Sat 220507 ぶぶ漬け、ええじゃないか/野むら山荘/軍鶏鍋と野草と骨酒を満喫 4208回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 220507 ぶぶ漬け、ええじゃないか/野むら山荘/軍鶏鍋と野草と骨酒を満喫 4208回

 4月16日、今回の旅のうち「京都&大阪の部」はこの日で終了。ここから一気に北に展開して、夕暮れの伊丹空港から秋田空港に飛び、秋田・酒田・大館・函館と旅して、最終日4月20日に、函館 → 長万部 → 倶知安 → 余市 → 小樽と、「いかにも乗り鉄」な函館本線一周の旅を企画した。

 

 だから16日の午前中には、本来ならもう京都のホテルをチェックアウトしなきゃいけないのだが、やっぱり名残惜しい。しかもワタクシ、このホテルチェーンでもやっぱりお馴染みサン。「チェックアウト → 16時」と言ふワガママが可能なのである。

 

 そこで諸君、一計を案じたワタクシは、京都のランチをシコタマゆったり満喫しようと決意。選んだ店は京都大原「野むら山荘」、3月中旬にも一度訪問した店であるが、あの時「近いうちにまたお邪魔します」と約束したし、仲良くなった店の人たちも「では4月、ぜひテラス席でのランチを」と勧めてくれた。

 

 勧められて遠慮するような今井君ではない。幸い、宿泊していた「宝ヶ池プリンスホテル」からなら、大原まではそんなに遠くない。これがもし京都駅前や四条河原町なら、「大原まで往復タクシー」はかなりオサイフにも痛いルートだが、宝ヶ池と大原、まあそんなに非常識な金額にはならない。

 (大原・野むら山荘にて。囲炉裏の炭火で軍鶏鍋をいただく)

 

 むかしむかしの今井君は「勧められても、意地でも遠慮する」というタイプ。極めて引っ込み思案な人間だった。何が何でも遠慮、意地でも遠慮、どんなに相手が温かく招いてくれても、ほとんど拒絶するような勢いで固く&固く遠慮した。

 

 世の中に「固辞」という言葉があるが、まさにその固辞の塊というか、ミスター固辞というか、固辞することにばかり懸命で、どれほど人の好意を無にしてきたか、どんなに人の気を悪くさせていたか、かつての固辞の山に、今となって愕然としている。

    (4月の京都大原、野むら山荘を再訪する)

 

 そういう依怙地な今井君が、この15年ですっかり変貌した。まるでプラスとマイナスが入れ替わったかのように、人の好意に磁石のようにピタッと吸いついて離れない。好意も厚意も拒絶しないでニコニコ、「厚意には応じた方が、相手だって10倍も20倍も嬉しいはずだ」と考えて、かつての遠慮のシガラミを振りほどいた。

 

 すると諸君、「世の中ってこんなに楽しかったんだ」と実感する日々に変わった。3月に大歓待を受けたお店の人に「4月にまたいらしてください」「テラス席を満喫してください」と熱いオススメを受けたら、「京都人のイケズ」なんか気にせずに、どんどん店に飛び込んでいったほうがいい。

(囲炉裏の鉄瓶で湯を沸かしながら、「本日の御献立」を読む。春の野草・イワナ・鯉の造り・うなぎ・軍鶏鍋・〆の手打ち蕎麦。こりゃ楽しそうだ)

 

 世の中には、京都人のイケズについて、昔ながらの噂がいっぱいだ。「元気なお子さんですね」と言われたら、それは「お子さんを静かにさせてください」という意味だとか、「よく知ってはりますなあ」と言われたら「ウンチクは聞きたくありまへん」だとか、まあその種の京都コトバの裏の意味を言うわけだ。

 

 誰でも知っている「ブブヅケどうどす?」の類いの話である。「ぶぶ漬けどうどす?」と言われたら「もうそろそろ帰ってください」という意味があるから、いい気になって「ではいただきます」と応じたら、「アホちゃうか?」と陰口をたたかれる。そういうオハナシだ。

(前菜の風景。こごみ・ホタルイカ・萱草・空豆・たけのこ。若い亭主の工夫がいっぱいだ)

 

 しかし諸君、そうやって「京都イケズ」やら「笑顔の裏のイミ」やらを心配するのは、かえって相手に失礼じゃないか。今の今井君はちゃいますねん。万が一「ぶぶ漬けどうどす?」と尋ねられたら、そのあまりにクラシックな伝説のイケズに、まずは激しく噴き出すに違いない。

 

「おお、ぶぶ漬け、いいじゃないですかぁ」「それより山芋とろろ、これから一緒に食べに行きませんか?」「実はワタクシ、麦飯に山芋とろろをかけていただくのが大好き、山芋とろろでまず麦飯一杯、その後はお茶漬けにして、オヒツのゴハン3人前でもカラッポにしちゃいます」と、徹底的に明るく打ち明ける。

 

 そして実際に相手を山芋とろろの店にお誘いして、むしろこちらのオゴリで麦飯&山芋とろろを注文し、その後は麦飯を追加してでもお茶漬けをサラサラと貪り、「またこんど、この店に来ましょう」「いつにしますか?」と、予約までとって帰る勢いなのだ。

