Fri 220916 京都で五山の送り火を眺める/エリザベス2世と駿台700選のこと 4267回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 220916 京都で五山の送り火を眺める/エリザベス2世と駿台700選のこと 4267回

 今日が9月16日だから、ちょうど1ヶ月前のことになる。ワタクシは8月16日、京都の五山の送り火を眺めたいと思い、午前9時の新幹線に乗り込んで京都に向かった。

 

 このところ定宿にしている「宝ヶ池プリンスホテル」にチェックインしたのが午後2時。相変わらず落ち着いた雰囲気のこの宿で、そのまま8月25日まで滞在する予定だった。

  (8月16日の京都で、3年ぶりの五山の送り火を眺める)

 

 宝ヶ池はそれなりに標高も高いから、ウソのようだがカエデの中にはもう紅葉の始まっているものもあって、もちろんそういう品種なのかもしれないが、セミの大合唱の中でのかすかな紅葉、さすがに風情たっぷりだった。

 

 ホテルを出ると、比叡山が驚くほど間近に迫る。すぐそばの国際会議場では医学系の学会がしょっちゅう開催され、ホテルはマコトに知的な雰囲気だ。第7波の真っただ中だったが、今回の滞在中もいくつかの学会があったらしくて、ロビーを行き交う人々は物静かで知性的。いやはや今井なんかは肩身がせまい。

(朝の新幹線で京都に移動。東京駅でこんなお弁当を買ってみた)

 

 五山の送り火を眺めるには、いくつかオススメのスポットがあって、例えば「左大文字」を選択するなら、西大路を北山に向かってずんずん進み、和食ファミレス「さと」の駐車場の近くに陣取れば、確かに左大文字1つしか見えないが、薪がバチバチはぜる音まで聞こえるらしい。

 

 ワタクシの最初の予定では、「妙」と「法」と「舟形」の3つが同時に眺められる「北山通り」を選択するつもりだった。今年2月15日、松ヶ崎大黒天にお参りした時に、地下鉄烏丸線・松ヶ崎の駅のあたりから、山の「法」の字が大きく見えた。

(宝ヶ池プリンスホテルの前庭で。8月中旬なのに、カエデは赤く色づき始めていた)

 

 あの「法」の字が赤く燃え上がるのを見たいし、薪がバチバチはぜる音も経験したい。そう思ったのが今回の旅のきっかけだ。

 

 テレビ中継では、遠く離れたホテルの屋上からタレントさんが感激してみせる訳だが、やっぱり視覚だけでなく聴覚、さらに出来れば嗅覚もつかって、薪の燃える音とカホリまでしっかり感じたいじゃないか。

 

 その松ヶ崎「宝ヶ池スポーツ広場」からなら、「法」の字の着火作業も見えるらしい。送り火を構成する1つ1つの薪の見分けもつくんだという。そりゃいい、どうしても松ヶ崎で見たい、2月ごろにはそう考えていた。

(直前まで小雨が降っていた。なかなか大文字の薪に火が点かなかったようだ 1)

 

 しかし松ヶ崎から1駅、地下鉄・北山駅そばの「ノートルダム女学院」付近まで行けば、「法」ばかりか「妙」「舟形」もいっしょに見えるという情報が入る。

 

 何しろ3年ぶりの本格的な送り火だ。「法」だけにするなんてもったいないじゃないか。ワタクシの優柔不断なココロは揺れ、「こりゃノートルダムの方がいいかね」「でも、『女学院』のそばを今井みたいなデカいサトイモがうろつくのはいかがなものか」と逡巡を繰り返した。

 

 だって、何しろヤンゴトなき「女学院」だ。敬して遠ざけておいたほうが、無難なんじゃないか。そんなところをサトイモがうろついて、万が一にも不審人物と判断されるようなことがあれば、世間様のいろんなところに迷惑がかかる。

 

 そうでなくても諸君、今井の存在はさまざまな場所で大騒動のモトになるのだ。この時の京都滞在でも、北大路のショッピングモールに買い物に入っただけで、いきなり至近距離で大学生女子の悲鳴と歓声が上がった。「もしかして、今井先生ですか?」とおっしゃるのである。

 

「先生の授業、ホントに楽しかったです」「今は学部2回生です」「いっしょに写真、お願いします」。そう言われて、「マスクしてボーシもかぶってて、それでも今井の正体がバレましたか?」と尋ねると、「そんなの当然ですよ」とニンマリされる。

 

 せっかく写真に収まるのに、まさか「マスクをしたまま」というのも残念だから、「シャッターを押す一瞬だけ」という前提でマスクを外し、彼女のスマホの四角い画面の中でニッコリした瞬間、すぐそばを男子高校生グループが「今井だ♡」「今井だ♡」「何でこんなところにいるの?」と、歓声をあげながら通り過ぎる。

(直前まで小雨が降っていた。なかなか大文字の薪に火が点かなかったようだ 2)

 

 8月2日、大阪で文楽を眺め、道頓堀で中華料理を思いきり貪り、酔っ払って太古の昔の友人と歩いていると、4人の男子高校生に取り囲まれ、「たった今まで授業を受けてました」と大騒ぎになった。「ボクはもうB組まで進みました」「オレはまだD組です」「すっげー面白いです」という訳だ。

 

 しかし何しろ午後10時の道頓堀だ。というか、正確には千日前通りであるが、そういう大騒ぎになると、たくさんの通行人がみんな足を止めて、不思議そうに様子をうかがう。

 

