Sun 220918 冬期直前講習/大関正代のピンチと北の富士サン/祇園四条セラヴィ 4268回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 220918 冬期直前講習/大関正代のピンチと北の富士サン/祇園四条セラヴィ 4268回

 そろそろ塾&予備校では、冬期講習やら直前講習やらの申し込みが始まる時期で、受験生諸君は「どの講座を選ぶか」でソワソワ、普段の授業に身が入らない状況のオカタも少なくないだろう。

 

 友だちが4人も5人も集まって授業をサボり、カフェで「どの講座?」について熱くワイワイ盛り上がる。盛り上がればますます楽しいから、浪人生の本分をすっかり忘れて2時間目も3時間目もサボり続け、気がつくと夕暮れが近づいていたりする。

 

 予備校バブルの時代には、「あっという間に満員〆切り」という講座も少なくなかったから、人気講座やら超人気講座を受講したければ、〆切りにならないか心配しながら、朝から長蛇の列に並ぶことになる。「前日の夜から」などという恐るべき時代だって実際にあった。

(京都、祇園四条駅近くの洋食屋「セ・ラ・ヴィ」。基礎基本に忠実なハンバーグランチが旨かった 1)

 

「どうしても憧れの先生のあの講座♡」と的をしぼって、ドキドキしながら申し込みの日を待つ。キチンと地道に勉強して第1志望に合格することより、むしろ憧れの先生のあの講座に申し込めるかどうかのほうが、何だかもっと重要に思えてくる。

 

 超人気講座を無事に申し込めたら、教室の最前列で「あの先生」の息がかかるほど近くに陣取り、年末とお正月と直前期を過ごせる。周囲には本末転倒と非難されようと、ちっともかまわない。何が何でも冬期&直前はあの先生でなければならない。

 

 予備校バブルがすっかり過去の語り草になった今では信じがたいが、20世紀末から21世紀初頭の予備校とはそういう世界だったので、講師の方もいろんな勘違いを続けた。

 

 冬期&直前期の人気講座のタイトルをいま眺めてみると、「これは正気の沙汰かいな?」と、思わず愕然とするものも少なくない。9月末の段階でそういう驚くべき強烈なタイトル講座名を見て、ちっとも驚きもせずに生徒諸君は、やがて配られる整理券まで奪うようにして長蛇の列に並んだ。

(京都、祇園四条駅近くの洋食屋「セ・ラ・ヴィ」。基礎基本に忠実なハンバーグランチが旨かった 2)

 

「全てを網羅しています」という宣伝文句が流行したことがある。「文法も読解も作文も、全てを網羅しています」「受験英語に必要な全てを網羅しました」。売り手としての講師たちも、パンフレットの説明文にはどうしても「網羅」というコトバを入れたくなるのだった。

 

 生徒諸君は、「網羅」の魔力にはマコトに弱い。わざわざ講師室を訪ねてきて、「先生の講座では、全てを網羅しているんですか?」と、大人っぽい言葉遣いで質問してくる生徒も多かった。「もちろんだぁ」「当たり前だぁ」「網羅してなくてどうするんだぁ」と、講師はみんな自信たっぷりに頷いた。

 

 しかし、ちょっと待ってほしい♡ 目の前で宣伝中のそのセンセは、4月の授業開始から、秋まで半年まるまるかかっても「全てを網羅できなかった人」なんじゃないか。

 

 1学期のテキストは、3割やり残し。期待して臨んだ夏期講習でも、やっぱりやり残し3割。下手をすれば、やり残し5割。その同じセンセが、どうして冬期講習のたった5日、直前講習のわずか4コマで、「全てを網羅」などという離れワザができるんだ?

