Sun 220807 立秋/あの日、何をしていたか/昼のいこい/神奈川県各地の大盛況 4254回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 220807 立秋/あの日、何をしていたか/昼のいこい/神奈川県各地の大盛況 4254回

 もう、立秋がやってきた。今日からは秋である。外ではコオロギ君たちが盛んにコロコロお歌を歌っている。「風の音にぞ おどろかれぬる」の季節であるが、東京・代々木公園あたりでは夕暮れからコオロギの合唱が始まり、そのまま夜明けまで激しい大合唱が続く。

 

 朝は、午前5時が境い目、夕暮れは午後6時が境い目。早朝のコオロギ大合唱は5時まで続いて、空が明るくなるとすぐにセミ君たちに引き継がれ、7年を暗闇で生きたセミ君たちの一世一代のセミ時雨は夕暮れ6時まで続き、間もなくセミ時雨はコオロギ軍団にそのライブ空間を譲る。

 

 ワタクシのオウチの周囲では、そろそろカネタタキ一家の準備も整っているだろう。10年以上前からここに住みついたカネタタキ一家であるが、最近はずいぶん活動領域を広げて、付近の町内全域でチンチン&チンチン、信心深そうな鉦の音が10月下旬まで静寂を支配する。

(7月、文学ネクタイを断捨離。ホテルニューオータニ内「銀座 田屋」のショップで購入。「老人と海」「車輪の下」などの文字とともに、書籍が重ねられたデザインが印象的だった 1)

 

 まあ諸君、明日は8月8日、あの7月8日からちょうど1ヶ月が経過する。軽妙なユーモアが身上の人だったから、どうも暗い表情で振り返るのに困難を感じるが、安倍元首相が暗殺されてから、もう1ヶ月が過ぎるのである。

 

「あの時、どこで何をしていたか」。人々はおそらく事件から十数年、そのことを語りあい続けるのである。ケネディの時もそうだった。半世紀にわたって人々は「あの時、どこで何をしていたか」を夢中で語りあい続けた。

 

 ワタクシは7月8日午前11時30分、馴染みの床屋のイスに案内されて、「いつも通り、頭もヒゲも4mmのバリカンでスッキリやってください」とお願いした直後だった。

 

 ワタクシの馴染みの床屋さんは、まだ30歳代に入るか入らないかの若い人なのに、何故か昭和レトロに凝っていて、店内の装飾から運営の手法まで、全て念入りに昭和レトロでまとめていらっしゃる。

 

 客層もやっぱりその昭和レトロが気に入って通ってくるので、店内を流れる音楽も昭和レトロなジャズの有線放送である。すると当然のように、昭和レトロを直接体験してきた今井君が、次第にこの店の中心的存在となってしまう。

(7月、文学ネクタイを断捨離。ホテルニューオータニ内「銀座 田屋」のショップで購入。「老人と海」「車輪の下」などの文字とともに、書籍が重ねられたデザインが印象的だった 2)

 

 だからワタクシは、1ヶ月に1度ずつ、正午前にこの店を訪れる。というか、普段は12時ピッタリにこの店を予約する。若い店主は、ジャズの有線ラジオをNHKの昼のニュースに切り替え、店内はますます昭和レトロな「お昼のニュース」の声が支配する。

 

 NHKラジオのお昼のニュースは、普段は野村正育アナが読み上げる。確かに今や、NHKのエースは高瀬サンに井上二郎サン、三条君に利根川君に井上君に高井君であるが、つい10年前のエースは、何がどう転んだって野村正育アナだった。

 

 しかし諸君、何ともアナログなNHKラジオのお昼のニュースで、10年前のエースが原稿を淡々と読み上げる声は、ほとんど昭和中期のカホリに満たされる。大阪万博のニュース、ミュンヘンやメキシコシティや東京オリンピックのニュース、アポロ月面着陸のニュース、それらはみんな、こんな雰囲気で伝えられたんじゃあるまいか。

 

 2022年7月8日、ワタクシがこの床屋さんに予約した時刻は、11時30分。何しろ自宅から徒歩10分の店だから、予約した時刻より少し早く到着して、ニュースの最後の原稿を担当アナが読み上げている時間帯だった。

(同時に購入した数学ネクタイ。こちらも近いうちに断捨離することになりそうだ)

 

 昼過ぎからラジオでは「昼のいこい」が始まる。NHK「昼のいこい」は、まさに昭和レトロの代表格であって、放送開始は1952年、実際には1949年「農家のいこい」から始まった番組だから、すでに70年を超えるスーパー長寿番組である。

 

 番組は、リスナーから寄せられるハガキを紹介することを中心に据える。「ハガキ」はやがて「FAX」という名のクロフネに駆逐されかけたが、FAXはやがて撤退して再びハガキの1人舞台に戻った。

 

「ハガキ」を書いてくる人々は、長く「農林水産通信員」と呼ばれていた。「何だそりゃ?」であるが、さすがタモリどんはその辺にすかさず注目して、彼の「オールナイトニッポン」の中に「夜のいこい」のコーナーを作り、夜の農林水産通信員からのハガキをつのった。

 

