Tue 221025 四人子連れママの「先生ですか?」/京都即成院で二十五菩薩お練り 4283回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 221025 四人子連れママの「先生ですか?」/京都即成院で二十五菩薩お練り 4283回

 気がつけば、信じがたいほど長く予備校講師をやってきたのであって、「まさかと思いますけど、今井先生ではありませんか?」と、日本国中で声をかけてくれるモト生徒の年齢層も、マコトに多岐にわたるようになった。

 

 10月11日、親知らずを抜いてもらった直後の痛々しい今井君に声をかけてくれた人は、ゴマシオ頭の立派なオジサマで、部下の若手たちをたいへん優しく指導しながら、地下鉄構内を闊歩していらっしゃった。

 (10月16日、京都・即成院「二十五菩薩お練り供養」 1)

 

 そうかと思えば、京都ウェスティンホテルのロビーで、勇敢にも「今井先生ですか?」と追いかけてきてくれた人は、何と4人もの子連れママ。上の子2人は女子、下の子2人は男子だった。

 

 男子2人はまだ園児と乳児であって、10月22日、時代祭の見物で疲れ果てたらしく、ようやく帰ってきた高級ホテルのロビーで完全にダウン、ほぼ意識を失って眠りこけていた。

 (10月16日、京都・即成院「二十五菩薩お練り供養」 2)

 

 そういう園児と乳児の様子を見て、最初に声をかけたのはワタクシである。もちろん4人の子連れママが「モト生徒」であることなんか知る由もないが、疲れ果てて眠る男児2人、疲労しきっても弟たちの面倒を見ようと頑張る健気なお姉ちゃん2人、そういう家族の様子を見て、思わず「時代祭に行かれたんですか?」と声をかけずにはいられなかった。

 

 その日のワタクシはちょっと事情があって、ウェスティンホテルからブライトンホテルへの移動の真っ最中。アプリで呼んだMKタクシーを待っているところだった。

 (10月16日、京都・即成院「二十五菩薩お練り供養」 3)

 

 家族に声をかけてみた時点で、ちょうどタクシーがホテルのエントランスに到着。ワタクシは大急ぎでタクシーに向かったのである。その背後から「今井サン!!」「今井サン!!」「もしかして今井先生ではありませんか?」と、家族の中心でギュッと子供たちをまとめあげていたママが、息せききって今井君を追いかけてきた。

 

 ママの後ろから、お姉ちゃん2人も嬉しそうに走ってついてくる。さらのその後ろから、パパも苦笑しながら追いかけてくる。ロビーは「何だ?」「何だ?」「何事だ?」「あの中年オヤジは、いったい何者だ?」という熱い好奇の視線でいっぱいになった。

 (10月16日、京都・即成院「二十五菩薩お練り供養」 4)

 

 聞けばママは、15年も前の高校生時代に「今井先生の授業を受けていました」とおっしゃる。おそらく小学校低学年の娘たちも、「ママの先生だったオジサマ」の姿を物珍しげに見上げている。

 

 そりゃ、物珍しいはずだ。ふだん習っている小学校のセンセは、きっとまだ30歳代のたくましくカッケー若者、いや20歳代のまだキャピキャピのオネーサマ。ところが「ママがむかし映像授業でお世話になったのよ」というスゲー先生は、短足胴長&楕円のサトイモだ。

 

 もしかして10年後、もしこのオジサマがまだ引退せずに活躍していたら、自分たちもこのサトイモの世話になるのかもしれない。そう思いながら見上げる2人の娘の顔に、何とも不思議な感慨が走るのが分かった。

 

 せっかくなので、ママとパパと娘2人に囲まれて、ワタクシは家族の真ん中で記念写真に収まった。その間、ロビーのソファで眠りこけている園児男子と乳児男子は、「見守るものもなく完全に放置」というアリサマだったが、もちろんホテルスタッフがじっと見守っていてくれただろう。

 (10月16日、京都・即成院「二十五菩薩お練り供養」 5)

 

 MKタクシーの運転手さんは手持ち無沙汰そうに待っていてくれたが、やっぱり「何者なんだ?」感が表情に浮かんでいた。

 

 コロナ以降、MKタクシーでは、「感染防止の観点から」「お客様との会話があまり弾まないように」という方針を続けているらしくて、長時間の乗車でも、お互い押し黙ったままというツラい状況が続いているが、それでも3年ぶりの時代祭の午後、蹴上のウェスティンから御所西のブライトンまで、おそらくはあのママのおかげで、それなりに会話は弾んだ。

 (10月16日、京都・即成院「二十五菩薩お練り供養」 6)

 

 さて、時間が大きく前後するが、10月16日、今回の旅の最初の日、新幹線で京都に到着したワタクシは、京都駅から洛南の散策に出た。気温25℃を軽く超えた夏日であって、5分も行かないうちに大汗をかきはじめた。

 

 こんなに京都まみれの旅の日々を過ごしていても、洛中・洛北・洛東・洛西に比較して、洛南は今1つ馴染みがない。せいぜいで伏見稲荷・東福寺・城南宮・泉涌寺・宇治平等院を訪ねる程度。東海道線の線路を挟んで、なかなかその南側の散策を満喫することはないのである。

 

 その証拠というか何というか、前回8月の滞在で「六地蔵めぐり」を敢行した時も、洛南に点在する3つの地蔵尊を訪ねる道すがら、ワタクシは見事に道に迷ってしまった。

 

 何しろ京都は「碁盤の目」だから、よほどのことがない限り、道には迷わない。ところが六地蔵から鳥羽地蔵尊に向かった猛暑の日、情けなくも今井君はグーグルちゃんに物の見事に裏切られ、鳥羽の住宅街を迷い歩いているうちに、熱中症の瀬戸際に立たされたのである。

