Fri 211210 アンタも好きねえ/網走で何をするか/刑務所へ/鉄道網の寸断 4141回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 211210 アンタも好きねえ/網走で何をするか/刑務所へ/鉄道網の寸断 4141回

 ワタクシの世代には、「8時だョ、全員集合!!」というテレビ番組の熱烈なファンとして育った人が少なくない。

 

 というか、「ドリフターズ」と言ふグループがテレビ画面を席巻し、いかりや長介に仲本工事に高木ブー、小学校も中学校も彼らの話題で持ちきりで、今井君は極めてツラい立場に立たされた。

 

 だって諸君、今井君のオウチでは「全員集合!!」もタブー、「ドリフターズ」もタブー、加藤茶も志村けんもすべてタブー。それどころか「NHK以外はほぼタブー」、「民放のテレビ」だなんてのは興味を持つのもタブー、そういうオウチだった。

          (網走駅に到着)

 

 とは言え、別に「勉強一辺倒」「勉強と関係のないものは全部ダメ」とか、その類いの話ではないのだ。「勉強なんかしなくていい」「勉強なんかより肉体を徹底的に鍛えるべし」という父親だったのだが、その父親が気難しいというか何というか、とにかく民放テレビの全てにムカつき放題ムカついていたのだ。

 

 思えば、今井君が小学生だった頃の父・三千雄はまだ40歳代の前半。そんなにNHK一辺倒になるような年齢ではなかったが、民放のドラマやら、民放の時代劇やらを視聴することについて、家族に対しても激しい嫌悪感を露わにした。

 

「激しい嫌悪感」と言っても、別にヒステリックなものではない。マコトに大らかに、「そんなもの見るな」「つまらん」「すぐに消しちゃえ」と一言、野太い声でスカッと命令して、自分は風呂に入りにいき、風呂から出れば黙って酒を飲む。しかし民放のテレビだけは絶対にダメ、そういうガンコ一徹な人だった。

       (博物館・網走監獄に到着)

 

 小中学生の今井君だって別に「何が何でも民放テレビ」という嗜好があるわけではない。学校の休み時間に話題になるドリフターズも「8時だョ」もどうでも構わないし、大橋巨泉&前田武彦の「ゲバゲバ90分」も、コント55号もウルトラマンもオバQもパーマンも、全く興味の対象にならなかった。

 

 しかしそれでも、やっぱり教室では寂しい思いをした。「あっと驚くタメゴロー」というセリフが大流行して、友だちがみんな何かと言えば「あっと驚くタメゴロー」「あっと驚くタメゴロー」を連発、しかし今井君だけ何だか分からないでいると「ガリ勉だ」「ガリ勉だ」と囃し立てられた。

 

 同じようなことは枚挙にいとまがなくて、「ズンドコ節を歌えない」「ピーターとは誰なのか分からない」「カラスなぜ泣くの?カラスの勝手でしょ? がちっとも面白くない」「仮面ライダーのポーズを真似できない」「加藤茶『アンタも好きねえ』の面白さが分からない」、そういう小中学生時代は、やっぱりコドモとしてはツラかった。

   (この小屋を中心に、監獄が放射状に伸びている)

 

 すっかり大人サトイモと化した今となっては、父・三千雄の気持ちがあまりによく分かって、思わず胸が熱くなる。要するに父はあのころ疲れ放題に疲れていて、放送作家たちが垂れ流す工夫の足りないギャグに疲れ果てていたのだ。

 

 21世紀の今井君も同じように疲労しきって、グルメ番組の放送作家たちが並べる一語一語に耐え続けることができない。モヤシをかじって「甘い」、辛味大根をかじっても「甘い」、ワサビをかじってまた「甘い」、その3連発で不機嫌になり、確実にチャンネルをかえる。

 

「やわらかーい」「クセもありませんね」「何だこりゃ?」への不機嫌も同じこと。ステーキをかじっては「やわらかーい」「何だこりゃ?」、シカ肉やイノシシ肉をかじって「やわらかーい」「クセもありませんね」、ぎょろ目を剥いたわざとらしい驚きぶりを見ると、あっという間に不機嫌が極まる。

 

 21世紀になって、テレビ業界の給与はグイグイ下がっていく。視聴率も際限なく下がり、東京キー局でも希望退職者を募りはじめた。「いったい誰がテレビなんか見ているの?」とフシギになるアリサマである。

 

 まあ十年一日というか百年一日というか、延々と「甘い」「やわらかーい」「何だこりゃ?」を罪のないタレントさんに絶叫させ続けてきたツケは限りなく大きいはずだ。

(監視小屋を中心に、いくつもの監獄棟が放射状に伸びる。中心の小屋に立てば、全ての棟を効率的に監視できる)

 

 ところで、列車に5時間半も揺られてついに到着した網走であるが、何で以上のような述懐をしたかと言えば、おそらく「アンタも好きねえ」と言われることが確実だからである。

 