(京都ゑびす神社、8月17日。焼きみかん、湯立て、十日ゑびす、二十日ゑびす。いつの間にか大好きな神社になった)

 

 今井君はマコトに正直者だから♡♡、他講師がみんな口を揃えて「網羅します」「網羅します」と言っている講師室のど真ん中で「英作文しかやりません」「長文5問に集中します」「語法200問解きまくります」みたいな、流行と正反対の宣言をしまくった。

 

 冬期5コマでできること、直前講習4コマでできることはごく限られていて、だからそこまで切羽詰まった状況では、何か対象をしぼってそれに集中した方がいいに決まっている。

 

「全てを網羅」なんかして、90分 × 5コマに全て詰め込めば、「テキストに印刷しといたから、自分で読んでおけぇ」「その一覧表を暗記すれば大丈夫だぁ」「テキスト付録も盛りだくさんだぞぉ」、その種のコトバを連発し、最後に何か感動的なハナシに持っていって「全員で奇跡を起こすんだぁ」ということになる。

 

 何しろ予備校バブルの時代のことだ。「奇跡」とか「ミラクル」とか「偏差値30からの大逆転」とか、そのタイプの発想が大流行。その当時の生徒諸君が今や雑誌やネット記事のライターになって、時代遅れのミラクルや奇跡の物語が今なお健在と信じて記事を書いていらっしゃる。

   (8月18日、桂離宮を訪れる。詳細は、後日 1)

 

 しかしそろそろ諸君、奇跡やミラクルや大逆転の時代は終わった。9月下旬の段階で年末年始の冬期講座の熱気に憧れたり、2月の奇跡的逆転を夢見たりするのは、もう四半世紀もむかしに終わった話である。

 

 誰でも常識的に理解できることだが、前半に大量リードされてから終盤で奇跡的大逆転を演じるより、前半にまず先制点をとり、1点ずつ徐々にリードを広げ、終盤には「油断さえしなければ大丈夫」という点差をつけて、悠々と勝利する、観客が白けるほどの堂々とした6−0か7−1の勝利がいいに決まっている。

 

 だからワタクシは、6月から9月にかけて「ミラクルは起こらない」と口グセのように語り続けた。ド派手なネーミングの冬期直前講習のウワサをしている生徒が多くなると、「最終盤のミラクルより、今の1点の方が大切だ」と、マコトにムカつく一言を放って教室内を引き締めた。

 

 それでもちっとも教室から生徒は減らないのである。少し嫌われて、アンチもそれなりに発生して、ヒール役になって、しかし教室は最後まで超満員。やっぱりしっかり足を地につけて、地道に地道に1点ずつのほうがいいのは、生徒たちもほぼ全員理解していたのだと思う。

   (8月18日、桂離宮を訪れる。詳細は、後日 2)

 

 読者の世代で「お相撲のファンです」という人はあまり多くないと思うが、今日もまた大関・正代が負けて「8日目で1勝7敗」という大ピンチを迎えている。あと1敗で負け越し、彼が大関になってから、勝ち越しと負け越しの数がほとんど同じなんじゃあるまいか。

 

 ワタクシはこの18年間、熊本県内で非常に多くの講演会を実施し、大関・正代の地元である熊本県宇土の駅前でも公開授業を2回。熊本の人々がどれほど正代というお相撲さんを愛しているか熟知している。このブログでも一度ならず正代の活躍について言及している。

 

 だからこそ今の文脈で、どうしても正代関について言及しておきたい。彼に対してあんなに厳しい表現をつかって叱咤激励を続けている北の富士サンも、「中日スポーツ」の名物コラムで「今場所の正代が勝ち越したら、私は筆を折る」とまで宣言してしまった。冗談であることを祈っている。

 

 正代関は今、「地に足がついていない」の典型例になっているのだ。22年秋場所7日目、さすがに往年の名横綱は見る目が別格だ。NHKの解説者席に座った北の富士サンは、あっけなく敗れた正代について「ずっと爪先立ちじゃダメだ」「最初から最後まで爪先立ちで、カカトが土俵に一度もついていません」と、溜め息をついた。

   (8月18日、桂離宮を訪れる。詳細は、後日 3)

 

 諸君も是非、nhksumoをポチッとやって、秋場所7日目の正代の相撲を眺めていただきたい(7日目です。8日目ではありません。8日目はもっとひどい状況になってました)。

 

 相手は、長く不調にあえいだ平幕力士。大関正代は、横綱照ノ富士みたいにヒザをひどく傷めているわけでもないのに、ホントにずっと爪先立ち、足の裏全体で土俵を踏みしめることは一度もなく、だからカカトはずっと宙に浮いたままだ。