(即成院「二十五菩薩お練り」の舞台。50メートル。向こう側が極楽浄土である「本堂」、こちら側が現世である「地蔵堂」)

 

「グーグルちゃんに裏切られ」などという書き方をすると、グーグルちゃんに提訴されかねないが、諸君、「詳しすぎるのは返って人を混乱させる」のは事実。「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言ふ故人の知恵が勝ることも多いのである。

 

 あの時ワタクシが探し求めたのは「鳥羽地蔵尊」、正式名称「浄禅寺」。ところが諸君、最寄り駅であるはずの近鉄・伏見駅で下車した段階で、哀れな今井君が「鳥羽 地蔵」とググッて提示されたのは、マコトにマコトに小さなホコラであって、目指す浄禅寺とは全く別物なのであった。

 

「タクシーに頼ることはしない」と自ら誓った六地蔵めぐりだったのに、その誓いを自ら放棄し、隣りの竹田駅前でタクシーに救いを求める結果になったのは、「過ぎたるは及ばざるがごとし」、間口2メートルもない小さなホコラまで簡単に検索できてしまうグーグルどんのせいである。

 

 受験勉強だっておんなじだ。長文読解問題で何より大切なのは、大意の把握・文脈の把握・テーマの把握であって、読解問題の長文を1語1語、あるいは1文1文、微にいり細をうがってコマゴマと切り刻めば、「全て分かったつもりなのに、設問はさっぱり解けなかった」という本末転倒に陥る。

(お練りに先立ち、極楽浄土(本堂)から現世(地蔵堂)へ、歌舞伎役者・市川九團次が「とび六方」を演じる)

 

 さて、まあそういう苦い思ひ出もあって、今井君はどうも洛南が苦手。ワイシャツが透けて見えるほどの大汗をかいて、それでも1時間近くめげずに散策を続け、とうとう目指す「即成院」にたどり着いた。

 

 即成院と書いて、「そくじょういん」と読む。泉涌寺の門前だから、もし泉涌寺を訪ねることがあったら、諸君もぜひ即成院、のぞいてみてくれたまえ。毎年10月の第3日曜日に行われる「二十五菩薩お練り供養」が有名だ。

 

  10月16日は、まさにその10月第3日曜日。境内には長さ50メートル、高さ2メートル、お練りの舞台となる長い橋がわたされる。橋は、本堂と地蔵堂を結んでいる。

 

 本堂を極楽浄土とみなし、地蔵堂を現世とみなして、二十五の菩薩が「極楽浄土から現世へ」「現世から極楽浄土へ」と、橋の上を練り歩くのである。その姿は、阿弥陀如来の来迎によって現世から極楽浄土に導かれる様子を表すんだそうな。

 

 菩薩に扮するのは、地元の名士から、寺の檀家の小学生やら幼児&園児まで。みんな菩薩の金色の面をつけ、もちろん菩薩の装束をまとう。「名士」の皆様には、その奥方が介添えとして付き添い、小学生以下の子供たちにはお母様が付き添いとなる。

 (10月16日、京都・即成院「二十五菩薩お練り供養」 7)

 

 季節から考えて、これはどうやら七五三の一種のようである。舞台となる橋の上、しずしずと歩を運ぶ子供たちにとってハレの舞台だが、むしろ美しい和服姿のママたちにとっても、最高の晴れ舞台というか、地元のババサマたちのおメガネに叶うかどうか、一世一代の秋の1日と見えた。

 

「名士」であるオジサマの介添えについた奥方たちの凛とした風情に、さすがの今井君も感激したのである。表情も、立ち姿も、歩を運ぶ雰囲気も「さすが大人の京おんな」であって、愚か者のつけいるスキを一切与えず、ものの見事にダンナの晴れ舞台を支えていらっしゃる。

(菩薩役のダンナの奥方、菩薩役の息子&娘のママ、マコトに見事な介添えぶりだった)

 

 ただし、YouTubeにあるコロナ前の映像と見比べると、やはり一抹の寂しさを感じる。

 

 コロナ前は、菩薩と菩薩の間隔がグッと小さくて、まさに二十五の菩薩が阿弥陀如来に導かれてびっしり&みっちり、息もつかせぬ来迎の絵図を見せてくれていたようなのだが、2022年、菩薩から菩薩への感染防止、菩薩どうしの感染防止の観点から、菩薩の間隔がずいぶん間延びしてしまった。

 

 もちろん、これは致し方ないのである。菩薩だって、コロナには感染する。菩薩が感染すれば、菩薩の奥方も濃厚接触者、菩薩の若いママもやっぱり濃厚接触者。ありがたい&ありがたい阿弥陀如来サマだって感染はコワい。ホトケの世界も、こういう事態は如何ともしがたいのだ。

 

 願わくは諸君、来年ないし再来年の10月第3日曜日、諸君も京都・即成院を訪問して、コロナ完全撲滅後の菩薩のお練り供養をご覧になるといい。

 

 その時には、ズラリと勢ぞろいしたキンピカ25菩薩が、介添えの奥方やママたちに手を引かれ、極楽浄土から現世へ往路50メートル、現世から極楽浄土へ復路50メートル、マコトにありがたい往復100メートルのお練りを、本来の姿で満喫させてくれるはずである。

 

1E(Cd) Sarah Vaughan:SARAH VAUGHAN

2E(Cd) José James:BLACKMAGIC

3E(Cd) Radka Toneff/Steve Dobrogosz:FAIRYTALES

4E(Cd) Billy Wooten:THE WOODEN GLASS  Recorded live

5E(Cd) Miles Davis:KIND OF BLUE

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