Thu 220915 「ちむどん」一斉批判のその後で/朝ドラに、プラス志向のご提案 4266回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 220915 「ちむどん」一斉批判のその後で/朝ドラに、プラス志向のご提案 4266回

 ワタクシは、何か1つのターゲットをしぼって一斉に批判の矢を向けるのが、昔からどうも苦手なのである。苦手というか、違和感を感じてしまう。

 

 そりゃ悪者は悪いに決まっているが、倫理的に許されないレベルの悪者ではない対象を、「よってたかって」たたきまくり&コヅキ回す様子を見ると、朝日新聞の決まり文句ではないが「だが、ちょっと待ってほしい」「しかし、少し待っていただきたい」と、人々に冷静になるよう促したくなるのだ。

 

 だからこのブログでも、よってたかって世論にコヅキ回されていた「品格のない横綱」2代、朝青龍と白鵬を何度も繰り返して擁護してきた。アベノマスクに「オマエは貴族か?」事件、たった数枚のホッチキスどめA4文書で「アベノミクスは失敗だった」と断定された悲劇の首相も、この場で控えめに擁護したはずだ。

 

 今井君は、もともとそういうタイプの聖人君子なのではない。しかし今から20年ほど前、その頃「四天王」の1人として心もカラダも擦り切れるほど頑張っていた巨大予備校で、何かのハズミに思い切り嫌われ役&ヒール役をやらされ、あの時の苦しい経験から、どうしても「よってたかって」が苦手になった。

(大阪心斎橋の名店で中華料理を貪った。春巻きが豪快。こりゃオイシューございました)

 

 まあ諸君、朝ドラ「ちむどん」、ワタクシも世間の一斉批判はナンボでも理解できる。

 

 今井の朝ドラ視聴歴は腰を抜かすほど長い。この世に生まれてきて、ふと気がつくと朝ドラを眺めていた。伝説の「おはなはん」も、「雲のじゅうたん」も、「水色の時」も、「北の家族」も、みんなキチンと知っている。

 

 そのワタクシが「ちむどん」視聴をヤメたのは、4月前半である。主役はまだ子役だったが、いま批判の矢面に立っている脚本家よりもむしろ、演出の異様さにビックリして、テレビの前に座っていられなくなった。

 

 もちろんワタクシは、子役が悪いと言っているのでは絶対にない。彼女は子役として、マコトに立派に熱演していた。演出家と脚本家とスタッフに教えられたこと&言われたことをよく理解し、素直で可愛らしい熱演だった。将来性も十分だと信じる。是非これからも演技の道に邁進してほしい。

 

 しかし4月の第2週だったか第3週だったか、「アタシの作ったお蕎麦を食べてくれた」「おいしいって言ってくれた♡」と、身をよじって喜ぶ様子の余りの熱さと濃厚さに、ワタクシは演出家の発想と意図がよく理解できず、「これはどうやら、見るのをヤメたほうがいいな」と即座に判断した。

(大阪心斎橋の名店で中華料理を貪った。どこの店でも、平凡な料理が実は一番うまい)

 

 しかしその後も、何しろあの時間帯だ、「見たくない」と思っても、朝メシを貪りながら、コーヒーを飲みながら、または珍しく早起きしてシャワーを浴びた後で、どうしても見えてしまう。お昼の再放送やら、週末のBS一気放送やら、NHKプラスやら、徹底的ちむどん攻撃に晒される。

 

 すると不幸なことに、見てしまった時に限って、マコトに「反省会向き」な、ツッコミどころ満載の回に当たるのだ。

 

 反社会的詐欺に引っかかった兄が、一方的に殴りつけられている。完全な警察案件と思われるその現場に、主人公とその彼氏が徒手空拳で駆けつけて乱闘になる。仮にも彼氏は新聞記者だ。警察に相談すべき案件であることを理解しない新聞記者が、無分別にも自ら乱闘に加わってしまう。

 

 高嶋政伸「二ツ橋さん」という存在も、「おやおやこれは、30年前のTBSドラマ『ホテル』のパロディだったんですかね?」の一言。あの時の「姉さん、事件です」という決めゼリフ、いったいいつ登場するのかと、むしろそれが楽しみになってしまうぐらいだった。

 

