

(ゑびす神社の集結する古式ゆかしい男子集団。何やら危険な雰囲気を感じないか? 2)

 

 そんなホンワカした神社に乗り込んでくる山伏スタイルの軍団、勇ましい錫杖にホラガイとは何事であるか。やがて勢揃いした山伏軍団は、ゑびす神社本殿の前に立ち並び、何だかフンジャラ&モンジャラ、マコトにありがたそうなお経だか呪文だかを唱え、そのお経だか呪文だかでまたいっそう気勢を上げて行進を再開した。

 

 彼らの向かった先は、ゑびす神社の斜向かい、「摩利支尊天」のたくさんのノボリが、折からの西風にヒラヒラ激しくはためいているお寺。正式には建仁寺の塔頭「禅居庵」、1333年、鎌倉幕府の滅亡と後醍醐天皇「建武の新政」の年に創建された。

(ゑびす神社の集結する古式ゆかしい男子集団。何やら危険な雰囲気を感じないか? 3)

 

 摩利支天とは、仏教の守護神・古代インドの女神マーリーチが元である。太陽の炎を神格化したマーリーチが、中国語からさらに日本語に転訛して、「まりしてん」という発音になったんだそうな。

 

 したがって摩利支天は、太陽の炎と同様に変幻自在。その進路を妨げられることなく、光の速さで一直線に突き進む。その猪突猛進ぶりから、開運&勝利の御利益があるとされ、毛利元就・楠木正成・前田利家・大石内蔵助、摩利支天を信仰cいた中世の有名人は少なくない。

 

「ここ一番」という一瞬に運を開き、その人のもつ本来の能力を発揮させてくれる。勝利を願う受験生やスポーツ選手が多く参拝。いいじゃないか&いいじゃないか。来春の初詣にいいじゃないか。猪突猛進のイノシシの勢いを、諸君、今の日本の若者すべてが身につけるべきだと信じる。

(ゑびす神社の集結する古式ゆかしい男子集団。何やら危険な雰囲気を感じないか? 4)

 

 10月20日、このイノシシのお寺に集結した山伏スタイル軍団が、いったいどんなことを始めたかについては、今日の写真の1枚目をもう一度眺めながら、とりあえず推測してくれたまえ。

 

 もうもうと立ち上がる激烈なケムケム。やがて当然のように立ち上るであろう巨大な紅蓮の火柱の予感。猪突猛進のお寺の真ん中で「やっちまったな」「もう取り返しはつきそうにない」「男子の集団って、どうしてこうなんだ?」、そういう激しいお祭りが、いま始まってしまったのである。

 

1E(Cd) Festival International de Sofia:PROKOFIEV/IVAN LE TERRIBLE

2E(Cd) Schüchter:ROSSINI/DER BARBIER VON SEVILLA

3E(Cd) Cohen:L’HOMME ARMÉ

4E(Cd) Vellard:DUFAY/MISSA ECCE ANCILLA DOMINI

5E(Cd) Oortmerssen:HISTORICAL ORGAN AT THE WAALSE KERK IN AMSTERDAM

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