Tue 220426 旅の作り方/旅のテーマは花から山へ/高遠の桜と木曽駒ケ岳の勇姿 4200回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 220426 旅の作り方/旅のテーマは花から山へ/高遠の桜と木曽駒ケ岳の勇姿 4200回

 旅の計画と言ふものには、さまざまな育ち方があるだろう。ゲーテがイタリア紀行を計画した時や、松尾芭蕉が奥の細道の計画を練った時には、まず「何が何でもそこに行きたい」という場所が点々とあって、その点と点と点を線で結べば、旅の概略はごく自然に出来あがる。

 

 あとは、その線上に浮かび上がる「ここにも寄ってみようかな?」の類いの準・目的地もプラス。直線はジグザグ&ジグザグ、折れ線グラフのように細動して、旅に豊かさが加わっていく。

 

 ゲーテの「イタリア紀行」にとっては、目的地のローマやフィレンツェに向かう途中、ドイツ・イタリア国境のガルダ湖やコモ湖での滞在がそれである。

 

 確かゲーテは、ガルダ湖畔の町マルチェージネでスッタモンダに巻き込まれるが、その種の小さな珍道中やスッタモンダの連続こそ、実は旅の豊かな醍醐味なのである。

  (高遠の桜。中央アルプス・木曽駒ケ岳とともに 1)

 

 さすがに「奥の細道」のほうは、簡潔を旨とする俳諧師の作品だから、余計なスッタモンダや珍道中の類いは紀行文からしっかり排除されているけれども、諸君、「奥の細道」を真の意味で満喫するには、彼の旅の隠された珍道中を想像することにあるんじゃなかろうか。

 

 どこでどんなスッタモンダをどう切り抜けたか。同行の曽良がどんな失敗を仕出かし、芭蕉が師匠としてその失敗をどう収めたか、そういうことを彼の足跡をたどりながらニヤニヤ想像すれば、5ヶ月に及ぶ旅の厚みは数倍&数十倍に膨れ上がる。

 

 そんなスーパー偉人たちとサトイモ君を同列に論ずれば、日本中の仏像と四天王と十二神将像が一斉にブッと噴き出して、しばし日本は大爆笑の渦の中をクルクル、さぞかし目が回るだろうが、まあ許してくれたまえ、ワタクシの旅の履歴書の濃厚さは、ゲーテどんや芭蕉センセに勝るとも劣らない。

(中央本線・茅野駅からバスで45分、ついに高遠まで来てしまった)

 

 2019年までのワタクシの旅は、基本的には同じ組み立て方をしていた。まずはマラケシュとフェズとカサブランカ、どうしても行きたい町があって、それでまず「モロッコに旅立とう」と決める。するとその3点を結んで、例えばエッサウィラなどの準・目的地が候補になって、点も線も豊かに充実していく。

 

 南イタリアでもカタルーニャでも、ポルトガルでもオランダでもノルウェーでも、どこの旅でもスケジュールはそうやって出来上がっていく。たった2週間か3週間の旅なら、そういう作り方が最も無難なはずだ。

 

 しかし2020年以来、コロナの妨害にあってションボリしていた今井君の愚かで哀れなココロは、そういう無難な計画の作り方を放棄したくなっている。どうせ国内だ、いくらか無謀で無計画な旅を志しても、別に文句は言われない。

 

 すると、点と点と点を線で結んで「自然な」行程を作っていくより、何らかの旅のテーマを描いて、行程的には明らかに不自然や無理があっても、そのテーマに沿ってがむしゃらに突き進むのも悪くないだろう。むかしから「無理が通れば道理が引っ込む」という諺もあるぐらいだ。

(新宿発9時、「あずさ9号」でとりあえず長野県茅野に向かう)

 

 もちろん「テーマ」と言っても、大袈裟な話ではない。「海」でも「砂丘」でも「渓流」でもいいし、「深田久弥」でも「川端康成」でもいい。場合によっては「ダンゴ」「おまんじゅう」「鳥料理」でもかまわない。

 

 もしも「鳥料理」と言ふことになれば、秋田の比内地鶏、名古屋コーチン、徳島の阿波尾鶏、鹿児島の薩摩地鶏など、歯ごたえのある鳥料理を求めて北から南へ一直線、途中もちろん京都に立ち寄って、鴨すき焼きや軍鶏鍋も貪ればいい。

 

 時は、4月。何が何でも「花よりダンゴ」の季節なんだから、花より男子ではなくて、あくまでダンゴを追い求める旅がいい。

 

 今井君は、外側にアンコむき出しのダンゴより、アンコが礼儀正しく皮の中に収まった大人しいおまんじゅう派だ。秋田の「金満」から酒まんじゅう、酒まんじゅうは大阪・十三の酒まんじゅうがいいし、ついでに大阪難波「二見の豚まん」にまで手を伸ばし、広島「もみじ饅頭」、博多「博多通りもん」、鹿児島「かるかん饅頭」と続くのもいい。

  (高遠の桜。中央アルプス・木曽駒ケ岳とともに 2)

 