「アンタも好きねえ」は、「8時だョ、全員集合!!」の中で、加藤茶といふタレントさんがヒットさせた決めゼリフらしい。正確には「ちょっとだけよ … アンタも好きねえ」。いやはや今井君は今もなお、小中学校の同級生たちと一緒に無心にハシャグことは出来そうにない。

 (獄舎は多くが5人から6人を収容。展示は迫力満点だった)

 

 ではどうして「アンタも好きねえ」を思い出したかというに、おそらく「5時間半かけて網走に来た」「滞在たった数時間でまた5時間半、網走から札幌に日帰り」と告白すれば、全国のオジサマ&オバサマはきっと間違いなく加藤茶のマネをして「アンタも好きねえ」とニヤニヤするに違いないからだ。

 

 ちなみに、ワタクシが代ゼミを辞めて東進に移籍した年、代ゼミではすっかりベテランの域に達していた某英語講師が、自らの直前講習・単科講座に「入試だョ、全員集合!!」というタイトルをつけた。どれほどドリフターズが日本を席巻していたか、この一事でも分かっていただけると思う。

 

 そして実際に諸君、「アンタも好きねえ」もいいところであって、今井君に興味があったのは、ディーゼル特急「オホーツク」での往復11時間の旅だけなのだ。たどり着いた網走の町で何をするか、正直言ってあんまり熱い関心は居抱いていなかった。

(問題行動を起こせば、光の一切入らない独房に収容される 1)

 

 思えば遥かむかしむかしのこと、学部3年の冬の網走♡訪問でも、やっぱり網走に熱い関心はナシ。「刑務所に行こうぜ」「刑務所に行こうぜ」と盛り上がる友人たちに、「そんなに刑務所に行きたければ、何らかの犯罪に手を染めるしかないんじゃないか?」と、マコトに冷たい返答を返した。

 

 結局あの時の我々は、2月のオホーツクの暴風が吹き荒れる「能取岬」を訪ねたのだった。晴れてはいたが、雪の断崖絶壁に北西の強烈な季節風。温暖な鹿児島や岡山や横浜出身の友人たちは、マトモに息もつけない試練を経験したはずだ。

(問題行動を起こせば、光の一切入らない独房に収容される 2)

 

 しかも、あのとき能取岬から網走駅まで無事に帰還した我々に対して、別の学生グループが発した質問が「刑務所に行きたいんですが、どうしたらいいですか?」。当然ワタクシは「何らかの犯罪を犯すのが早道でしょう」と答えた。実際にはもうワンランク激烈な返答だったのだが、ここで文字にするのは若干の躊躇を感じる。

 

 だから諸君、すっかりオトナになった2021年の今井としては、網走刑務所の訪問は人生初の体験なのである。正式には「博物館 網走監獄」。現在の正式な網走刑務所は、博物館のずっと手前の平坦な土地でその機能を果たし続けている。

 

 網走駅に併設された観光案内所でチケットを買えば、網走の観光地をループ状に巡ってくれるバスを何度でも利用できる。駅から左に徒歩数十秒、「すき家」だったか「松屋」だったか、とにかくお馴染みの牛丼店の前にバス停があって、人々は一様にまず「博物館 網走監獄」を目指す。

(監獄食堂。「かつての収容者と同じメシが食べられる」というフレコミだ。サンフランシスコ「アルカトラ」にも同じ発想のレストランがあった)

 

 重い曇り空の下、11月下旬なのに積雪ゼロ、異常気象の網走をバスで10分。10数人の観光客が「博物館 網走監獄」に降り立った。ひとたび網走監獄に送られれば、合法的に監獄の外に生還するのはカンタンなことではなかった時代は長い。

 

 北海道内のキメ細かな鉄道網の建設は、多くの政治犯を含む彼らの命を犠牲にした労働によって成し遂げられた。この30年、そのせっかくの鉄道網がマコトに無慈悲に切り刻まれ、道東と道北を中心に、まだこれからさらに大規模な廃線が予定されているらしい。

 

 しかし、北海道の鉄道網は全て歴史遺産である。無慈悲なズタズタの廃線計画を30年前に思いとどまっていれば、ここに収監された人々が全身全霊を打ち込んだ鉄道網は、貴重な文化遺産・記憶遺産・歴史遺産となり、日本どころか世界を代表する観光資源としても、脚光を浴びていたに違いない。

 

 目先の採算ばかりに目を奪われ、「100円稼ぐのに〇〇円、膨大な費用を浪費するムダづかい」という議論に徹して、北海道の鉄道網を寸断する結果を招いてきたかつての世論が、今ではマコトに呪わしい。

 

1E(Cd) Barbirolli & HalléTHE BARBIROLLI ELGAR ALBUM 1/2

2E(Cd) Barbirolli & HalléTHE BARBIROLLI ELGAR ALBUM 2/2

3E(Cd) Elgar & LondonELGARSYMPHONY No.2

4E(Cd) Barbirolli & HalléTHE DREAM OF GERONTIUS 1/2

7D(DOp) Estes, Balslev, Nelson & Orchester der Bayreuther FestspieleWAGNERDER FLIEGENDE HOLLÄNDER

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