Tue 220726 女優島田陽子、死去/鶴のマネする鷺坂伴内/京都下鴨・浅井食堂 4248回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 220726 女優島田陽子、死去/鶴のマネする鷺坂伴内/京都下鴨・浅井食堂 4248回

 女優の島田陽子さんが亡くなった。69歳、大腸ガンだったという。亡くなった病院は東京都渋谷区、ワタクシのオウチのすぐそばだった。ご冥福をお祈りする。

 

 ワタクシがまだホンのコドモの頃、我が母上が見ていたTVドラマ「続・氷点」が、島田陽子さんとの出会い。その後NHK大河ドラマの常連となっていったが、その他にも「光る海」「華麗なる一族」「白い巨塔」「陽炎の女」など、ゴールデンタイムにテレビをつければ。いつも島田さんがヒロインや準ヒロインで活躍していた時代があった。

(6月猛暑の日々、ワタクシは京都鴨川べりの散策を連日満喫していた。料亭の「川床」も、すでに稼働し始めていた)

 

 しかし何と言っても、島田陽子と言えば「銀座わが町」である。NHKの水曜午後8時、銀座の老舗レストラン「ぎんざ亭」と、犬猿の仲にある老舗天ぷら屋「江戸春」の、マコトにコミカルな確執を描いた1年もののホームドラマだった。

 

 天ぷら屋「江戸春」のモデルは、銀座の「天国」。天国と書いて「てんくに」と読む。一方「ぎんざ亭」のモデルは「煉瓦亭」。どちらの店も、今もなお銀座のド真ん中で健在である。

 

 主役級の女優&俳優がぞろぞろ、惜しげもなく脇役で登場する驚くべき豪華な配役だった。中村玉緒・森光子・三木のり平・フランキー堺・藤岡琢也・原田大二郎・黒柳徹子・宇野重吉・北林谷栄・岸田今日子・小倉一郎・新藤恵美。これほど豪華なテレビドラマは、他局ではとても考えられなかった。

 

 当時のトップアイドル・郷ひろみどんも「南郷ひろし」の役で登場した。実はワタクシ、一昨日の深夜にNHKをぼんやり眺めていて、65歳すぎて退職したばかりの男の悲劇を郷ひろみどんが演ずるホームドラマの予告編を眺めていた。「郷ひろみって、昔からそれなりに演技がウマかったよな」と、ひとり呟いていたのである。

 

 まさにその瞬間に思い出したのが「銀座わが町」。スターを目指す「南郷ひろし」とヒロイン島田陽子とのやりとりは、今も鮮明に記憶に残っている。もちろん、だからと言って「ムシの知らせだった」とまで言うつもりはないが、その直後にネットニュースで島田さんの訃報を見た。

(京都・鴨川でエサを探すアオサギどんの勇姿。ワタクシは、シラサギもアオサギも大好きだ)

 

 コドモの頃、今井君と同じクラスに池田君という野球部の大スターがいた。確かフルネームは池田聡(さとし)、スポーツ万能の「エースで4番打者」。努力に努力を重ねてやっとのことで「6番・セカンド」にたどり着いた今井君なんかとは、まさに月とスッポン、雲泥の差であった。

 

 当然のことだが、クラスの女子はみんな池田君に夢中。勉強しか出来ない今井君なんかには目もくれない女子諸君が、池田君の一挙手&一投足に甲高い嬌声をあげていた。

 

 池田君と今井君、あまり会話は交わさなかった。ヒーローである池田君から見れば、今井君は余りに地味な存在。確かに実力テストでも定期テストでも必ずトップにいることでナンボか目立っても、だからと言ってヒーローで大スターである彼が、仲良くしなきゃいけないほどの仲間でもなかった。

 

 ところが諸君、意外なことにこのヒーロー池田君が「銀座わが町」の大ファンだったのである。当時は、コドモがテレビをみると言えば間違いなく民放であって、ドリフターズに巨泉(キョセン)&前武(マエタケ)、プロレスにウルトラマン、むかしむかしの民放はNHKなんか全く相手にしていなかった。

