Wed 221012 大学病院で親知らずを抜いてもらう/オジサマの「先生ですか?」 4278回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 221012 大学病院で親知らずを抜いてもらう/オジサマの「先生ですか?」 4278回

 前回の記事で「世界はイヤなことばかり」のサブタイトルをつけ、4つの「イヤなこと」うちの2つまでは正直に告白したが、残りの2つはやっぱりどうしてもあんまり幼稚なので、告白するのをためらった。

 

 しかし諸君、どんな場面でも隠しごとはよろしくない。ここは思い切ってバカ正直に書いてしまうことにして、

① 大学病院「口腔外科」で、親知らずを2本、どうしても抜いてもらわなければならなくなったこと

② 幼稚園児の頃から我が人生の情熱の1つだった高校野球に、根本的な変革の必要性を感じずにはいられないこと

以上2点である。

 

 ②については、また日を改めてしっかり書くことにして、すっかり秋の深まった10月11日、今井君は「アゴの骨も削るかもしれません」「術後2日か3日は、ハレで口を開けられないかもしれません」、そういう泣きそうになるほど強烈なオペを受けに、東京水道橋の東京歯科大学病院に向かったのである。

 

 緊張のあまり、前日は朝2時まで眠れない。ついでに緊張のあまり、当日は朝4時に目が覚めてしまった。要するに2時間しか寝られず、朝5時にお風呂に入って、6時半まで大汗かきながらお風呂で世界文学全集を読みふけった。

(親知らず抜歯の後、痛くて口が開けられなくても食べられそうなものを、たくさん買い込んで帰った 1)

 

 歯医者さんでも、「オペ」と呼ぶのである。我が立派な親知らずどんは、左下に1本、右下に1本。そのうち左奥の1本を抜くのであるが、高1だったか高2だったか、存在に気づいた時にはもうずいぶん大きくなっていた親知らずどんは、それから幾星霜、小臼歯やら大臼歯やらを圧倒するほどの大きさに成長した。

 

 親知らずというものは、放置しても別に何の害も及ぼさない可愛らしいヤツと、放置して成長すると大臼歯&小臼歯を強く圧迫し、ついには最も大切な大臼歯を追い出しちゃおうとする無礼なヤツとがある。

 

 今井君の親知らずは、まさにカッコーの雛みたいなヤツだ。カッコーの雛は、別の種類の鳥の巣に産みつけられて孵化すると、その巣の中のホントの雛をみんな巣から追い出してしまって巣を完全占拠し、自分より小さい「親鳥」が懸命に運んでくる餌を、全て横取りして成長する。

(親知らず抜歯の後、痛くて口が開けられなくても食べられそうなものを、たくさん買い込んで帰った 2)

 

 忘れもしない2020年12月18日昼、京都・四条烏丸の高級ステーキ店で超高級ステーキに舌鼓をうっていたら、カッコーの雛に追い出されたホントの雛よろしく、我が大切な大切な大臼歯クンが1本、「ポロリと」というか、「スポンと」というか、いきなり口の中に抜け落ちた。

 

 思えばあの時、「よくあの大臼歯を飲み込まなかったな」と感嘆するほどだ。咀嚼中のステーキの肉の中から、やっと掘り出した大切な大臼歯クンをハンカチに包んで、大急ぎで新幹線に乗り込み、何とか無事に東京に帰還した。

 

 というか、あの12月の今井スケジュールは嬉しくなるほどの過密ぶり。12月10日頃から連日の大阪講演会が続き、運命の18日だけが夜から東京の豊洲、翌19日午前が兵庫県西宮、その後もクリスマスまで関西の講演会ラッシュが続いていた。

 

 だから、東京の行きつけの歯医者に行けるのは18日の夕暮れのみ。午後4時に東京駅に到着し、午後5時に歯医者さんの椅子に座り、午後7時半に豊洲で公開授業が始まり、終了するやいなやタクシーに乗り込み、午後9時の新幹線に間に合って、真夜中近く、何とか京都の宿に戻った。

 

「行きつけの歯科医」は、噴き出しそうになりながら応急処置に努め、今井君は今井君で豊洲の公開授業中、血まみれになっていくマスクを2回も交換し、歯科医が口にした「この親知らず周辺、近いうちに大工事が必要ですね」という残酷なコトバを何度も何度も反芻&復唱していた。

(親知らず抜歯の後、痛くて口が開けられなくても食べられそうなものを、たくさん買い込んで帰った 3)

 

 しかし何とかその時の応急処置が功を奏して、2022年7月まで「大工事」を引き伸ばし、ゴマカシ&ゴマカシここまで来たのである。しかしついに、もうゴマカシ&ゴマカシではゴマカシきれなくなった。この巨大な親知らず、そろそろキチンと処理しないと、さらに凶暴なキバを剥きかねないのである。

 

 今年8月、ついに歯科医から「大学病院に紹介状を書きます」と告げられた。「は?」「大学病院じゃなきゃダメなんですか?」と尋ねてみたが、歯医者さんは口に出しては言わないものの、「何言ってんだ」「そんなの当たり前だろ?」「こんな巨大な親知らず、見たこともないね」というキッパリした表情。抗弁の余地はなかった。