「今どこの高校に通ってるの?」と尋ねると、何と何と驚くべき偶然で、文楽を眺め中華料理をともに貪った「太古の昔の友人」の後輩にあたる諸君だった。

 

 こういう大騒動は日本中どこでも発生するので、つい先週も東京都内の病院帰りのランチ(オムライス)の後、20歳代の男子と女子がいきなり立ち止まってサトイモをつくづく眺めるのである。「ありがとうございました、このあいだ早稲田大学を卒業しました」とおっしゃる。

 

 すべて、マスクあり&ボーシつきのサトイモ。ホントに世の中の人々は目ざとい。そんなにたくさん外出している訳ではないが、いろいろ病院で検査しなきゃいけないことがあって「全て正常です」と医師に言われ続けたこの1ヶ月、「サトイモ発見!!」の大騒動はほぼ「1外出につき1回」という頻度である。

(出雲路橋から北山を望む。左が「妙」、右が「法」。次回はこの2つを間近に見たい)

 

 そういう状況を考慮すれば、「ノートルダム女学院付近」というのも、今回は避けて通るのが無難な気がした。「妙と法と舟形の3つを同時に」という計画はまた後日、「今井、目撃!!」みたいな騒動の少なくなるだろう10年後か15年後まで延期することにした。

 

 こうして最終的に選択したのは、五山の送り火の有名&定番スポット「出雲路橋」である。地下鉄烏丸線で松ヶ崎 → 北山 → 北大路と南下し、北大路からさらに1駅南下して「鞍馬口」下車。東に向かって徒歩10分ほどで到着した出雲路橋には、すでに多くの人が集まって送り火の点火を待ち受けていた。

      (大文字。ようやく点火が完了した)

 

 橋の西詰あたりに立ち尽くし、東山の「大」の字が次第に形を現すのを眺めながら、お隣に立っていた京都在住のオバサマに話しかけられた。「寺町通りに住んでます」というのだから、おそらく生粋の京都人。3年ぶりの大文字、外国人観光客の少ない落ち着いた送り火を、しんみり眺めていらっしゃった。

 

 ここから視線を北に転ずれば、流れる川の向こう側、ほとんど地平線に接するあたりに「舟形」も「妙」も「法」も見える。一番左に舟形。直前まで小雨が降って山も湿度が高く、舟形の上空に漂う湯気に赤い炎が映って、下の写真でも分かるように。まるで山火事のような雰囲気だった。

(出雲路橋から北山方面を望む。「妙」の左、舟形の炎が水蒸気に映ってますます美しかった)

 

 さて、まだ葬儀も済んでいないのだから、今回の記事で五山の送り火について書いたのは、エリザベス2世のこととは全く無関係である。しかしやっぱり、これほど長い在位期間を乗り切った女王だ。五山の送り火の写真とともに、ホンの少しだけ思い出を書いておきたい。

 

 むかしむかしの訪日の記憶もかすかに残っている。しかし諸君、女王に関するワタクシの記憶は、浪人生時代に使用した学習参考書の中の例文にまつわるものである。

 

 当時の駿台生は、必読書として「基本英文700選」を購入させられた。「英作文の対策としてベストなのは、基本的な例文をたくさん暗誦することだ」と言われ、「700選の暗誦は、読解や文法の力の向上にも直結する」というのが昔の駿台の方針だった。

(駿台受験叢書「基本英文700選」の勇姿。鈴木長十・伊藤和夫 共編。1983年6月、初版第27刷)

 

 著者は、鈴木長十と伊藤和夫。ともに「受験英語の神様」と言われ、ワタクシが電通をとっととヤメた直後にすぐさま予備校講師を目指したのも、「てんてんぷるぷる」が口癖の鈴木長十が大好きだったし、駿台生の頃から伊藤和夫の口マネが大の得意だったからである。

 

「全部とにかく暗誦せよ」というのも強引で乱暴な話だが、あの頃の駿台生はマコトに素直に従った。特に東大コースや京大コースの優秀なクラスに在籍する者にとっては、「700選の暗誦なんか当たり前」であり、例文につけられた番号を言えば即座に&反射的にその例文を言ってみせるという猛者が多かった。

 

 で、エリザベス女王であるが、彼女が登場する例文が、26ページの139番。右隣りのページには、和訳がついている。「That is what the British people expect of their young Queen.」「それこそ,英国民が若き女王に期待していることなのです。」

 

 今ワタクシの手許にあるのは、1983年版。奥付には「1983年6月7日発行 初版第72刷」とある。初版で72刷までいくというのも凄いが、それを今も書棚の奥に保存している今井も凄い。というか、ワタクシもまた、700の例文を即座に言えた猛者の1人だったのである。

 

 初版の編集当時はまだ「若き女王」だったエリザベス2世。あの時代から幾星霜、英国民ばかりか世界中の人々に優しいオバーチャンの笑顔を向けながら天国に旅立たれた。カビの生えた「700選」まで思わず持ち出して、ニュースの伝わった日の深夜のワタクシも、熱い涙にくれたのである。

(駿台受験叢書 鈴木長十・伊藤和夫 共編「基本英文700選」より。初版、26ページ139番の例文がこれだ)

 

1E(Cd) Deni Hines:IMAGINATION

2E(Cd) Sugar Babe:SONGS

3E(Cd) George Benson:TWICE THE LOVE

4E(Cd) George Benson:THAT’S RIGHT

5E(Cd) George Benson:LIVIN’ INSIDE YOUR LOVE

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