 もしかしたら、今でもヨウツベで「タモリのオールナイトニッポン」を検索すれば、「夜のいこい」のコーナーを聴くことができるかもしれない。高田浩吉「白鷺三味線」のコーナーとほぼ同時期、1980年代序盤の名物コーナーだった。

 

 しかしそうやって徹底的にパクられても、NHK「昼のいこい」には、ヒルむ様子は全くなかった。何しろテーマ曲が古関裕而の作曲というのだから、昭和レトロも何も、甲子園の高校野球に勝るとも劣らぬ長い歴史を誇る。

(断捨離するもしないも、首のところがこんなふうに擦り切れてしまった)

 

「農林水産通信員」はやがて「ふるさと通信員」と名前を変えたが、リスナーからのハガキを中心に、山田敦子・内藤啓史などNHKの名物アナたちが、マコトにホノボノと日本の昼の時間を支えてきた。

 

 まあ諸君も機会があったら、是非「昼のいこい」のホノボノぶりを経験してくれたまえ。今はちょうど甲子園の高校野球中継が始まって「昼のいこい」はしばらく休止中であるが、お昼12時15分、古関裕而の音楽とともに「昼のいこい」が始まれば、ラジオの周囲は一瞬で高度成長期にタイプスリップする。

 

 行きつけの床屋の若い店主に、「どうして今どき『昼のいこい』なんですか」と尋ねてみたことがある。何しろ昭和レトロ好きな若者だから、「自分でも古すぎるとは思うんですが、古すぎて返って面白いじゃないですか」と、笑って答えるだけだった。

(ワタクシなりの「献杯!!」は、7月中旬「銀座ライオン」の個室にて)

 

 7月8日、今井がレトロな床屋の椅子に座ったところで、11時半のラジオはもう「昼のいこい」へのスタンバイ状態。「昼のいこい」の世界に導く助走のようなハガキが読み上げられ、1960年代のジャズが流れて、いよいよ「昼のニュース前の最後のオハガキ」が読み上げられ始めた。

 

 ところが、そのハガキの1行目を担当アナが読み終わったところで中断、「それではここでニュースをお知らせいたします」と、少し緊張したアナの一言が入った。

 

「夏になると必ず、懐かしい祖父母の家を訪れます」という一行を読んだだけでいきなり「ニュースです」とは、よほどの大事件を予感させた。それが「安倍元首相暗殺」の知らせだった。

(7月13日、横浜・二俣川の控え室にて。二俣川の夏の講演は、この数年の定番になっている)

 

 今井は、4mmカットの前に頭を洗ってもらっている最中。どうしてこの日この時に4mmカットが必要だったかといえば、7月8日の午後7時から、ワタクシの授業がYouTubeで90分、ナマ中継される予定だったからである。

 

 そこから60分、ワタクシは床屋さんのラジオでずっと安倍元首相銃撃のニュースを聴いて過ごした。大ファンだったわけではないが、しかし元首相銃撃などという前近代的惨劇へのショックはあまりにも大きかった。

 

 それにもかかわらず、19時からは神奈川県新百合ヶ丘の会場から、YouTubeでワタクシの授業を全国同時ナマ中継しなければならない。13時、「ほぼ僧侶」な姿に戻ったワタクシは、徒歩で我が部屋に引き上げた。

 

 その日の「全国同時ナマ中継」は、当然のことではあるが、思ったほどの成果を上げられなかった。ホントなら、大ベテラン今井が登場する以上、せめて10万アクセスは超えたかった。しかし実数は約7万アクセス。ちょうど今井の授業が始まった時間帯に、元首相の無念の死が伝えられた。

(横浜西口、200名の大盛況。スタッフの皆様の奮闘に感謝する)

 

 新百合ヶ丘の会場も、やっぱりシーンと静まり返ってしまった。普段なら大爆笑の連続に沸きかえる講義内容であるが、何しろのべ10年以上、全世界と堂々とわたりあった元首相が凶弾に倒れた直後だった。今井の授業に何もかも忘れて大爆笑という雰囲気ではなかった。

 

 しかもあの晩は、「南武線が運転見合わせ」の不運も重なった。会場の新百合ヶ丘は、JR南武線もまた主要な交通手段。いつもなら400名近い参加者で超満員になる会場は、まず「キャパ1/2ルール」で半分の200名へ、南武線ストップでそのまた2/3 の130名。意気消沈のガーラガラ状況をYouTubeで中継するしかなかった。

 

 諸君、ワタクシにとっての「あの日」は、以上のような記憶とともに残ることになった。あの直後、7月13日には神奈川県二俣川で120名、7月14日は横浜西口駅前で約200名、こんな時代にマコトに嬉しい大盛況が連続したが、やっぱり手放しで喜ぶ気持ちにはなれなかった。

 

1E(Rc) Muti & Philadelphia:PROKOFIEV/ROMEO AND JULIET

2E(Cd) Midori & Mcdonald:ELGAR & FRANCK VIOLIN SONATAS

3E(Rc) Walter & Columbia:HAYDN/SYMPHONY No.88 & 100

4E(Rc) Solti & Chicago:R.STRAUSS/DON JUAN ・ ALSO SPRACH ZARATHUSTRA・TILL EULENSPIEGEL’S MERRY PRANKS

5E(Rc) Collegium Aureum:HAYDN/SYMPHONY No.94 & 103 

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