「ナポリタンはイタリア料理じゃないんです」についても、あんまりしつこいので、思わずナポリタンを爆食しそうになった。というか、京都・長岡京の名店「フルール」に走って、実際にナポリタンを爆食した。我が愛するナポリタンが攻撃されるなんて、許せないじゃないか。

 

 ナポリタンがイタリア料理じゃないぐらい、そんなに脚本でしつこく言わなくてもいいだろうし、演出家がちゃんと存在するなら、「そこはもっと軽くスッと流した方がいいんじゃありませんか?」と指示した方がいい。

(京都・阪急長岡天神駅前の名店「フルール」のナポリタン。心の底からオイシューございました)

 

 中途半端な沖縄コトバが、妙に強調されるのもおかしい。脚本担当者、制作統括者、実はみんなあんまり沖縄を勉強しなかったんじゃないか。

 

 那覇空港あたりの土産物屋で、沖縄方言をプリントした手ぬぐいかウチワかクリアファイルを買って、面白半分にセリフに盛り込んでいるだけのようにさえ思えてくる。

 

 その種類のお土産って、全国どこにでもあるじゃないか。我が秋田の方言で「んだ」「ばがけ」「がっこ、け」「おが、ぬぎすてな」みたいなコトバに東京弁の翻訳をつけ、Tシャツにズラリとプリントしたのを、この間も目撃したばかりだ。

  

 こういうふうで今井君も、あっという間にちむどん批判の急先鋒に立ってしまいそうになる。

 

「しかし、ちょっと待っていただきたい♡」。批判しているだけじゃ、今のリッケン君♡ミンシュちゃんたちとおんなじだ。何の進歩もないし、頑張った子役をはじめ、汗みずくの奮闘を続けたキャストやスタッフの努力を、あんまり無慈悲&不寛容に踏みにじるべきではない。

 

 そもそも文学や演劇や脚本の世界では、「ツッコミどころ満載」という事態は、別に珍しいことではないのだ。超名作なはずのシェイクスピア「オセロー」「ロミ&ジュリ」だって、むしろ「ツッコミどころしかない」というお祭り状態とも言える。

 

 8月2日の大阪・国立文楽劇場で、今井が4時間も眺めていた「心中天網島」は、近松門左衛門の作品の中でも最もツッコミどころだらけの困った世界。男女の悲劇を眺めつつ、ガラガラの館内は大爆笑の連続になる。むしろ我々は「近松心中モノ反省会」を立ち上げるのが先かもしれない。

(大阪心斎橋の名店で中華料理を貪った。ホテルへの帰り道「今井先生ですか?」の高3生4名と遭遇。「たったいま、先生のB組を受けてました」と大騒ぎになった)

 

 ワタクシはまず、「4月から9月は東京制作、10月から3月は大阪制作」という長く続いた慣例を、この辺でヤメにしていいのではないかと考える。むかしむかしの朝ドラは、4月スタート、翌年3月までまるまる1年の長丁場だった。

 

 そこで「プラス志向提案①」であるが「朝ドラは全て大阪に任せる」というのはどうか。この20年の朝ドラを眺めてみるに、大阪制作のものに名作が多くなかったか。朝15分を明るく爽快に笑って過ごすのには、笑いの聖地・大阪の実力に頼ってみるのもいいのではないか。

 

 NHK大阪放送局の実力は、例えば13時から全国放送している「列島ニュース」でも分かる。何でもかんでも「今の東京・渋谷の様子はどうですか?」、東京一極集中の天気予報だって反省の対象のはずだ。

 

 大阪に配置されているアナの布陣も、東京に決してヒケをとらない。NHK幹部の皆さまは、大阪の実力と重要性と将来性をますます高く評価しているはずだ。「朝の15分は大阪に完全に任せる」というのも、決して悪くない選択だと信じる。

 (大阪心斎橋の名店で中華料理を貪った。「今井先生ですか?」グループとの遭遇は、紹興酒2本カラッポにした直後だった)

 

 ここから派生する「プラス志向提案②」は、「ならば朝ドラの制作を、東京と大阪に限定する必要もないんじゃないか」という発想だ。福岡・札幌・名古屋・広島、ブロックを代表するような支局が、朝15分のドラマを担当する道がひらけてくる。

 