 

 だから、野球部の大スターが「銀座わが町」の話で今井と盛り上がり始めた時、クラスには他についてこられるヤツがいなかった。

 

 こうして「銀座わが町」のテーマ曲をともに大声で歌い、先週のストーリーから今週のストーリーを予想し、来週から最終回への展開を占うのが、ヒーロー池田と地味な今井をつなぐ稀有なキズナとなった。遥かなむかしの女優島田陽子に、感謝&感謝、大感謝なのである。

(6月下旬、猛暑の中の下鴨神社。さすがに参拝する人も少なかった 1)

 

 さて、まだまだ2022年6月の関西の今井について、語らなければならいないことがナンボでも残っている。

 

 6月中旬までの京都ウォーキングは、嵐山から嵯峨野を抜けて大沢池&広沢池に至るルートだったが、猛暑の6月後半になると、さすがに強烈な暑さにめげて、四条大橋から北大路や下鴨神社まで鴨川を伝って北上するルートを選ぶようになった。

 

 三条大橋の下の日陰に、横笛の練習に余念のないヒトが現れたのもこの頃である。考えてみれば620日ごろ、祇園祭の山鉾巡行まで、すでに1ヶ月を切っていた。3年ぶりの山鉾巡行だ。横笛を担当する人々も、そろそろ勘を取り戻しておかなきゃいけなかっただろう。

 

 涼しげな鴨川の流れには、たくさんのシラサギやアオサギが闊歩して、例の鋭い視線でジッとエサを狙っていた。ワタクシは、白くても青くても、とにかくサギが大好きだ。日本文学ではどうもサギの評判が悪くて何だか可哀想になるが、あの長い首を軽くかしげた様子がたまらないじゃないか。

(6月下旬、猛暑の中の下鴨神社。さすがに参拝する人も少なかった 2)

 

 むかしむかしの「日本霊異記」には、サギは神を汚す存在として描かれている。枕草子でも、清少納言どんは例の皮肉な調子でサギをけなしている。夏目漱石は「夢十夜」でサギの不吉さを述べ、泉鏡花は「白鷺」やら「青鷺」やらの中で、サギへの恐怖心さえ書いている。

 

「仮名手本忠臣蔵」に、鷺坂伴内(さぎさか・ばんない)という脇役が登場する。悪役だが滑稽な失敗を繰り返す人物で、歌舞伎の世界ではこのタイプを「半道敵」と呼ぶ。半道敵、読み方は「はんどうがたき」である。カタキ役だが、コミカルな失敗を繰り返して悲劇の舞台を和ませる。

 

 こういう半道敵は、シェイクスピアの戯曲にも少なくないし、むかしむかしのテレビ時代劇には必須の登場人物。主人公の同心やオカッピキのライバルを自称しながら、実は主人公の引き立て役に過ぎない悪役の同心やオカッピキ、諸君もナンボでも見たことがあるだろう。

 

「忠臣蔵」の鷺坂伴内は、まさにその系列の半道敵のルーツといっていい。吉良上野介の家来、浄瑠璃の世界で吉良上野介は「高師直(こうのもろのお)」として登場するが、赤穂浪士・早野勘平の彼女 → お軽(おかる)を追い回してストーカー&セクハラ行為を繰り返し、しかも常に情けない失敗に至る。

 

 その鷺坂伴内が最初に忠臣蔵の舞台に登場する時、浄瑠璃では「鶴のマネする鷺坂伴内」とコミカルな語りが入る。「ツルのマネするサギ坂伴内」であって、あの悠然とした高貴なツルと、下品な甲高い鳴き声のサギを比較し、どれほど鷺坂が下卑た人物であるかを、この一瞬で暗示してみせるのである。

(泉鏡花「註文帳・白鷺」。神田神保町の古本屋「文庫川村」で購入。購入してからすでに40年が経過する)

 

