Sat 211211 クリオネを見にいく/モノマネあれこれ/流氷館/網走駅のかにめし 4142回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 211211 クリオネを見にいく/モノマネあれこれ/流氷館/網走駅のかにめし 4142回

 ワタクシだって、時には自らを省みることがある。そして遠い昔の自分を、深く深く反省するのである。いくら生徒諸君の理解度をグイッと上昇させたい一心であったにせよ、クリオネのモノマネは自重すべきではなかったか。

 

 そのクリオネのモノマネが、自分でも信じがたいほど巧みであったにせよ、講師の威厳までポイッと捨て去ってしまってホントによかったのか。

 

 いや、クリオネばかりではない。今井君はヤッコダコのモノマネも非常識に巧みなのだ。しかしどんなに上手とは言っても、せっかく東大&京大だの、早稲田&慶應だの、難問の解説に夢中になっている生徒諸君の前で、1分も2分も心の底までヤッコダコになりきっていいものだろうか。

 

 しかも諸君、クリオネとヤッコダコどころか、今井のレパートリーは限りなく広汎なのである。「風に吹かれる竹」なんてのもある。「風に吹かれる竹」「風に吹かれる笹」「風に吹かれる恵方巻のノボリ」を、それぞれ風の力と方向に応じて演じ分けることだってできる。

 (網走・天都山流氷館でクリオネ君たちに挨拶する 1)

 

 イカとタコが水中でゆったりと泳ぎ回る演技も得意。イカとタコを演じ分けることも難しくはない。イカ君が強力な推進力を必要とした場合のイカの表情もできるし、タコ君が激しい海水の動きの中で大好きな獲物を見つけた瞬間なんてのもお手のモノだ。

 

 ついでに「エイ」もお得意だ。しかもワガママな今井君は、普通のエイではイヤなのだ。水族館の水槽の中から、見物にやってきた人間たちを逆に見物してやるんだという知能の高いエイで、そのエイが例の顔でニヤニヤ笑いながら水槽面に直立していくプロセスを捉えないと、正しくエイを描写したことにはならない。

 

 こういうヤツだから、昔の予備校の教室ではしょっちゅう人物のモノマネもやった。最も得意だったのは、田中角栄の長女・田中真紀子氏のマネであり、20年前には駿台の教室も代ゼミの教室も「今井がいつ田中真紀子氏のモノマネを始めるか」、授業内容よりそっちのほうに夢中というありさまだった。

 

 しかも今井は、田中真紀子氏になりきったまま5分でも10分でも長文読解や英文法の授業を巧みに展開した。まあ明らかに失礼にあたるのだが、20年前の浪人生の授業ではそれぐらい許してもらえたし、何しろ目の前の生徒諸君が大喝采しているのだ。喝采に応えない、期待に応えない、そういうのは予備校講師として失格じゃないか。

 (網走・天都山流氷館でクリオネ君たちに挨拶する 2)

 

 それがいつのまにか、「田中真紀子って、誰?」という世の中になった。21世紀に入ったばかりの頃は「キャンディーズって誰?」「ピンクレディーって誰?」という程度で済んでいたのが、次第に「ウィンクって誰?」「モー娘。って、何?」という時代に変わる。相手が知らない人のモノマネほどツラく厳しいものはない。

 

 いやはや、光陰矢の如し。首都圏にSuicaが登場してまだ20年しか経たないのに、その20年のうちに政治家もアイドルもスポーツの大スターも、みんな過去の人になっちゃった。

 

 野球なら、桑田に清原。清原どんは高校生諸君にとっては「ちょっとヤバい感じの人」、桑田は「きわめてユニークなメイクの息子の父親」。「でも2人とも、昔は野球をやってたらしいぜ」「えーっ、ウソだろ」というところまで接近しつつある。

 

 サッカー選手だって、普通の女子高校生がどの辺りまで記憶しているのか、甚だ心もとない。今井君のアタマの中では、加藤久に秋田に名波、アルシンドにリティーにオッツェ、Jリーグ初期のヒトビトがまだ最近のスターとして記憶され、記憶の中心では釜本・杉山・宮本輝紀・小城がまだ躍動している。

 

 しかしいま目の前で授業を受けている高校生、果たして彼らの活躍を知っているのかとなると、やっぱり心もとない。中田英寿はどうだ、中村俊輔はどうだ、いや本田サマだって、今やビジネス系CMに頻繁に登場する高級スーツの高級オジサマとしてしか認識されてないんじゃないか。

(網走バス「天都山流氷館」の停留所。見たまえ、バスは1日に4便だけだ)

 

 するとやっぱり講師としての今井君も、「時代遅れ」と言われないように、たっぷり勉強しなきゃいけない。何を勉強するかというに、まず何と言ってもモノマネの対象である。

 

 田中角栄もダメ、田中真紀子氏もダメ、ウィンクもチェッカーズもモー娘。も藤岡弘、もダメということになれば、「いろんな46のメンバーの区別ができるようになる」なんてのは至難のワザであるから、こりゃ思い切って再びクリオネとエイとイカとヤッコダコ、今井君の原点に回帰する以外に考えられない。

 

 というわけで諸君、やっとのことで話題は網走の町に帰ってきた。網走刑務所をやっとのことで出た今井君は、そういうふうに書くと話がまたこんがらかりそうであるが、久々に自由の身となった気分でバスに乗り込んだ。