 

 おお、予備校講師としてワタクシがずっと言いたかったことは、まさに北の富士サンの一言に凝縮されている。不安定な爪先立ちで半年後のミラクルを思うより、カカトをグッと地面につけて、足の裏全体で土俵を踏みしめ、大地と足腰が一体になった充実の力量感こそ、目の前の相手を圧倒するのである。

 

 まあ諸君、「お説教くさい」などとソッポを向かずに、大ベテラン今井の意見をちゃんと理解したまえ。今もなお、ド派手なネーミングの冬期直前講習でミラクルに誘おうとする予備校や講師は存在するだろうが、爪先立ちでは、ミラクルは起こらない。

 

 最も重要なのは、9月から12月まで、どれほど真剣にレギュラー授業に集中するかである。若い講師の皆さまも同じこと。講習ばかりド派手でも、平常授業の評価が低ければ、経営側の評価はもちろん上がらない。「足の裏全体を土俵につけなきゃ」。大横綱北の富士サンの指摘はさすがだ。

   (8月18日、桂離宮を訪れる。詳細は、後日 4)

 

 8月17日、京都は強烈に蒸し暑く、重く曇った空から時おり突然の豪雨が降ってきた。前夜の「五山の送り火」に濃厚に感激したあげく、今井君は普段にもまして深夜まで深酒を続け、起床したのは9時を過ぎていた。

 

 旨いランチで気を取り直そうと、地下鉄で宝ヶ池から祇園まで南下、ランチの店を物色した。祇園南側「グリル富久屋」を目指したのであるが、四条烏丸から祇園まで徒歩30分、やっとのことでたどり着いた「富久屋」には「お盆のため休業いたし〼」の貼り紙。大汗をぬぐいながら、気が遠くなりそうだった。

 

 呆然としながら、今度は祇園を北上。こういうピンチの時は「松葉 北店」のお蕎麦か、「東華飯店」の中華、または「キエフ」「菊水」など、そういう歴史の長い店に逃げ込むのが一番だ。

   (8月18日、桂離宮を訪れる。詳細は、後日 5)

 

 しかし諸君、この時の今井君が選択したのは「セ・ラ・ヴィ」。四条大橋東詰、「キエフ」の入っているマコトに古いビルの1階で、それこそ足を地面にしっかりとつけて、基礎基本を大切に長く営業を続けている名店だ。

 

 カウンターと、4人用のテーブル3つ。若い諸君も、話のタネにぜひ一度訪問してみたまえ。「地に足をつけるとはどのようなことか」、それを実感するには、こういう店に座って、スマホを手から離し、基礎基本に忠実なランチに集中するのが一番だ。

 

 客は他に、熟年男女4人のグループが1組だけ。すぐそばの南座で坂東玉三郎主演の「四谷怪談」を眺めに来たらしい。その前に「セ・ラ・ヴィ」で待ち合わせ、ダッシュでランチを召しあがり、「楽しみだ」「ホントに楽しみですね」と、熱く頷きながら店を出ていった。

 

「セ・ラ・ヴィ」の南隣りには、いつ見ても長蛇の列のできている超人気店がある。並べば30分も40分もかかるだろうに、こんな激しい雨の中でも、30歳代ぐらいの男女がみんな嬉しそうに列を作っている。

 

 看板には「ガストロノミー」の文字が見える。スペイン料理の店であるらしいが、ランチの時間帯は「とろっとろのバスク風チーズケーキが有名」とのこと。

 

 おお、これほどの大人気、大いに羨ましい。あとは、大関正代みたいなピンチに陥らないように、徹底的に基礎基本に徹することである。

 

1E(Cd) Chicago:CHICAGO

2E(Cd) George Benson:LOVE REMEMBERS

3E(Cd) George Benson:STANDING TOGETHER

4E(Cd) Take 6:BEAUTIFUL WORLD

7D(DPl) 文楽:菅原伝授手習鑑③「車曳の段」豊竹山城少掾・8代 竹本綱太夫・豊竹つばめ太夫・竹本津太夫「茶筅酒の段」竹本伊達太夫「喧嘩の段」豊竹呂太夫「桜丸切腹の段」竹本越路太夫

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