(親知らず抜歯の後、痛くて口が開けられなくても食べられそうなものを、たくさん買い込んで帰った 4)

 

 というわけで、高校生時代から長い長い付きあいの親知らず君と、とうとうお別れする日がやってきた。10月11日朝8時45分、東京歯科大学水道橋病院に到着した。

 

 とぼとぼ向かったのは「口腔外科」。その文字を眺めただけで震え上がる。「オペ」というもっともっとコワいセリフが飛び交う中、担当の先生がスリッパでスタスタやってきて、慈悲や躊躇や嘆願の応酬なんか一切なしに、早速グサッと麻酔注射の針が、我がナイーブなお口の奥に突き刺さった。

 

 そこから先は、まあ多くの諸君もご存知の通りの強烈な世界である。親知らずがあんまり頑強に深く根を張っているものだから、「割っちゃって」ないし「細かく粉砕して」、ある程度小さなカケラにしてから処理することになった。

 

 悪戦苦闘90分。9時15分に麻酔、麻酔がキチンと効くまで15分、粉砕して抜歯が完了するまで60分。歯科医も懸命だが、今井君も全力でこの力ワザに耐えた。「ご覧になりますか?」と尋ねられ、真っ赤な血にまみれた粉々の親知らず君と対面した。

(親知らず抜歯の後、痛くて口が開けられなくても食べられそうなものを、たくさん買い込んで帰った 5)

 

 合計90分の「オペ」が終了すると、さすが古ツワモノの今井ももうヘトヘト。歯科医は平気で次のオペ室に去っていらっしゃったが、いやはやさすがに大学病院勤務の医師、朝から晩までこれほどのオペを継続して、ちっとも疲れた様子を見せない。

 

「ハレがひどくなって、しばらくは口を大きく開けられないかもしれません」

「今は血が止まっていますが、またすぐひどく出血するかもしれません」

「痛み止めの頓服薬を処方しますが、効き目が現れるまで時間がかかります」

いろいろ恐ろしい予言を授けられて、しょんぼり地下鉄の駅に向かった。

 

 帰りのルートは、まず水道橋から都営地下鉄で大手町まで。都営三田線の前の方に乗れば、大手町から千代田線の二重橋前まで、徒歩で5分もかからない。

 

「あれれ、水道橋からなら、総武線の黄色い電車で新宿まで行った方がいいんじゃありませんか?」なのであるが、ワタクシはJRがキライなのだ。特に山手線・中央線・京浜東北線、何だかヒトを貨物扱いして「運べばいいんだろ?」という雰囲気がキライ。特にこんなにしょんぼりしている時は、地下鉄の何とも言えない温かみがほしい。

(親知らず抜歯の後、痛くて口が開けられなくても食べられそうなものを、たくさん買い込んで帰った 6)

 

 水道橋駅で三田・白金・目黒方面行きを待っていると、キチンと小ぎれいな作業服姿のオジサマ3人組に声をかけられた。作業服には東京都のイチョウのマークが付いていて、40歳代後半と思われる白髪のオジサマがリーダーであるらしい。

 

 そのリーダーオジサマが、ニコヤカな笑顔で懐かしげにワタクシに声をかけてくれた。「たいへん失礼ですが、もしかして予備校講師の今井先生でいらっしゃいますか?」とおっしゃる。

 

 最初は生徒の保護者か何かで、どこかの保護者会で今井を記憶してくれたのかと思ったが、50歳一歩手前と思われるオジサマは「むかしむかし、御茶ノ水の駿台予備校でお世話になりました」とペコリ、その場で大爆笑になった。

 

 だって諸君、思えばもう30年も前のことである。日本の首相が橋本龍太郎か小渕恵三か森喜朗の頃のことである。アメリカ大統領がクリントンで、モスクワのゴルバチョフが世界中に「もしかしたら平和が...」という希望の光を投げかけていた頃である。今さら予備校時代の思ひ出だなんて、そりゃ大爆笑も当然だ。

(親知らず抜歯の後、痛くて口が開けられなくても食べられそうなものを、たくさん買い込んで帰った 7)

 

 今は東京都庁でお仕事をなさっているとのこと。管理職というか、とっくに東京都のリーダーの一員でいらっしゃる。ワタクシもあんまり楽しくて、あんまり嬉しくて、親知らずの抜けた深い穴のことも、今もまだ出血の止まらないお口の中のことも、すっかり忘れて大爆笑に加わった。

 

 そういうこともあって、いくらか元気を取り戻したワタクシは、行きつけのスーパーで「口が開かなくても、痛みがひどくなっても、何とか食べられる食材」をたんまり購入して帰った。プッチンプリン・ごま豆腐各種・湯豆腐用の絹ごし豆腐・ヨーグルト・おから・きざみ小ねぎ。腫れと痛みが消えるまで、これで何とかなりそうだ。

 

1E(Cd) CHET BAKER SINGS

2E(Cd) Art Pepper:SHOW TIME

3E(Cd) Maceo Parker:SOUTHERN EXPOSURE

4E(Cd) Max Roach:DRUMS UNLIMITED

5E(Cd) Tommy Flanagan Trio:SEA CHANGES

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