 

 約15分ほどのバス旅の果てにたどり着いたのは、「天都山流氷館」。「天都山」は網走市の南西部を占める標高207メートルの山。その頂上に「流氷館」ないし「オホーツク館」があり、展望台からは、晴れていれば知床半島が見渡せる。

 

 地図を見るに、知床半島の向こうには国後島の姿も遠望できそうであるが、この日はあいにくの曇天。しかもさすがに山頂に立てば、オホーツクから吹きつける強風には5分と耐えられない。さっさと館内に退散することにした。

(天都山展望台からのオホーツク海。遥かに知床半島も見える。流氷の季節なら、流氷に埋め尽くされる)

 

「マイナス15℃の部屋」というのがあって、実際の巨大な流氷がゴロゴロ展示されている。入り口で濡れタオルが手渡され、「これをぐるぐる振り回してください」「カチンカチンに凍りますよ」という趣向なのであるが、うーん、確かに凍ったけれども、北国出身の今井君としては、ありゃマイナス5℃程度だったような気がしてならない。

 

 ま、そういうわけで、ついにクリオネ君たちとの対面を果たした。ワタクシにとってはあくまで学習の対象であって、近い将来の授業の中で、どうしてもクリオネとエイの泳ぎの違いを表現したい。それは風に揺れる「竹」「笹」「恵方巻のノボリ」の違いを表現したいのと同じ、たいへん熱い情熱なのである。

 

 じっくりクリオネに見とれながら、「しかしそういう今井の情熱にホンキで応えてくれる生徒が多数存在するのか?」という疑問に苦悩した。

(網走駅「モリヤ商店」のカニいくら丼。駅弁と同じ材料で、熱々にしてくれる。カンタンに完食できるような量ではない)

 

 時代はすっかり変わり、予備校の浪人生文化も衰退し、かつてマンモス予備校の大教室を超満員にした大スターたちが、30年前の大教室を熱い拍手と感激と感動で満たしていた大演説と同じ演説を再現したとしても、果たして感動&感激してくれる生徒が何%存在するだろうか。

 

「そんな役に立たない演説より、教材を進めてください」の冷酷な一言が、昭和や平成の大スターに浴びせかけられるんじゃないか。ワタクシはそれが心配だ。カントやヘーゲルを熱く語る奥井潔師に「そんな話より教材をどんどん進めてほしい」などと発言するのは、あまりに冷酷じゃないか。

 

 まして今井はクリオネとエイとイカ、タケとササと恵方巻のノボリの世界。いや、もちろんこれはあくまで仮の姿、本来はナンボでも知的なスーパー白熱講義を展開できるし♡ その知性はマコトに深く&マコトに広汎であって、その辺の平凡な知識人の及ぶところではないのである♡が、あくまで奥ゆかしい謙遜のココロをお見せしておくほうがいいだろう。

(網走駅「モリヤ商店」の駅弁各種。他には売店もコンビニも見当たらない)

 

 ただし諸君、天都山流氷館には「最近この付近でヒグマが目撃されております。十分にご注意ください」という貼り紙があった。さすが網走、山のてっぺんまで来れば、そのあたりもやっぱり油断大敵♨火がボーボー。ヒグマとなると、秋田のツキノワさんたちとは大きさも強烈さも比較にならないので、早速バスに乗り込んで網走駅に逃げ帰ってきた。

 

 網走駅に到着、15時半。札幌に帰る特急「オホーツク」の出発時刻は1725分。約2時間もここで時間を潰さなきゃいけない。駅のそばにはファミレス系のハンバーグ屋さんがあって、ハンバーグなら酒やワインも出るだろうから、それなら2時間は軽い。

(網走駅「モリヤ商店」の店内。見たまえ、今井君がかつて入り浸った「純喫茶」のたたずまいだ)

 

 しかしワタクシが選択したのは、網走駅の駅弁屋を兼ねている「モリヤ商店」。4人がけのテーブル3つ、カウンター5〜6席、昭和の昔の純喫茶という雰囲気だ。

 

「昭和の昔の純喫茶」となれば、それはまさしく今井君のホームグラウンド。片隅のテーブルに腰を落ち着ければ、インベーダーもジュークボックスもなしに2時間、たっぷりお店で粘っていられる。

 

 注文したのは、生ビールと「かにめし」と日本酒の熱燗。「かにめし」は、駅弁として売っているかにめしと同じ材料で、それを温めて丼で出してくれる。いやはやその分量に驚嘆、最初は「こんなの完食できるはずがない」と思ったが、気がつけば約15分後、すべて胃袋に消えていた。

 

 熱燗は、ウィスキーのグラスにたっぷり入れて運ばれてくる。なかなか高級感のあるオジサマが1人で切り盛りしていて、今井君の酒量にニヤリ、「なかなかたくさん飲みますな」と、同好の人ならではの親しみのこもった視線を送ってくれたのだった。

    (網走駅と、特急「オホーツク」の勇姿)

 

1E(Cd) Barbirolli & HalléTHE DREAM OF GERONTIUS 2/2

2E(Cd) Ashkenazy & PhilharmoniaSIBERIUSSYMPHONIES 1/4

3E(Cd) Ashkenazy & PhilharmoniaSIBERIUSSYMPHONIES 2/4

4E(Cd) Ashkenazy & PhilharmoniaSIBERIUSSYMPHONIES 3/4

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