Thu 211202 大阪リッツカールトンのXmas/予備校文化は本当にオシマイか? 4135回
さすがに今年は、クリスマスもコロナへのリベンジだ。オミクロンどんの逆襲があって、気分もしょんぼり沈みかけているが、11月17日の段階ではまさに日本は対コロナ勝利のマーチ♡ 東京も京都も大阪も、危うく提灯行列でも始まりそうな勢いだった。
するともちろん高級ホテルは、クリスマス・デコレーションを激しく競い合う。東京もさぞかし凄まじいだろうが、今井君は東京に住んですでに40年。おっとサバを読んではいけませんな、その40年のうち、千葉が10年&埼玉が7年、ホントの東京は23年に過ぎないが、とにかく長く東京在住だから「東京のホテル」というものに宿泊した経験はほとんど皆無だ。
その点、京都・大阪・神戸、札幌・福岡・名古屋・広島・沖縄のホテルには、おそらく日本の誰にも負けないぐらい宿泊している。日本のホテルのクリスマス・デコレーションのド派手さには、毎年毎年ドギモを抜かれてきた。
(大阪、リッツカールトンホテルのXmasデコレーション 1)
もちろんこの15年、クリスマス当日に日本にいたことはほとんどない。パリにいたりベルリンにいたり、ロンドンにいたりニューヨークにいたり、ブダペストやらウィーンやらシドニーやら、「いったいクリスマスの今井はどこに行ってるの?」、誰にも見当のつかない神出鬼没を15年続けてきた。
しかし昨年と今年の2年間はコロナのせいで、しょんぼりサトイモ、しんなりキウィ、ホントならクロアチアかエストニア、ルーマニアかノルウェー、厳しい寒さのせいでいっそう美しく夜空にバエるクリスマスツリーの姿に酔っているはずが、日本の片隅のトーキョーで、毎日毎日オペラや人形浄瑠璃のDVDを眺めている。
(大阪、リッツカールトンホテルのXmasデコレーション 2)
と思っていたら諸君、中村吉右衛門が亡くなった。ワタクシは歌舞伎よりも文楽ばかり眺めてきたから、中村吉右衛門の生の舞台はおそらく数回しか目撃していないが、「鬼平」こと長谷川平蔵の時代劇はほぼ定番として観てきたから、77歳での突然の心不全死にはさすがに感慨が深い。
ワタクシの父・三千雄の心不全は、彼が70歳の2月8日夕暮れだった。NHKの上方漫才番組を眺めていて、常にないほどの大笑いをしたかと思ったら、いきなり心臓が止まってしまったんだそうだ。
ワタクシ自身はまだまだあの時の父の年齢にははるかに程遠いけれども、歌舞伎でも文楽でも能や狂言でも、名人の域に達した演者には高齢の人々が少なくない。
つい11月13日にも、大阪で文楽を6時間も眺めてきたばかり。おそらく年が明けて2022年1月10日前後、またまた大阪を訪ねて人形浄瑠璃を満喫してくる予定でいる。
(大阪、リッツカールトンホテルのXmasデコレーション 3)
「心して」という言葉があって、古典芸能の名人がこうも突然あの世に旅立つようであれば、まさに1回1回「心して」彼ら彼女らの名演を心に刻まなければいけないだろう。
ついでに諸君、今井の名講義もまた、自分で言うのは面映ゆいけれども、ぜひ「心して」満喫してくれたまえ。今井はまだ当分の間、具体的にはおそらく30年も40年もあの世に旅立つことはないが、問題なのは衰亡寸前 →「予備校文化」という古くケッタイな存在だ。
20世紀のオシマイごろ、その予備校文化を長く支えてきた駿台予備校の伊藤和夫師が「予備校英語への弔鐘」という一文を書かれた。研究社「高校英語研究」の廃刊が決まり、まさにその最終号への寄稿だったのであるが、予備校英語もオシマイ、予備校文化もどうやらオシマイ、そう書かれた伊藤先生も、その1年後に天国に旅立たれた。
(大阪、リッツカールトンホテルのXmasデコレーション 4)
20世紀後半にド派手に花開いた予備校文化、どうやらもう余命いくばくもない気がする。かつては駿台でも河合塾でも代ゼミでも、あんなに拍手喝采を受けた名物講師の大演説が、今やどうにも不発なのである。
駿台なら鈴木長十、河合塾なら牧野剛、代ゼミなら小田実。他にも最首悟・表三郎・芦川進一・古藤晃、授業から大きく脱線した大演説の連続で彼らが作り上げた予備校文化は、いまや風前のトモシビだ。
スゲー優秀になっちゃった21世紀の受験生は、教材から逸脱した講師の大演説なんかより、教材から決して逸脱せずに粛々と進む授業がお好み。下手に雑談なんかし始めると「こんな授業なら来たくなかった」とソッポを向く。
だから諸君、もはや「名物講師の名講義」などと言ふものは時代錯誤。効率よくスピーディーに教材をこなすスマートな授業を心がけなきゃ、まず優秀生がソッポを向き、優秀生がソッポを向いたのを目撃して「俺たちもソッポを向かなきゃ」と誤解した一般生もソッポを向く。
(大阪、リッツカールトンホテルのXmasデコレーション 5)
幸い今井君は、大演説も得意だが「効率よくスピーディーに」も別に不得意ではない。というか、効率よくスピーディーなキマジメ授業タイプも得意中の得意だ。