 かつて日曜の昼の少年少女とその保護者を夢中にさせた名シリーズ「中学生日記」は、名古屋局の制作だった。1972年から2012年まで、40年も続いた長寿番組を、名古屋が受け持っていたのだ。

 

 正確には1962年にスタート、「中学生次郎」から始まって「中学生群像」とか「高校生時代」とか「われら高校生」とか、さまざまにタイトルを変えながら、何と50年も続いた。「地方局、侮るなかれ」なのだ。

 

 しかも今や、地方局制作のドラマが次々と話題になる時代。朝ドラでも、「次の半年を福岡に任せよう」「そのまた次は札幌だ」「次々々回は、広島制作だ」ということになれば、地元視聴者もアンチ地元視聴者も、みんなワクワク楽しみに待つに違いない。

 

 こういうことを考えるのは、「ちむどんどん、もし沖縄局の制作だったらどうなっていたかな」を想像してみたからである。仲間由紀恵どん演じる甘すぎママも、もしも沖縄の制作だったなら、もっとずっと厳しくたくましい母、どこまでも頼れる力強いオバア予備軍が、しっかりと描かれていたんじゃないか。

(8月3日、大阪から東京に帰還するヒコーキから、美しい富士が見えた 1) 

 

 地元の若い女優や俳優を発掘するチャンスにもなる。「おはなはん」の樫山文枝も、「水色の時」の大竹しのぶも、「雲のじゅうたん」の浅茅陽子も、「北の家族」の高橋洋子も、確か朝ドラ出演時は「ほぼ新人」の状態だったはずだ。

 

 しかし21世紀に入ってからの20年、新人としてスタートする朝ドラ女優はマレだ。とっくに顔も名前も売れまくっている人気女優たちが主役に選ばれ、「朝ドラで突如として頭角を現した」の類いの大収穫は望めなくなった。

 

 同じことは、脇役陣にも脚本家にもスタッフにも言える。宝の山のはずの子役さえ、「すでに人気の子役」が選択されかねない。「春は東京」「秋は大阪」にこだわるあまり、将来有望な新人女優や、力のある若手脚本家や、統率力のある演出家の誕生の芽が摘まれてしまっている。

 

 確かに、地方局に6ヶ月ものドラマ制作の負担は重すぎるかもしれない。しかし福岡や広島、名古屋や札幌の力量は、20世紀の昔に考えられていたものとはレベルが違う。いちど試してみる価値はあるはずだ。

(8月3日、大阪から東京に帰還するヒコーキから、美しい富士が見えた 2)

  

 もしも今井君なら、まず企画を公募する。朝ドラ企画の全国コンクールを実施するわけだ。コントみたいな脚本しか書けない忙しすぎる既存の脚本家に頼るから「反省会」になってしまうので、日本中から例えば1ヶ月分の脚本と十数枚の絵コンテを募集して、その中から最高の企画を1本選択する。

 

 あとは、その企画をどの放送局に担当させるかを決める。というか、選ばれた企画立案者と徹底的に協議する。もしも「半年では負担が重すぎる」というなら、担当局の実力次第で、3ヶ月・4ヶ月、いや逆にまるまる1年、そこは臨機応変に決めたらいい。

 

 もちろん、今これだけ「反省会」が盛り上がっているんだから、この程度のことはとっくに提案されきっているのかもしれない。もしそうなら、「なーんだ、今井は何にも知らないんだな」ということで許してくれたまえ。

 

 しかしまだそうなっていないなら、ぜひ今度の「ちむどん」を契機に、例えば「ひよっこ」が水戸局制作に、例えば「エール」が福島局制作に、例えば「おかえりモネ」が仙台局制作になるような日を、心待ちにするワタクシなのである。

 

1E(Cd) Michael McDonald:SWEET FREEDOM

2E(Cd) THE BEST OF JAMES INGRAM

3E(Cd) Peabo Bryson:UNCONDITIONAL LOVE

4E(Cd) Four Play:FOUR PLAY

7D(DPl) 文楽:菅原伝授手習鑑②「道行詞甘替」竹本南部大夫・豊竹嶋大夫「安井汐待の段」先代豊竹呂大夫「杖折檻の段」豊竹咲大夫「東天紅の段」先代 豊竹呂大夫「丞相名残の段」竹本越路大夫

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