 こんなふうに、近世のヨーロッパ文学や中国文学では、霊の世界との幽玄な結びつきを暗示する存在として描かれることも少なくないサギ君たちは、日本ではマコトに評判が悪いというか、辛辣な揶揄の対象というか、少なくとも余り愛される存在ではなかったようだ。

 

 ワタクシとしては、そういうサギの扱いに抗議の声をあげたいのである。あえて言うなら、サギを肯定的に描いてくれたのは、昭和中期に高田浩吉(たかだこうきち)が歌った「白鷺三味線(しらさぎじゃみせん・1954年)」ぐらいである。

 

「シラサギは、小首かしげて水の中。ワタシとオマエも、そーれそれそれ、そぅじゃないか。ああピーチクパーチク、深い仲」。さすがタモリどんは、40年も前のオールナイトニッポンでこの「白鷺三味線」を大絶賛、番組内に「白鷺三味線コーナー」まで登場した。ちょうど島田陽子さんが大活躍していた時代である。

(京都下鴨「浅井食堂」のハンバーグ定食。上がライス版、下がパンのバージョン。2日連続で訪問した甲斐があった)

 

 さて諸君、こんなふうにマコトにとりとめのないことを考えながら、ようやく下鴨神社にたどり着いたワタクシは、下鴨神社から西に徒歩5分、前日に続いて「浅井食堂」を目指した。ごく普通の京都の町の洋食屋さんに、東京モンが2日続けて通うとすれば、それはやっぱりタダゴトではない。

 

 浅井食堂のハンバーグランチ、これはさすがに2日連続で通わなきゃいけない逸品だ。楕円球のハンバーグ、まずこれが絶品。大きなエビフライ、これもまた絶品。しかも「タルタルを別添えで」とお願いすると、それだけで「酸っぱいのが苦手なんですね」と、こちらの好みをスカッと見抜いてくれる。

(もちろん、大阪のランチも満喫した。なんば地下街「岡長」の鯛カブト、オイシューございました)

 

 前日は他のお客さんをワタクシが待たせてしまったが、この日は逆にワタクシが外で待たなければならない満員の盛況。「30分程度」と言われたので、せっかくだから下鴨神社まで戻って、ちゃんと観光してくることにした。

 

 この日もまた炎暑の1日、下鴨神社もやっぱり油照りであっという間に汗びっしょりになったが、鬱蒼と生い茂った神社の森の一角に、思いがけないほど爽快な涼風が吹き抜け続ける場所を発見。「さすが下鴨神社♡」と感激しながら、その場所に立ち尽くして30分の経過を待った。

 

 やがてスマホに店からの連絡が入り、汗みずくの今井君はようやく入店に成功。前日と同じ窓際のテーブルで、前日と同じハンバーグ定食を注文した。前日が「パン」だったから、この日は「ライス」ということにした。

(さすがの大阪にも、旨くない店がある。なんば地下街の串揚げ屋、こりゃダメでござったよ)

 

 お隣のテーブルでは、地元のオバサマ4人が大はしゃぎの最中。彼女たちのランチが全て胃袋に収まった後、この店自慢の巨大なデザートを4人前注文して、周囲のお客から大きな歓声が上がるほどの巨大デザートを囲み、まさに宴♡酣(たけなわ)である。

 

 まあ、それも致し方ない。あの頃は、ちょうど第6波と第7波の中間点。感染はすっかり収まって、野球でもサッカーでもお相撲でも「もう通常通りの観客を入れていいんじゃないか」とみんなが言い始めた幸福な時期だった。何とかまた早く、あの幸福な日々が戻って来てくれないだろうか。

 

1E(Cd) Kubelik & Berliner:DVOŘÁK/THE 9 SYMPHONIES 4/6

2E(Cd) Kubelik & Berliner:DVOŘÁK/THE 9 SYMPHONIES 5/6

3E(Cd) Kubelik & Berliner:DVOŘÁK/THE 9 SYMPHONIES 6/6

4E(Cd) Avner Arad:THE PIANO WORKS OF LEOŠ JANÁĈEK

5E(Cd) Akiko Suwanai:INTERMEZZO

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