ワタクシの公開授業ラインナップのうち、一番難しいほうから3つ「東大タイプ」「京大タイプ」「旧7帝大タイプ」なら、大演説ナシのスピーディー講義を必ず展開するし、標準難易度の早慶タイプ・難関国公立タイプでもやっぱり、大演説ヌキで終始することもできる。
しかし諸君、やっぱり寂しいのである。20世紀終盤に花開いた予備校文化では、科目が何であれ、ちょっと左に偏った大演説が主流。「ちょっと」どころか目いっぱい左に傾いて、大教室に集まった200人か300人の生徒たちが、みんなギュッと左のガケになだれ込むことだって珍しくなかった。
あういう予備校文化を支えた先輩講師の講義、さすがに歌舞伎や人形浄瑠璃の名人芸には足許にも及ばないかもしれないが、先輩講師1人1人の名講義、それぞれみんな重要無形文化財チョイ手前の域にまで達していたように思うのである。
(大阪、リッツカールトンホテルのXmasデコレーション 6)
というか、かく言ふ今井君自身、実は影の無形文化財を目指している。誤解しないでくれたまえ、あくまで「影の」であって、ホンキで自分の授業が無形文化財だと豪語する勇気はカケラももたない。
しかし諸君、おそらくワタクシは、あと十数年後ぐらいに、予備校英語の表舞台を去った後、いやはやフェニックス♡のように復活して、どこか遠くのフシギな舞台で、恐るべき数学の授業を展開しようかと、手ぐすね引いて待っている♡
「ええっ、数学ですか?」であるが、昨日も書いた通りワタクシは、中3で「解法のテクニック数学Ⅰ」「解法のテクニック数ⅡB」を読み終えた数学の猛者だった。微分・積分の問題を初等幾何で突破するぐらいは、今もなお朝メシ前。というか昼メシ前ないし晩メシ前だ。これを重要文化財と言わずに何とする。
(11月17日のランチは、阪急百貨店の梅田本店「串の坊」で串カツ。おいしゅーございました 1)
なほ、「国語」だけは絶対にムリ、そのことは重々承知のスケだ。ワタクシは国語が出来すぎる。だって神様がワタクシの上空をいつもフワフワ漂っていて、正解をワタクシの耳に吹きこんでくれるのだ。神様が「正解はBだぞ」とおっしゃったら、たとえ出題者のセンセが「A」と思っていても、意地でも正解はBなのだ。
この域に達すると、もう授業での分かりやすい解説なんか不可能だ。なぜBが正解なのか、そんなの説明できるわけないじゃないか。それでも「どうしてなのか分かりません」などと迫る生徒がいれば、「なぜ分からないんだ?」「分からないのはアタマが悪いからだ」と、恐るべき失言&放言&暴言を積み重ね、あっという間にクビになる。
(11月17日のランチは、阪急百貨店の梅田本店「串の坊」で串カツ。おいしゅーございました 2)
だから諸君、教師とか講師になるなら、迷わず苦手科目を選びたまえ。自分の得意科目では、目の前の生徒たちが「何が分からないのか」「なぜ苦労しているのか」が理解できない。
その点、自分の苦手科目ならば、生徒諸君が「どうして分からないか」「なぜ苦労しているのか」、その全てが手に取るように分かっちゃう。ヒトに教える立場にとって、「相手が何が分からないか」が分かるとすれば、もうそれで仕事の大半は完了したようなものなのだ。
(11月17日、奈良「学園前」で3年連続の公開授業。出席者200名 1)
ま、そんな冗談みたいなことを考えながら、11月17日の今井は奈良の公開授業に臨んだ。リッツカールトンホテルのド派手なクリスマス・デコレーションを眺めながら、まずタクシーで近鉄難波の駅まで。近鉄特急の指定席でひたすら西に進めば、会場の「学園前駅」までわずか30分の道のりである。
「学園前」での公開授業は、すでに3年連続。一昨年と昨年は中3生とその保護者が対象だったが、今回は高1&高2生向けの本格的な授業ということになった。
出席者200名。200名が集結しても、やっぱり「キャパ1/2ルール」が痛い。400名収容の大ホールに200名ということになると、写真でご覧の通り、マコトに寂しいガラガラ感が強烈にワタクシを襲う。使用したのは、名古屋大の過去問。それでも90分、語り尽くして大満足の公開授業だった。
(11月17日、奈良「学園前」で3年連続の公開授業。出席者200名 2)
1E(Cd) Ricci:TCHAIKOVSKY/VIONLIN CONCERTO・PAGANINI/CAPRICES
2E(Cd) Maazel & Wiener:TCHAIKOVSKY/SUITE No.3 R.STRAUSS/TOD UND VERKLÄRUNG
3E(Cd) Dorati & Washington D.C.:TCHAIKOVSKY/SYMPHONY No.4
4E(Cd) Barenboim & Chicago:TCHAIKOVSKY/SYMPHONY No.5
7D(DPl) 文楽:冥途の飛脚「淡路町の段」竹本伊達大夫「封印切の段」竹本綱大夫「道行相合かご」
10D(DMv) FOR WHOM THE BELL TOLLS
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