 というわけで、ルートはいささか非常識でも、テーマに沿って無我夢中で移動する旅だって、ヒコーキと新幹線を駆使すればちっとも難しくない。4月の今井君が最初にテーマとして選択したのは「花」。しかし旅の途中から次第に「山」、中でも「まだ雪をかぶった春山」にテーマが変貌した。

 

 4月10日、いよいよ10日間の旅に出る直前に決まっていたのは、たった1つ、「4月15日に大阪・日本橋の国立文楽劇場で人形浄瑠璃を観る」という予定だけである。

 

 あとは「花」、もちろん季節が季節だから「花」といっても「桜」に限定されそうになるが、チューリップとかスイセンとか、スミレとかレンゲとか、ありとあらゆる春の花を加えていけばいい。

  (高遠の桜。中央アルプス・木曽駒ケ岳とともに 3)

 

 今井君は小学1年だか2年だかまでに「植物の図鑑」を1冊暗記しちゃったツワモノだ。今でも野草を一目見て、ありふれた雑草でも何でも、スパッとその名前と生態を語ることができる。何もテーマを「桜」に限る必要はない。

 

 しかしこの段階では、やっぱり桜。あくまで予定であるが、まず長野の高遠・奈良の吉野山・京都の仁和寺、そこから一気に北上して秋田県角館・青森県弘前・北海道函館とお花見を続ける。途中、もしもチャンスがあれば山形県鶴岡や同じ山形県酒田でも、豪勢な満開の桜が見られそうだった。

 

 ところがテーマは途中から「山」に変わった。2022年4月の日本の山々は、おそらく例年に類を見ないほどの好天に恵まれ、普段なら分厚い雲に覆われて全体像の掴めない春の山々が、眼前に驚くほど美しくその姿をさらけ出した。

 

 南アルプスと中央アルプスから始まったテーマ「山」の旅は、木曽駒ケ岳・富士山・鳥海山・月山・太平山・岩木山、北海道に入って恵山・駒ケ岳・羊蹄山、滅多に全容を掴めない山々の写真を次々と撮影できたのである。

  (高遠の桜。中央アルプス・木曽駒ケ岳とともに 4)

 

 そういうわけで諸君、4月11日から20日までの旅、花と山の旅のオハナシが、これから当分のあいだ続くと思ってくれたまえ。殺伐とした世相ではあっても、あるいは一般人の長文ブログの文章が邪魔になるとしても、4月の花と山の写真だけでも毎日眺めてくれたら、勉強や仕事の疲労がいくらかは慰められると思うのだ。

 

 以上のような考察を経て、4月11日朝の今井君は、新宿駅にそのムクつけき姿を現した。どのぐらい「ムクつけき姿」なのかというに、諸君、そのヒゲのボーボーぶりたるや、今や武蔵坊弁慶に無限に近づいている。

 

 2022年に入ってから、大っきなマスクの陰に隠れて、一度もヒゲを剃っていない。恐るべき山賊的風貌、驚くべき山法師的相貌であるが、諸君、ぜひ次の公開授業で、荒くれ山法師:里芋坊の激烈な姿をナマで目撃してくれたまえ。

    (高遠の桜。ここからは木曽駒ケ岳は望めない)

 

 新宿発、午前9時ちょうどの「あずさ」。むかしむかし半世紀もむかし、「狩人」という兄弟デュオが「8時ちょうどのあずさ2号で、ワタシはワタシはあなたから旅立ちますーー」と熱く盛り上がったものだったが、半世紀前は新宿から松本への旅でさえ、そのぐらい強烈なインパクトがあった。

 

 高遠と書いて「たかとお」。ワタクシが高遠の桜の美しさを知ったのは、数十年前、当時は「国鉄」のカレンダーの4月の写真で、高遠の美しい桜の風景を見た時である。何しろ今井君の父上は国鉄職員。毎年毎年ワタクシは、国鉄のカレンダーを眺めて成長した。

 

 今も「みどりの窓口」には、その後継のJRカレンダーが飾られているから、興味のある諸君は一度「みどりの窓口」を訪れて、係員の背後にぶらさげられたカレンダーを眺めてみてくれたまえ。

 

 どれもこれも圧倒的に美しかったカレンダー写真の中で、今も印象に残っているのが、高遠の桜。112枚、その国鉄カレンダーを15年眺め続けたとして、写真は12ヶ月×15年180枚。180枚の中で一番印象に残っているというんだから、さぞかしキレイな桜だったのだ。

 

 しかし諸君、高遠はマコトに遠い。中央線の「茅野」という駅から、バスが1日4便走っているだけである。「バス」、しかも「たった4便」、この精神的な距離は、大袈裟で申し訳ないが、ワタクシにとってはイタリアやスペインより遠い。今まで高遠への旅を躊躇していた所以である。

 

1E(Cd) RampalVIVALDITHE FLUTE CONCERTOS 2/2

2E(Cd) Anne-Sophie MutterVIVALDIDIE VIER JAHRESZEITEN

3E(Cd) KrauseBACHDIE LAUTENWERKEPRELUDES&FUGEN 1/2

4E(Cd) KrauseBACHDIE LAUTENWERKEPRELUDES&FUGEN 2/2

5E(Cd) Karajan & BerlinerBACHMATTHÄUS-PASSION 1/3

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