Sun 220424 「かぶら家」の思ひ出/皇居・東御苑/4月中旬10日間の旅を決意 4198回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 220424 「かぶら家」の思ひ出/皇居・東御苑/4月中旬10日間の旅を決意 4198回

 春シリーズを締めくくってから、早いものでもう1ヶ月が経過する。あれからまるまる30日、「お前は何をやってたんだ?」と問われると、いやはやまさに絶句するしかない。

 

 3年前までなら、この時期は「海外の旅」と相場が決まっていて、ヨーロッパに中南米に北アフリカ、縦横無尽に世界を駆け回り、今井君の丸い鼻は、天狗のお鼻みたいにツンツン天を突いて得意中の得意だった。

 

 しかし諸君、過去2年はコロナ、今年はコロナ 極悪侵略戦争の真っただ中。ワタクシは呆然として口をパックリ開けたまま、なすすべもなくお部屋の真ん中でどんより座って動けずにいた。

(3月30日、千鳥ヶ淵付近の風景。お堀の向こうに国会議事堂も見える)

 

 何しろ、ワタクシは学部で一応「国際政治」のゼミを選択。担当のK教授は当時まさに新進気鋭の国際政治学者であって、業績を認められて早稲田大学教授からまもなく東京大学教授へと異例のご出世を果たされた。

 

 その昔は、早大教授が東大教授に「昇格」なんてのはありえない世界だったから、K教授の業績は間違いなく素晴らしいものだったはずである。その学説は、ひたすら「相互依存の国際政治学」。ゼミ生はほぼ無条件に教授の学説をマルッと信じ込んだ。

 

「世界中の国どうしが極めて複雑な相互依存関係を構成していけば、力による一方的な現状変更なんか不可能になるだろう。もしも武力で変更しようとすれば、相互依存関係の破綻によって、自らも計り知れないダメージを受けるからだ」というオハナシ。ごくカンタンに言えば、夢みるような楽観論であって、ワタクシはすぐにゼミが大キライになっちゃった。

(3月30日、皇居・東御苑の入り口付近から、千鳥ヶ淵方向を望む)

 

 1980年代から90年代、ベルリンの壁の崩壊と冷戦終結の時代に華々しく大流行した「相互依存」の話、どうやらそれは世界政治における全てのプレイヤーが、100%論理的思考に基づいて行動することが前提の、あまりに楽観的なものだった。

 

 いったん非論理的で感情&衝動優先のモンスタープレイヤーが出現し、「究極の自爆テロ」と言っていい行動に出た場合、相互依存関係はマコトに複雑にこんがらかった手カセ足カセになって、優秀な論理的プレイヤーたちの手足に泥濘のようにからみつく。

 

 古典的というより、中世的ないし原始的と呼んだ方がふさわしい脅迫と破壊の数々に、いわゆる「国際社会」もニッチもサッチも行かなくなって立ちすくむばかり。しかもその「国際社会」なるもの、中国のお偉方に「小さなグループなんか作って」と揶揄されるのも致し方ないほど、極端に先進国だけに偏っている。

 

 ふと、2000代初期に行き詰まった「金融工学」のことを思う。金融工学とは、要するに複雑怪奇な負債構造を人工的に作り出して、そこから多額の手数料を搾り取る手法の研究であって、21世紀初頭の世界経済を大きく混乱させ続けた元凶はこれである。

 

 複雑な相互依存関係というのも、金融工学と相似形の論理のワナだったんじゃないか。いったん非論理を武器とするモンスタープレイヤーが出現し、「気に入らないヤツは破滅させる」と頬を歪めてニヤリとすれば、平和を願ってコツコツ大切に育ててきた相互依存関係が全てワナに変じ、むしろこちらの首を締めはじめる。

  (千鳥ヶ淵の大混雑を避けて、皇居東御苑を散策する) 

 

 いやはや、そういうことばかり考えてお部屋の椅子の上でジッとしたまま、春シリーズ以降の長い時間を過ごした。灯りもつけずにどんより、ひたすら思ひ出に耽って過ごす、オジーチャンみたいな日々だった。

 

 もちろん諸君、楽しい思ひ出ばかりなのである。春の締めくくりの3月26日だって、単独祝勝会の三鷹「かぶら家」で、思いがけない「今井先生ですか?」が相次いだ。

 

 まずは、階段を2階に上がったところでドアを開けてくれた男子。「今井先生ですか?」「ボクはずっと今井先生の授業を受けてました」と、嬉しそうに笑ってくれた。彼は山形県の出身。山形のどこの校舎か分からないが、ずっと今井の授業で大爆笑していたんだそうである。

  (散策路のすぐ近くには、竹橋・国立近代美術館もある)

 

 すると、あとから来たもう1人のバイト店員さんも「なるほど、今井先生だ」と激しく盛り上がり始めた。彼は、九州の出身。彼もまた受験生時代、今井の授業で激しい爆笑を続けていたという。

 

 それまで店の女将は「ごく地味な中年のオジサマ」というスタンスでいたのだが、彼がスマホで今井の動画を見せると「動画ではすごく若くてカッコいいじゃないですか」と陽気に笑った。そりゃそうだ、バイト君が女将に見せたのは、2013年か2014年の東進のテレビCMなのだ。