  (鯉のお造り。鯉なのに「あらい」じゃないのが新鮮だ)

 

 だって諸君、間違いなくそのほうが人生は楽しい。どんどん他者の厚意&好意に応じたまえ。たとえイケズに固まっている相手だって、そうやってこちらが積極的に好意&厚意に応じていけば、いつの間にか向こうもどんどん楽しくなって好意の応酬に加速度がつき、もう悪意もイケズも入り込む余地がなくなってしまう。

 

 と言ふわけで、1ヶ月ぶりの京都大原「野むら山荘」に意気揚々と乗り込んだ。前回は気の遠くなりそうな広大な広間だったが、気温の下がったこの日は、囲炉裏の炭火がマコトに嬉しい暖かいお部屋に通された。確かにギュッと冷え込んだ日で、約束の「テラス席」では長い時間を過ごせそうになかった。

      (軍鶏鍋の前に、うなぎのつけ焼き)

 

 30歳代前半の若い亭主が献立の全体を取り仕切る。春の野草をふんだんに取り入れたたっぷりの前菜から、鯉のお造り・イワナの一夜干し・うなぎのつけ焼きまでが、彼の担当であるらしい。

 

 特に「春の野草」にこだわりがあって、「こごみ」「すいば」「タンポポ」「つくし」「わらび」「たけのこ」「花山椒」「萱草」、もちろん「萱草」と書いて「かんぞう」と読むのだが、ワタクシが普段は滅多に食べない野草の数々を、マコトにおいしく食べさせてくれた。

 

 亭主の父上が「軍鶏鍋」の担当。もともとは父上が店主で、ずっと軍鶏鍋で売ってきた店なのだが、息子さんの成長に伴って今や担当するのは「鍋だけ」、しかし諸君、軍鶏の肉もさることながら、豊富なキノコ類も、たっぷりのゴボウも、間違いなく全て絶品だ。

 

 前回の訪問の時は、息子さんの奥方かと思っていたご婦人が、お酒その他ドリンクの担当。しかし今回判明したのは、息子さんの「奥方」ではなくて「母上」だったという事実である。いやはやあんまりお若いので、すっかり奥方ないしカノジョかと思っていた。

(ドリンクには、ベルギービールもある。大好きなシメイブルーをいただく)

 

 そのドリンク類であるが、なんとなんとメニューにベルギービールもある。10年前の1月のブリュッセル・滞在以来、ワタクシはベルギービールの大ファンであって、大阪の某加盟校サンに招かれるたびに梅田の名店「BUZZ」でいただいた「シメイブルー」の味が忘れられない。

 

 ただしどんなに好きでも、いつまでもビールばかり飲んでいたんじゃ、ポンポンがすぐにパンパンになって、春の野草も軍鶏鍋も入る余地がなくなってしまうから、シメイブルーは1本で切り上げて、この店を再訪したお目当の1つでもあった「イワナの骨酒」に切り替えた。

 

 これがまた絶品なのである。30cmほどのお魚の形の器に、焼いた大きなイワナが1匹まるまる入っていて、そこに日本酒の熱燗を注ぎ込む。香ばしい焼イワナの出汁がお酒にどんどん出て来て、お酒でありながら実に栄養満点、イワナの濃厚スープをいただいているようなものである。

 

 あんまりヘルシーなので、ワタクシはイワナの骨酒を4合、あっという間に痛飲した。思えばこの直後に京都から伊丹空港に向かい、ビューンとお空を飛んで夜の秋田空港に向かうのであるが、その厳しい行程のこともすっかり忘れてしまっていた。

(イワナ骨酒の風景。この中に焼いたイワナがまるまる1匹。熱燗の日本酒を注ぐと、イワナの出汁が文句なく旨い)

 

 そして最後に「〆のお蕎麦はどうなさいますか?」ということになる。せっかくの軍鶏鍋だ、最後に残った濃厚な旨みの出汁で「雑炊」ということにしてもいいのだが、さすが人生の大ベテラン今井は、ここで若い店主にむしろこちらから提案するのである。

 

「お蕎麦を、軍鶏鍋の出汁でいただきたいんですが」。要するに「鴨南蛮」「鳥南蛮」と同様であって、この場合はもちろん「軍鶏南蛮」。シャモにゴボウやキノコやネギの出汁も加わって、そりゃ旨くないはずはない。

 

 いやはやこうして今井の肉体は、一昨夜はクマ、昨日はビーフとチキン、本日は軍鶏とキノコと野草とイワナ、どこまでも&どこまでも健康になって、まだ100年は生きられそうな勢いなのだ。

 

1E(Cd) RichterBACHWELL-TEMPERED CLAVIER 2/4

2E(Cd) RichterBACHWELL-TEMPERED CLAVIER 3/4

3E(Cd) RichterBACHWELL-TEMPERED CLAVIER 4/4

4E(Cd) Glenn GouldBACHGOLDBERG VARIATION

7D(DMv) NIGHT AND THE CITY

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