 

 頭をポンと叩きながら「音読を1020回繰り返せば、みんな頭に入っちゃってるから」のバージョン。または「音読・単語・文法、ミルフィーユみたいに積み重ねていく!!」「奇跡なんか、起こさなくていいから、それよりコツコツ積み上げようぜ」のバージョンかもしれない。

 

 どちらにしても、もう8年も9年も昔の今井、そりゃ若いはずだ。「若いはずですよ、10年近くも昔なんですから」と苦笑すると、女将も「しまった」と思ったのか、「今も若いですよ」「見た目はすんごく若いですよ」「かかかかか!!」と、呵々大笑するのだった。素晴らしい店だった。

(国立劇場から散策して、日本橋高島屋に至る。詳細は明日の記事で 1)

 

 問題は、そこから先の日々である。日々のニュースにションボリしっぱなしで、ようやくのことで重い腰をあげたお花見も、「とても桜どころじゃない」と気が滅入るばかりだった。

 

 3月30日にはせっかく国立劇場前まで行ったのに、千鳥ヶ淵方面にワンサと人が繰り出した様子にウンザリ、この10年通い続けた千鳥ヶ淵をあっさり諦めてしまった。

 

 それでも、このあたりからワタクシは何とか立ち直り始めた。東京の片隅で今井が一人でションボリしていても、ちっとも問題の解決に近づかない。4月からまた湯気の立つほど熱気のこもった授業を展開するためにも、何かテーマをしっかりさせた春を過ごそうじゃないか、まあそう考えたわけだ。

(国立劇場から散策して、日本橋高島屋に至る。詳細は明日の記事で 2)

 

 そこで向かったのは、皇居の「東御苑」。千鳥ヶ淵はワンサと繰り出した人々で密も密、「超密」に近い状況だが、お堀の橋をわたって「東御苑」に入ると、人口密度はグッと低下する。

 

 満開を迎えていたのは、ソメイヨシノばかりではない。ピンクの濃厚なヒガンザクラの類いや、京都の城南宮や北野天満宮で大ファンになった梅の花たちも、ちょうどピークを迎えていた。

 

 モモも満開。スモモも満開。ワタクシがコドモの頃、多湖輝センセの「頭の体操」シリーズが大流行して「スモモモモモモモモモモ」とか「スモモモモモモモモノウチ」とか、つまらん言葉遊びがはやったが、要するに「スモモも桃、桃も桃」「スモモも桃も、桃のうち」というだけのことである。

(皇居・東御苑にて、ボケの花がキレイに咲いていた。ボケ、もっと可愛い名前はないものか) 

 

 そのスモモの一種に「ヤカン」という果樹がある。「Youはどうしてそんな名前に?」であるが、まごうかたなき「ヤカン」、漢字で書けば「薬缶」または「薬罐」であって、あのお湯を沸かすテカテカの金属容器だ。どうしてこの可愛らしいスモモの樹にそんな名前が着いたのか、一向に合点がいかない。

 

 ググってみると、「この樹に出来るスモモの果実が無毛である点に、命名の理由があるんじゃないか」とのこと。つまり諸君、一部のオジサンたちのピカピカ光る無毛のアタマを、昭和の残酷な時代には「ヤカンあたま」と呼び、それと同じ理由で可憐なスモモも「無毛だからヤカン」と言ふことになってしまったらしい。

 

 ま、いいじゃないか。今はその種の昭和の暴言の力を借りてでも、笑顔を取り戻すべき時代だろう。暗いニュースばかりのテレビ画面を眺めて、みんなで渋面を歪めてばかりいても、何の解決にもならない。

(皇居・東御苑にて。この可憐な花が「ヤカン」。もっと可愛い名前をつけてあげたかった)

 

 そこで4月11日、ワタクシは10日間の長い旅に出る決意を固めた。どんなテーマでどこに出かけるのか、それは次の次の回の記事で詳細を書くことにしたい。

 

 東京に帰還する予定は、4月20日に設定。海外の旅が困難なら、国内の旅ということになるが、ついこのあいだ国内の東奔西走を完了したばかりだというのに、またまた旅に出る。厳しい仕事が連日続く旅とは全く異質な、仕事一切ヌキの旅は、きっとサトイモどんをギュッと勢いづかせてくれるだろう。

 

 それにしても諸君、ということはワタクシ、4月上旬の10日間を延々と、暗い書斎の片隅で超ションボリ、何をする気も湧かないまま粛然と過ごしていたことになる。いやはや諸君、時計の針をあの平和だった2018年か2019年に戻すすべはないものか。

 

1E(Cd) VellardDUFAYMISSA ECCE ANCILLA DOMINI

2E(Cd) OortmerssenHISTORICAL ORGAN AT THE WAALSE KERK IN AMSTERDAM

3E(Cd) Philip CavePHILIPPE ROGIERMAGNIFICAT

4E(Cd) SavallALFONS V EL MAGNÀNIMEL CANCIONERO DE MONTECASSINO 1/2

5E(Cd) SavallALFONS V EL MAGNÀNIMEL CANCIONERO DE MONTECASSINO 2/2

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